16 荒んだ食生活


 ドロシーは大学に通っている。正確に言うと、大学に在籍しているが登校することはほとんどない。家から出るのは真夜中に起きて、近所のコンビニに食事を買いに行くときくらいだ。生活費はすべて親が出している。欲しいものはネットの通販サイトで購入する。午前二時くらいに朝食、十時くらいに昼食を摂り、正午か午後一時くらいに就寝、十二、三時間眠るというライフスタイルだ。

 ドロシーは日記をつけようと思い立ったが、何もしていないので書くことができないと気づき、食事の記録を付けることにした。以下はここ最近の彼女のメニューだ。


 六月八日、朝食はエナジードリンク、バナナ一本。昼食はシュークリーム二個、ポップコーン。

 六月九日、朝食はコーヒー味のガムと缶コーヒー(コーヒー同士被ってしまい、バランスが良くない。反省)、昼食はおはぎ、ちくわ。

 六月十日、朝食はポテトチップスとオイルサーディン、昼食はなし(胃もたれがひどかった)。

 六月十一日、朝食は板チョコとヨーグルト、昼食はビスケットとコンビーフ。

 六月十二日、朝食は食パンとバナナ一本、昼食は栄養ドリンクとガムシロップ三個。

 六月十三日、朝食は肉まん二つ、昼食は冷凍チャーハンと冷凍餃子(食欲がなぜかあったので)。

 六月十四日、朝食はカップラーメン、昼食はカップ焼きそば。


 で、一週間日記をつけたところで、やはりこれは不健康ではないか? とドロシーは考え、ちょっと離れたスーパーへ行くことにした。野菜ジュースをまとめて買うためだ。しかし売り場に来たところで、自分のしていることが付け焼刃というか、野菜ジュースをいまさらまとめ買いして飲んでもあんまり意味がないのでは? と急に思えてきて、エナジードリンクの六缶パックを二つ買って帰った。


 帰り道、もう既に二本飲みながら、月に重なった朧げな竜を、ドロシーは銃で撃ち抜き、月光が雲で遮られると同時に彼女も消えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る