第23話 透明な足跡-06


 無様に何度も扉を叩いて、なのに叫び声は出なかった。

 この事態に動揺して震える足を踏ん張ってようやく立っている。

 次第に目が慣れ、部屋の様子が見えてきた。

 見えたからと言ってどうということもない、古ぼけた人形がひとつ。

 あとは雑多なガラクタの倉庫だ。

 次第に動くのをやめ、埃だらけの床に座り込んだ。

 耳を澄ますと何か言い争う声と物音が聞こえる。

 やがてそれも遠ざかり、扉の閉まる音がした。

 夫妻は外出したようだ。

 聞こえた音から判断するにフランも一緒に外へ連れ出されたらしい。

 フランが壊れたら胸を痛める人の顔が次々に思い浮かんだ。

 だからなるべく壊れるようなことがなければいいと祈る。

「……」

 大切に思えば思うほど姉の立場を奪うような気がして嫌悪したのに、今こうして無事を祈るなんて滑稽だと思う。

 まずは自分のことに目を向けなくては。

 ――どうやらデリケートな家庭内問題に踏み込みすぎてしまったようだ。

 このまま何日も監禁されるかもしれない。

 今にも建物に火が放たれたりしたらどうなるだろう。

 後で戻ってきたバッセル夫妻に害される可能性だってある。

 考えても仕方がない。

 薄闇のなか、アレックスはその人形に向かい合った。

 古いが手入れが行き届いている。物置に仕舞いっぱなしにした自動人形メイトではない。

 型式は十年ほど前の、ちょうどケネスの店先に並んでいた在庫と同一だ。

 つい最近買ってきたものかもしれない。

 きっとニネットが見た『エドリス人形』と同一のものだ。

 これをニネットと言ってどう誤魔化すつもりだったのか。そう失笑を浮かべながらも、脳裏ではこの自動人形と歩く己の姿を思い描いている。

 傍からはそう見えていたかもしれない、なんて想像に一瞬胸の底が冷えた。

 寒い。そう感じたのは不気味な想像のためか、それとも夜が訪れたからか。

 体を動かそう。

 そうすれば温かくなる。

 アレックスは物置をあらため、脱出に使えそうな道具はないかと棚を確かめた。

 どれもこれも役立たずだ。

 古ぼけたリネンの束、客室什器の細かな品々と、旧型の暖房器具。予備のまま埋もれた食器類。すべて、活用されることなく死んでしまった無意義な道具だ。

「……はぁ」

 嘆息すると吐息が白く舞った。

 上着ごと端末を奪われていて外部との連絡は不可能だ。

 今までずっと一人旅だと思っていたのに、だとしたら状況は変わらないはずなのに、ひどく頼りない心地だった。

 膝を抱えて頭を埋める。己の呼吸と心音が煩かった。

 この音を、アレックスは良く知っている。

 この薄闇を、良く知っている。

 懐かしいとまで思えることに驚いて、少しだけ笑った。



 その日、姉はいつになく元気だった。

 寄宿舎での出来事や友達とのことを両親に報告し、弟にもしきりに話しかけた。

 食卓は普段通り、姉を中心に円を描いている。

 アレックスも珍しく両親と言葉を交わした。

 フランチェスカがそうなるように話を繋げてくれたからだ。

 緊張した。

 でも、嬉しかった。

 家族の和のなかに含まれているのだと実感して、とても安心した。

 コーヒーを分け合う憂鬱な時間も、いつもほど気は落ち込まなかった。フランチェスカは美味しそうにカフェ・オ・レを飲み干して、ごちそうさまを言う。

 これで家族の食卓の時間は終わりだ。

 部屋へ戻る廊下を並んで歩いた。

 今なら言えると思って、アレックスはフランチェスカへとうとう告げる。

「お姉ちゃん。あのね……話があるんだ」

「どうしたの、アレックス?」

 部屋へ手を引いて、ベッドの下からそれを取り出した。

 アレックスが壊してしまった、彼女のお気に入りのオルゴールだ。

 ――あら、こんなところに隠していたのね! どこへ失くしたかと思っていたの。

 アレックスが何度も何度も想像したような言葉は、いくら待っても出てこなかった。姉は不思議そうに箱を見つめていた。

 弟の意図するところがまるで分からないように言葉の続きを待っている。

「それが、どうしたの?」

 怒っているからそんなに素っ気無いのだと思い、アレックスは縮こまる。

「これ、僕が壊したんだ。ごめんなさい」

「ううん、いいよ。悪いことって分かったなら、わたしは怒らないよ」

 そうしてフランチェスカは、そうっと弟の髪を撫ぜた。

 ほっとして、でもどこか釈然といかない。

 あんなに気に入っていたのに。

 それとも、隠しているうちに本当に興味がそれてしまったのだろうか。

 そんなはずはない。帰ってくるたび、いつも、そばに置いて眺めていたのに。

「本当に、いいの?」

「いいの。なんだって、いつかは壊れるでしょ。アレックスがちゃんと言ってくれたことのほうが大事」

 その言葉は、なるほど確かに、フランチェスカらしい言葉だった。

 ようやく本心からほっとする。

 気がかりだったものが解れて肩から力が抜ける。

「お姉ちゃん、あのさ」

「なあに?」

「あっ……ううん、なんでもないっ」

 いつかきっと代わりの品をプレゼントしようと思いついた。

 今はそれを内緒にしておいて、その時が来たらうんとびっくりさせてみせる。

 フランチェスカの喜ぶ顔を想像して今から楽しみになった。

「おやすみっ」

「おやすみなさい、アレックス」

 わくわくした気分のまま毛布を被る。

 何を贈ろう。いつ贈ろう。やっぱりオルゴールかな……。

 夢想を広げるうちに、アレックスは安らかな眠りにいつしか包まれている。



 休日の朝の食卓も家族で囲む。

 簡単なパン料理と新鮮なサラダと、いつも通りの家族コーヒー。

 それらが並んだ食卓にアレックスはまだ夢見心地で現れた。

 もう準備は整っていて、父と、母と、姉が待っている。

 食卓は充分に広い。テーブルも椅子も立派なものだ。

 だけどそれらは、夫妻が結婚するときに設えたもので、すべてが三人家族の暮らしを前提に成り立っていた。アレックスの登場によって食卓は一脚分詰めることになり、理想的な調和が乱れてしまう。

 今この光景も、三人家族のままで充分に完成しているように感じた。

 アレックスはふとした瞬間に己が余計なものだという自覚を強めてしまう。

 このまま、三人が暮らしていれば、何もかも事足りるんじゃないだろうか。

 そういう憶測にとらわれて、輪の中へ入っていくことを躊躇うのだ。

「アレックス、どうしたの。いらっしゃい」

 母は優しく呼びかける。

「今日はお寝坊だな、アレク」

 父も寝癖をつけたまま息子をからかった。

「おはよう、アレックス。昨日は良く眠れた?」

 姉は丁度ジャムの瓶を手にとって、うっかり取り落としてしまう。

 ごとん、とガラスの瓶がテーブルを叩いた。

 丸い瓶が半円を描くように転がって、まるで内臓のような木苺のジャムがクロスにこぼれ出る。

 立ち尽くしたまま、アレックスはそれを見ていた。

 フランチェスカは手元の不注意に気づかないままバターナイフを取る。

 椅子を引いて立ち上がったのは母だった。

 勢い良くはじかれた椅子は絨毯に引っかかって倒れてしまう。

 クララは円形のテーブルに沿って三歩、娘へ歩み寄った。

 もう触れ合うほどの距離だ。

 クララは娘が取り落とした瓶を手にとって、もう一方の手を娘の手に重ねた。

 包み込むように、幼い子に教えるような仕草で瓶を持たせる。

「もう一度よ。できるでしょう」

 優しい囁きに促され、フランチェスカは瓶を握ろうとした。

 しかし、二度目の試みも失敗に終わり、再びテーブルの上で瓶が跳ねる。

「もう、どうしてできないの!」

 重ね合わせた手をクララは力任せにひねった。

 ほとんど引きちぎるような勢いに、関節に逆らって曲がった腕の中でぷちぷちと何かが切れる音が立つ。

 途端に姉の体は弛緩して、テーブルに上体が落ちる。

 顔はアレックスを見上げるように上向いていた。

 ふたつの眼球は別々の方向を示し、唇の向こうに咀嚼の途中のはずのパンが乾いたまま覗いている。

「あなた。研究所へ戻りましょう」

 虐げられても姉は叫び一つ上げなかった。

 だというのにこんなに叫び声が聞こえるのは、どうやら自分が原因らしい。

「あれを黙らせてよ、エルンスト。……」

 呼びかけに応じない夫に痺れを切らし、母親がこちらを向いた。

 彼女に痛めつけられるのは、今度は僕のほうだ。

 恐怖心から立ち尽くしたまま、アレックスは気が遠くなって、


 ――寒さのために目を覚ます。

 夢の余韻を引きずって、鼓動が強く打っている。

 体が震える理由はひとつだけ、部屋が凍えているせいだ。

 内心で誰にともなく弁解して、己の体を抱きしめる。

 いつのまにか眠っていた。

 思った以上に肝が据わっているのか、よほど疲れていたのか。

 後者できっと間違いない。

 ものの試しに扉に体当たりするが、肩を痛めるだけだった。

「おなか空いた」

 声にすると暢気に響く。

 腹も減ったし寒いし眠い。

 今頃ニネットはどうしているのだろう。

 エドリスはどうなってしまったのだろう。

 ドアの隙間から冷風が吹き込んだ。

 足首を温めようと触れる、その手もすでに冷え切っている。

 部屋の中を再度漁って埃臭い毛布を見つけ出す。

 体に巻きつけると少しは寒さをしのげた。二度、くしゃみをする。

 壁沿いに座り込んで、もう一度眠った。

 眠りのような、けれど眠りではないような、疲れと緊張からの曖昧な意識のまま、きれぎれに過去を夢見て、その印象を掴みどころなく失う。

 昼間にニネットと交わした会話が何度も反芻されて耳の奥に反響して、自分はなんて無責任なことばかり喋っただろうと嫌悪する。

 狭い場所にいると思考まで狭くなっていって、そのうちアレックスは自分の落ち度ばかり数えていた。



 薄い意識をすくいあげたのは、玄関の鍵を開ける金属質な音だった。

 床を静かに叩く靴底の音が段々近づいてくる。

 すぐ外に人の気配を感じてアレックスは緊張した。

 何が起きても不思議は無い。

 旅立つ前に『子供に一人旅なんて』と最後まで心配そうだったメイベルの顔をまだ鮮明に思い出せた。彼女はその責任がなくてもきっと自分を責めるだろう。それだけは少し胸が痛む。

 戸は静かに開いた。

 立とうとした中途半端な姿勢のまま、アレックスは久しぶりの光に目を細める。

「すまない、アレックス。少しだけ協力して欲しい」

 エリックが一人だけ、外出着のまま立っている。

 咄嗟に歩みかけ、足がもつれたアレックスを抱き支えて部屋の外へ運んだ。

 大人に触れられることを新鮮に感じる。

 父親とだってこんなふうに触れ合ったことはない。

 思った以上に憔悴していたのか、体にまるで力が入らなかった。

 身を任せたまま外へ出て、そこに珍しいものを見る。

「車だ」

 この町はまるで時間の経過が他の場所とは異なるようで、自動人形もまるで見当たらないし、いまだに車が走るらしい。

 アレックスを後部座席に押し込むとエリックは運転席へ収まって、ようやく「そうだ」とアレックスの呟きへ返事をした。

 運転席の時計が深夜を示している。

 閉じ込められて半日も経っていないようだ。

「隣町の駅まで向かう。列車が立ち往生しているが、じきに運行が再開する。その列車に乗ってもらう」

「何故?」

 後部席にもう一人――隣に誰か居る。ようやくアレックスは気づく。

 一瞬だけ自動人形に見間違えた。

 彼女は穏やかに呼吸する人間だ。

 充分な支度をして帽子まで被っている。

 髪は手入れの要らないショートカット、面差しはニネットに良く似ている。

 あの似顔絵は実は特徴を捉えていたようで、アレックスにはすぐに分かった。

「エドリス」

 間違いない。

 本当に実在した――深い安堵に気が抜けた。

「ニネットはどこに?」

「俺の実家で今は寝てる。劇の途中で連れ出した」

「エドリスのことをニネットは知っている?」

 娘を隠したのはバッセル夫妻だ。その確信のままに問う。

 エリックは雪の降る道へ車を発進させて、唸るように答えた。

「ニネットには話さない。エドリスもきみと同じ列車に乗る。この子を欲しいという人が居るんだ」

「それは、彼女を大切にしてくれる人?」

 運転に集中しているそぶりでエリックは答えを濁した。

 車内の空気も冷たい。

 言葉がないと、エドリスの安らかな寝息だけがかすかに聞こえた。

 心配事など何もないような穏やかな表情をしている。

 確かに優しい姉だったのだろうと窺える。

「フランはどうしましたか」

「……あとで、きっと送り届けるよ。きみの荷物と一緒に」

 極めて親しみをこめた声を真に受けるほどアレックスは素直じゃなかった。

 注意深く視線をめぐらせる。

 窓の外は次第に町の景色から遠ざかり、雪に閉ざされた工場街へと移って行く。

「それに端末も。旅費のクレジットもあれに入っているんだけど」

 おそらく防犯機能の作動を恐れてフランの近くに置くはずだ。フランの防犯機能は無効になっているはずだから、その用心は無駄に終わっている。

「問題ない。俺が払う。悪いが、ニネットに会わないままで帰ってほしい」

「……」

 何も聞かないで欲しいと態度ににじみ出ていた。

 釈然としないままアレックスも押し黙る。

 問答を続ける体力も今はそれほど残っていない。

 車はすっかり町を離れ、住宅街のない工場通りを走っていた。

 この近辺には昔、自動人形の一大生産工場が広がっていた。

 工業島ロウェルの下請け、その下請けの下請けまで、一帯に寄せ集まってムーブメントの加熱する自動人形を大量に生み出していたのだ。

 半分を所有していたエメス社の撤退によりたちどころに衰退を迎えてしまった。

 今は何件か個人事業の規模で残っている限りだ。

 それもいつまで持つか分からない。

 バッセル一家のホテル・カミーノもかつては出張客などで賑わったのかもしれない。あるいは、ビリー・ディックの凄惨な事件が起こらなければ、住民たちの反発心を刺激することもなかった。工場立ち退きのデモも起こらず、ロウェルは今も変わらずに自動人形の大きな故郷のままだったかもしれないのだ。

 だけど、それとこれとは関係ない。

 ニネットやエドリスには関係のないことだ。

「ニネットを傷つけたくないの? ああ、ニネットに責められたくない? でも、彼女だってじきに全部理解するよ」

 試すつもりの呼びかけにエリックは答えない。

 部外者の、それも子供に言っても仕方が無いと拒絶する空気にアレックスは嘆息を返した。エリックはほとんど物音ひとつ立てないで、まるで機械の一部にでもなってしまったみたいに、運転にだけ集中している。

 会話を諦め、アレックスは隣に眠るエドリスを見た。

 十七歳と聞いたほどには大人びて見えない。

 自分とそう年齢の代わらない幼さを見た。

 少なくとも、フランチェスカはエドリスに比べるともっと大人に似ていた。

 フランはどうしているだろう。

 見るともなしに眺めていた、エドリスの横顔がふいに傾いた。

 目を覚ましたようだ。

 ぱちりと目をあけて不思議そうに辺りを眺める。

 彼女はアレックスの姿をみとめると、花開くように微笑んだ。

「ニネット」

 と、見当違いの名前を呼ぶ。

 そうしておもむろにアレックスの頬に手を伸ばし、確かめるように触った。

 冷え切った頬に温もった手の感触がいつまでも残る。

 どうやら相手が見えていないわけではなさそうだ。

「エドリス、大人しくしていなさい」

「ニネット。ニネット」

 状況の把握能力を持たない振る舞いであちこちを見渡し、やがて外の景色に夢中になって窓に頬をくっつけた。

 窓が吐息で白く曇る。その向こうの景色も、さして変わらない色をしている。

 このまま窓を開けて外へ出ても、雪が緩衝材になってくれるかもしれない。

 アレックスはそんなことを考えて、エドリスの背中ごしに外を眺めている。

「あのね、ニネット」

「ちがうよ。ニネットは僕じゃない」

「うん」

 振り返りもせず、エドリスは頷いた。

「ニネットに会いたいの?」

 しきりに妹を呼ぶのは彼女を探しているからではないか。

 窓の外を眺めているのもそんな理由に思えて問いかける。

「ちがうよ。ニネットはぼくじゃない」

 アレックスの言葉を唐突に復唱する。まるで支離滅裂な回答だ。

 ――言葉も、フォークの使い方も、歩くことも。

 ニネットの説明を思い出す。

 ――まるで人形みたいにじっとして、黙っているの

 ――今は、いろいろ、ちょっとずつ思い出してるよ。好きだったお菓子とか、簡単な言葉とか、歩くことも……。

 深いため息は運転席から聞こえた。

 説明する言葉を待ったが、結局エリックは黙り込んだままだ。

 エドリスは自分の置かれた状況も気にせず、見知らぬ隣人に注意を払うこともなく、気ままに過ごしていた。口の中で何か不明瞭な言葉をつむぎ、唐突に笑う。

 ニネットの名を繰り返し口にしても、それが彼女の妹と結びついているようには聞こえなかった。

 かつては、快活で働き者だったという。

 エドリスは、きっと家族の和を構成する最も重要な立場にいたのだ。

 ある日に川で溺れ、奇跡的に命だけは助かったその日から、バッセル一家の不調和は始まった。

 不調和の原因を取り除いて、再び安定した輪を望んでいる。

 都合の良い展望にうんざりした。

 そこにニネットの都合は考慮されていない。勿論エドリスのことも。

 車は雪に阻まれながら、しかし少しずつ進んでいく。

 横殴りの雪に車体が揺らされ、タイヤが乗り上げたように不自然に弾んだ。

 それからしばらく、古ぼけたエンジンの音と雪を潰す車輪の回転音が車内に響く。

 合間に、何か囁くようなエドリスの声も。

 ふいに、車体が一度大きく弾み、車が止まった。

 エリックは驚くほど大きな舌打ちをして何度もエンジンをかけなおす。

 動かない車のハンドルを殴って、車外へと出て行った。

 何かを点検しているらしいが後部座席からはわからない。

「エドリス」

 答えないのは分かっていた。それでもアレックスは語りかける。

「今のうちに、外へ出よう。きみも来る……? ニネットが待ってる」

 フランを取り返す必要があった。

 それに、エドリスの無事をニネットに知らせなければならない。

 町からどれだけ離れたかは分からないが、複雑な道を進んだわけではない。

 まっすぐに進めばいずれ町に戻るだろう。

 アレックスはエドリスの返事を待った。

 エドリスはただならぬ気配を感じたか、アレックスをじっと見上げ、一度囁いた。

「ニネット」

 それを、アレックスは答えだと信じた。


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