第3話

毎日彼に挨拶をする

返事をしてくれた事は一度も無いけど

それでも一瞬私の方に視線を移してくれるのが嬉しかった


仲のいい男子達には最近付き合い悪いと言われ

取り巻きちゃん達には頑張れ!と応援される

内心、私が他の男と絡まないからチャンスだと思っているくせに


「なぁ、今日ゲーセン行かね?」


前の席のたきが振り返りそう言った

彼は結構仲の良い友達で、私に好意を寄せている

いつも金欠って他の奴らに言ってるくせに

一緒に出かければバカみたいになんでも買ってくれるし、くじで決まる席替えも友達と交換して私の前の席になったらしい

友達が「交換してくれ」ってしつこかったと愚痴ってきてその事を知った


「んー考えとく」


さっきの授業で終わらなかったプリントをやりながら、彼の方を一切見ないでそう答えると

「バイト代入ったんだ、なんでも買ってやるよ!別にゲーセンじゃなくてもいいし」


その言葉に手の動きを止めて顔を上げる


「甘いもの食べたいな〜」


「いいよ!駅前のカフェいこーぜ!あそこめっちゃ美味いってねーちゃんが言ってた!」


私の一言でわかりやすいくらいテンションの上がる彼を見て「ふふっ」と笑う


「おれも丁度行ってみたかった」と笑う彼

甘いの苦手な事くらい知ってる

バレンタインだって沢山の女子から貰ったチョコを全部帰り道のゴミ捨て場に捨ててる所を見た事がる


だからあえて甘いものが食べたいと言ってみた

彼が私のためにどこまで出来るのか試してみたくなった


もし高級なバッグが欲しいと言ったらどうするのだろう


断るのか、それとも必死にバイトして買ってくれるだろうか


「楽しみ」


嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言うだけで

彼の耳は真っ赤に染まる

単純。

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