第2話

その10『ラブリーしゃんでしゅ。鍵カッコのの中に入ってみたラブリーしゃんでしゅ。鍵カッコは『』の事でしゅ。「」に比べて強調性があるので、今日のラブリーしゃんは存在感が熊並みにありましゅ。ところで、『』 の、どこが鍵なのか解りましぇん!そう考えたら、腹が立ってきたでしゅ!もう出ましゅ!出られましぇん!鍵が掛かってましゅ!』

 「いけね。忘れものだ。今日は調理実習があるから、サニーレタスを持っていかないといけないんだ。それ、家のカギをガチャリっと」

『今がチャンス!するりと抜け出すラブリーしゃんでしゅ。なんとか、事なきを得ました。持っていたグリスを使って、ヌネヌネして出る方法を取らなくて済んで、今日はラッキーでしゅ。ただ、体が鉄くさいので、銭湯へ行きましゅ。そこで、良い事を思いついたラブリーしゃんでしゅ!急いで銭湯へ行きましゅ♪これにて失礼しましゅ♪』


その11『続・ギザギザしゃん』


「カップめんの、かやくの開け口を見抜けなかったラブリーしゃんでしゅ。もうカップめんを作るのは止めて、インスターントラーメンを作りましゅ。今度はインスターントラーメンの袋のギザギザしてない方を探して開けましゅ。な……なな……どこにもギザギザがありましぇん!これじゃ、どっちが開け口か解りましぇん!混乱してしまったラブリーしゃんなので、最終兵器ハサミを使いましゅ。ギコギコギコ。進む道というのは自分で切り開くものでしゅ。ハサミかと思ったら、よく見たらノコギリでしゅ。でも、袋は開きましゅ。結果オーライというやつでしゅ」


その12『活舌しゃん』


「ロゼ。死の事を英語でなんっていうか知ってる?」

「デスでしゅ」

「冥王の名前って知ってる?」

「ハデスでしゅ」

「丁寧な言葉で話す時、語尾につけるのは?」

「ですでしゅ」


その13『おつかれしゃん』


「戻ったぞ。最難関の営業を終え、この係長が」

「ご苦労様です!係長!」

「こらこらこーら!ご苦労さまは、目上の者に対して使う言葉ではない!お疲れ様と言うべきである!」

「そうだったんですか。お疲れ様です」

「そんな厳しい発言をしてしまった私だが、実は部下に対しても、お疲れ様というようにしているのだよ。なぜか、解るかな?」

「なぜだろう……少し考える。あっ!そうか!気さくそうな言葉を使う事で、偉そう感を出さない感で、親密さを出す事ができるという訳ですね!さすが係長!」

「そうではない。そうではないのだ。ご苦労様と言ってしまったら、おつカレーライスのギャグが言えなくなってしまう。それが私には耐えられないのだ。この荒んだ世の中では、ユーモアが最も大切なのだよ。解ったかね?」

「そうだったのか……刻み込みました!心の参考書に!」

「解ってもらえて嬉しいよ。はっはっは……と、たくわえた顎ひげをさすりながら。それでは、近所の定食屋へランチに行くとしようか」

「行きましょう!何を食べるつもりなんですか?」

「それは、もちろん。お疲れ様にかけて……」

「「おつカレーライス!」」


その14『冬のラブリーしゃん』


「さっきまでは温かかったのでしゅが、今は冷え冷えでしゅ。バナナで釘が打てましゅ。はっ……そうでしゅ。今の内に犬小屋を作りましゅ!まずは板を集めないといけましぇん!板を集める為には木を切らないといけましぇん。そこで、木を切る為にはノコギリが必要でしゅ!ノコギリがございましぇん!代わりにギザギザしたものを探しましゅ。そしたら、凍った海苔を見つけたラブリーしゃん。試してみましゅが、これじゃ木は切れましぇん!」

「ごめんよ……今日は気分がノリノリじゃないんだ……」

「手で持ってたら、海苔が湿気ってきました!使い物にならない海苔は食べてしまいましゅ。口の中にくっついて、ネバネバしましゅ!危ないところだったラブリーしゃんでしゅが、間一髪のところで飲み込めましゅ。みなしゃん、海苔を食べる時は口の中にくっつかないよう注意でしゅ!ラブリーしゃんとの、お約束でしゅ!海苔をやっつけたところで、次のギザギザを探しましゅ。凍ったホウレンソウを発見したラブリーしゃん、その葉っぱはギザギザしていて、実に切れ味でしゅ。早速、これで木を切りましゅ!ガリガリガリガリ……五十センチ四方の板を二十枚、作る事に成功したラブリーしゃんでしゅ。早速、バナナで釘を打って、犬小屋を作りましゅ。入りやすいよう、入り口を五つつけておきましゅ。風通しがいいよう、屋根も隙間を作っておきましゅ。これで完成でしゅ。後は犬が来るのを待ちましゅ。犬。犬、早くこないかなぁ……」


その15『デリバリーしゃん』


 「ピザを頼みましゅ!パイナップルが乗ってるピザを頼みましゅ!もしもし、ラブリーしゃんでしゅ」

「こちら、ピザ屋です。しかし、今は人手が足りていないのです。そちらさまがピザ屋の前まで来て頂ければ、ピザをお渡しできるのですが」

「そうしましゅ!パイナップルが乗ったピザを作ってくだしゃい!」

「あいにく、パイナップルをきらしておりまして、そちらでパイナップルを用意して頂ければ、パイナップルをお乗せしますよ」

「そうしましゅ!ちょうど縁の下にパイナップルがありましゅ!それを持っていきましゅ!」

「それでは、よろしく、お願いいたします。ガチャ、ツーツー」

「パイナップルを持ってピザ屋の前まで行く事になったラブリーしゃんでしゅ。外は雪なので出るのは億劫でしゅが、ピザを食べる為でしゅ。出発でしゅ!」


その16『デリバリーしゃん』


「この前、ちくわを頼んだらチワワが来た話をしようとしたら、タイトルが被ったラブリーしゃんでしゅ!こうなったら、あの鍵カッコに何かを投げ込んで、タイトルを変えるしかありましぇん!こういう時はハンマーを使うと便利でしゅ!行きましゅ!それ!」

『うわっ!何か飛んできた!バリバリー!』

「見事、デリバリーしゃんはヒビ割れて、バリバリーしゃんに早変わりでしゅ。これにて一件落着でしゅ」


17の巻『モッツァレラしゃん』


「モッツァレラチーズという食べ物がある。モッツァレラという響きから解る通り、モッツァとした感触の食べ物なのだ。レラはモッツァの後、舌に絡みついている様子を表現している。チーズについては、ここでは触れないものとする。モッツァは水分量が絶妙で、水でも土でもない、泥の粘り気である。粘土の質感にも似ている。つまり、粘土はモッツァなのである。しかし、誤解してもらっては困る。油粘土は真のモッツァとはいえない。真のモッツァは濡れた紙粘土である。となると、紙もまた、モッツァの可能性を秘めている。もう、お気づきだろう。この世の全ては、モッツァとなる素質を持っているのだ。そう、私も、あなたも。人生は捨てたものじゃない。それをモッツァレラは、僕たちに教えてくれた」


その18『心』


「今日は心を穏やかにする終業をしましゅ。息を吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、このセリフの最初の行の空白が少し多かった事も、今は気にしたら負けでしゅ。吐いて、二回も続けて吸って苦しいいでしゅが、心は乱しません。吐いて、吸って、吐いて吸って、吐いて、吸って、苦しいいは、いが一つ多いでしゅが、突っ込むのは野暮でしゅ。吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、今日も空気が美味しいでしゅ。やっぱり森林浴は最高でしゅ」

 

 その19『月とシュッポンしゃん』

 「ミケランジェロとセリヌンティウスは月とシュッポンでしゅ。ところで、月とシュッポンは似ていないようで似ていないと思うラブリーしゃんでしゅ。そこの辺り、本人に聞いてみたい所存でしゅ。まずは月に聞いてみましゅ」

「シュッポン?眼中にないね。ま、私は目も口も無いんですけどね。なぜ、私がシュッポンと比べられなくてはならないのか、腑に落ちないね。ま、落ちる腑もないんですけどね」

「月は黒いプールに浮いてて、とても気持ちがよさそうでしゅ。次はシュッポンにインタービューしましゅ。ご存知の通り、シュッポンは言葉が話せましぇん。そこで、シュッポンの言いたそうな言葉をラブリーしゃんが意訳しましゅ。えー……月さんですか?あれはキレイですね。よく見るとウサギの模様が書いてあるところに好感が持てます。ウサギは可愛いですよね。つまり、月も可愛いですね」

「可愛いだなんて、おじょうず。噛みついたら離さないというのは、狙った獲物は逃がさないという事なのかな?今度、私まで遊びにきなさいよ。待っているから」

「まんざらでもない月でしゅ。でも、月は箸で突いたら破けましゅ。シュッポンも、あちこちの詰まりを取る時にスッポンするやつでしゅ。だから、これはラブリーしゃんの一人芝居でしゅ。お話は、おしまいでしゅ」


その20『ダイナマイトしゃん』


「あ……あれは全てを破壊しつくしゅダイナマイトでしゅ!あれがパカッてなったら、ラブリーしゃんの手足は吹き飛んで、目も割れる事うけあいでしゅ!解除班、応答ねがいましゅ!」

「5……4……」

「カウントダウンが始まってましゅ!関係ない話をして、ごまかすしかありましぇん!1+5!1+5の答えを言ってくだしゃい!」

「1+5……6……」

「成功でしゅ!数字を増やす事に成功したラブリーしゃんでしゅ!これで一安心!」

「3……2……1……」

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