第9話
まだ登校してくるには早い時間
朝練がある人ですらまだ来てない
薄暗くて少し寒い静かな教室
そこに私達は居た
いったい何時に来たのだろうか
彼はいつも通り自分の席に座り外を眺めている
彼が毎日何時に登校してくるのか知りたくて
朝早くに家を出たのに
下駄箱には既に彼の靴があり
教室にはもちろん彼の姿があった
「早いね、何時に来てるの?」
彼の机の前に行き誰かの椅子をそこに置くと彼と机を挟んで向き合って座る
無視する彼に
「実里に告白されたの?」
昨日のことを聞いてみた
「あぁ、あったね。そんな事」
「他人事だね」
思った事が口から出てしまった
「つまらない人間に興味は無いから」
まるで私に言っているかのように
私の方を見てそう言った
「好き」
朝日に照らされている彼の綺麗な顔を見ていると
つい、口が勝手にそう言ってしまった
「俺は嫌いだ。お前みたいな奴」
冷めた目でそう言われたのに
何故か傷つかなかった
そんな事より彼と今話せている事の方が嬉しかった
「実里は?なんで振ったの?」
私はともかく彼女は普通にいい子ちゃん
特に嫌う理由も無いはず
「あいつ程つまらない奴は居ないよ。やりたい事もやらない、言いたい事も言わない、人にばっかり合わせて。このクラスはそんな奴らばっかりだ」
「じゃあ、どんな人がいいの?」
ふとそんな疑問が浮かんできた
私の言葉を聞いた彼は
ふっと笑って「それを聞いてどうする。そいつみたいになるってか?」
馬鹿にしたように見下ろしてそう言う彼に
うん。と真面目に頷くと
「無理だ」
と一言言われた
「そんなのわからないじゃん!誰なのか教えてよ!」
ガタッと椅子から立ち上がり
少し声のボリュームを上げてそう言うと
彼はニヤッと笑ったまま
「
「新城?新城 まりあ!?」
あまりにも意外な人物の名前が出てきて
つい聞き返す
新城まりあは一言で言うとクレイジーだ
とにかく変わってる
彼女の存在は入学してすぐ噂で知った
「隣のクラスの新城まりあって人!休み時間死んでるらしいよ!」
友達にそう言われ興味範囲で見に行った事がある
確かに死んでいた
机の上に力なく上半身が横になっていて
腕はだらーんと垂れ下がっている
最初は本当に倒れたと皆んな勘違いして
大騒ぎになったらしい
でも先生が声をかけると普通に起きて
まるで邪魔をするなと言うような目で先生を見たんだとか
1年の時はただの頭おかしい人ってくらいで終わって、そこまで気にする存在では無かった
ただ3年になって初めて同じクラスになり
彼女には正直引いた
見た目はすごく綺麗、スタイルもいい
悔しいけど私よりも白い肌、パッチリとした二重の目に綺麗な涙袋、長いまつげ、黒いストレートの髪
本当に白雪姫みたいな人で
頭もいい、学年1位って噂を聞いた事がある
なのに授業が終わると電池が切れたロボットみたいにバッタリと机に倒れて寝る
ひどい時は床で寝ている事もある
次の時間が移動教室の時は
先にさっさと移動してその教室で寝る
体育の時が一番ひどい
グランドで倒れて寝るものだから
他学年の人が「人が倒れてる」って大騒ぎした事もあった
彼女は必要な会話しかしない
授業中当てられた時は答えるけど
普段話しかけても絶対に返事は返ってこない
女子は見た目から嫉妬して嫌うだろうし
男子は逆に綺麗すぎて気持ち悪いと言っていたのを聞いた事がある
彼女に関わろうとする人なんて誰も居なかった
「新城まりあ。良いよね彼女、彼女くらいの人じゃ無いと俺は興味すら湧かないよ」
意地悪そうにニヤッと笑って
それだけ言うと彼は席を立って教室を出て行く
1人残された教室で
彼が出て行ったドアを見つめる
外からは朝練してる運動部の掛け声が聞こえてきた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます