15 流星群の下、眠る旅人

 夏の日だった。ドロシーは田園地帯にいた。周囲には田んぼと山ばかり、山の向こうに鉄塔が聳え立つのが見える。ドロシーは旅をしている。理由は落ち着きがなさすぎるせいだ、と自分では思っていた。常に動き回っていないと安心できないのだろう。だから、どこかへ移動し続けている。行き先の知らないバスに乗り、終点のバス停を降りて当てもなく歩いていると、こんなところまでやって来てしまった。

 そのうち小さな雑貨屋を見つけて、お茶を買って飲んだ。店の婆さんは、この先ちょっと行くと駅がある、と言ったけど、それから五キロほど歩いても駅はなく、日が沈んだ。

 草茂る空き地に放置された廃車の中で、ドロシーは一泊することにした。聞こえるのは虫の声だけだ。眠れずにただ夜空を見ていると、一筋の光が走った。

 そして、それは一つだけではなかった。そのあともいくつもの流星が空に走っていくのが、ガラスのない窓から見えた。

 ドロシーは車から這い出して、錆付いた屋根に上るとそこに横たわった。

 流星を見ながら、うちに帰ろうと思った。今回の目的地は、きっとここだったのだろう。この動かない車の屋根の上が、出発前には決めていなかったこの旅の目的地だった。帰って、そしてまた旅に出よう。

 夜明け前にドロシーは目覚めた。空が白んでくるころ、起き上がって、歩き出した。駅はどこにあるのか分からない。なければそのまま歩いていくしかないだろう。朝焼けが広がり、ドロシーは鉄塔の上にまで跳躍し、天辺に止まっていた竜を両断した。


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