2 食堂のおばさんが呼んでもなかなか反応しない

 そこは小汚い食堂だ。ドロシーは野菜炒め定食を頼んだ。外が暑かったので出された水をすぐ飲んでしまい、追加を頼もうと店員のおばさんを呼んでも反応しない。しかたないのでそのまま待っていると、後から貧乏学生といった風情の青年が入ってきて、とんかつ定食を頼んだ。注文を取り終えたおばさんが脇を歩いていくので、すみません、とドロシーは言うが、やはり反応しない。瞑目の後、野菜炒め定食が運ばれてくると、ドロシーはおばさんにすみません、ともう一度声をかけ、さすがに至近距離なので「はい、なんですか?」との返答を得た。水ください、と言うとおばさんはめでたく水をくれたが、ピッチャーを傾けすぎ、盛大に机に零して拭かずに立ち去った。

 そこでドロシーは振り向きざまに拳銃〈ピースモンガー〉を発砲した。殺竜剤入り弾頭が二発、壁際にいた赤い竜を撃ち抜き、そいつは盛大に吐血した。

 学生さんは血をもろに浴びたがドロシーと同じく無表情だった。無言で野菜炒め定食を食べ、会計を済ますと、会釈して竜狩りの少女は店を出た。

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