第11話 冬に鳴く蝉

 バーベキューをするにあたって、久美子さんが得意げに言っていた『良い場所』とは寮の屋上のことだった。

 現状、屋上の立ち入りは禁止されている。それだから。内見や入居の際に、英子さんは僕に説明をしなかったのだろう。

 そもそも屋上は庭園になる予定だったそうだ。それが、英子さんの祖父(先代)が病に伏し、看病やら葬儀やらで一度は白紙になったが。先代の四十九日も過ぎ、英子さんは近く業者を招いて、見積もりを出してもらう手筈らしい。工事が始まり、庭園が出来てしまえば、そこでバーベキューは出来やしない。それもあって、久美子さんはこの真冬にも拘らず、バーベキューの話を僕に持ちかけてきたのだ。

 バーベキューは人目を避けるため、晩の十時から始めることになった。それは良いとして。夜更けの寒空の下、コンクリートに直に座るのはこたえる。僕は椅子を用意した方がいいと提案した。それについては彼女も賛同したが、買うことには否定的だった。

「椅子は要るけど、買うのはなぁ。そうだ!お風呂で使ってる椅子を使おうよ」

「それは…不衛生ですよ」

「そうかなぁ。お風呂に入るときに洗えばいいんじゃない?それに風呂椅子って軽いから屋上まで持っていくのもラクだよ。そうしよう、浮いたお金はお肉にまわそうよ」

 こんな風に。彼女は女性らしい外見とは裏腹に、男性的な価値判断をする。正直なことを言えば、僕は椅子くらい買いたかった。久美子さんと初めてのバーベキューだから、雰囲気を大事にしたかった。風呂椅子に座って肉を頬張るというのは、何とも滑稽でロマンスに欠ける。

 そうは言っても、僕は彼女に従った。僕が風呂椅子に反対する理由は突き詰めれば下心なわけで。そんな謂れを彼女に説明出来るわけない。

 そういうわけで、今現在、風呂椅子に座りながら炭を熾している。しかも七輪でなく、久美子さんがゴミ捨て場で拾った植木鉢で代用しているから、着火剤を使っても火が点きにくい。

 いやいや、言い訳はやめよう。不備な条件だからこそ、彼女がここへ来るまでに万全でいたい。先日の登山の失態に続き、火も熾せない男だと思われたくない。僕はうちわで風を送りながら決意した。久美子さんが来るまでに着火できたら、今夜、彼女に合鍵を渡そう。こないだ行った登山以降、いつでも渡せるようにと、入居の際に作ったスペアはキーケースに忍ばせてある。

 僕は手首のスナップを利かせながら小刻みに風を送りつつ、合鍵を渡したあとのことを考えた。彼女が鍵を受け取った場合、それは僕のことを受け入れてくれたと解釈して良いのか。今以上の関係を望む余地は有るだろうか。例え、彼女がそれを許してくれたとしても寮で生活する以上、公には出来ない。今まで以上に人目を忍んで、互いの部屋を行き来きするしかない。それに付き合いが始まったとしても、彼女の望みにどこまで応えられるだろう。繁華街をデートして欲しいと言われても、勇気がない。こないだ山に行っただけで、あれほど、人目が気になったのだから。恋愛は良いことばかりではない。まだ始まってもいないのに気が滅入る。それならばいっそ、これまで通り寮生として親しくしておけば…そう思うと、うちわを扇ぐ手も止まる。

 何も出来ず、植木鉢の中に視線を落としていると。木炭に小さな赤い炎が宿るのが見えた。僕が何もしなくても、一度宿した炎は着々と木炭を赤らめていく。そのうち炎が木炭を包み込み、炎と木炭が渾然一体となる。暗闇のなか際立って赤く見えるそれは、小さな溶岩のようだった。

 燃え立つ溶岩の欠片を凝視していると、階段を上がる足音が聞こえてくる。植木鉢から顔を上げると、久美子さんが右手に風呂椅子を持ち、折り畳んだ段ボールを小脇に抱え、こちらに向かってくる。その出で立ちに思わず吹き出すと、久美子さんの第一声は「なんで笑うの?」だった。

「そんな格好してるからですよ」

「大垣くんだって、人のこと言えないよ」

 そう言うと、久美子さんは風呂椅子と段ボールを地べたにおろし、段ボールを組み立て、テーブルに見立てる。そして、背負っていたリュックをおろし、そこから紙皿や野菜などを取りだす。

 そうやって久美子さんが食事の準備にとりかかっている間。僕は火の番をしていたが、気持ちは別のところにあった。僕は久美子さんに気づかれないよう、彼女の風呂椅子を何度も盗み見た。昨晩もこの椅子の座面に、久美子さんの生尻が密着していたと思うと…。さっきは心が折れたけれど、今晩、彼女に合鍵を渡したいと強く思った。

「大垣くん」

 急に名を呼ばれたものだから体が硬張る。風呂椅子を凝視していたことがバレたのか。動揺から言い訳も思いつかない。

 恐る恐る久美子さんの方を見ると、彼女はこちらに身を寄せ、植木鉢を覗き込む。

「暗いから、肉の焼け具合が分からないかもね。懐中電灯を持ってきた方が良かったかな?」

 僕は内心、ほっとしつつ、「そうですね」と冷静を気取って、試しに携帯のパネル照明で網の上を照らした。久美子さんが言うように肉の焼け具合までは見えそうになかった。

「懐中電灯のアプリを落とします。確か無料のがあったはず」

 僕の機転に、久美子さんはえらく感動していた。こんなことで喜んでくれるなら易いものだ。僕がアプリを調達している間、久美子さんは野菜と肉を網に載せていく。ダウンロードし終えた頃には肉と炭火の香ばしい匂いがした。アプリを起動させ網の上を照らしてみると、思いの外、はっきり見える。久美子さんも「明るいね。無料のわりにはよくできるね」と驚く。

 久美子さんは肉をひっくり返すと、リュックから飲み物を取り出し、ペットボトルの烏龍茶を僕に渡す。久美子さんはチューハイを手にしている。そして「乾杯」と言いながら缶を宙に掲げる。僕もそれにならった。

 掲げたペットボトルの向こうで、闇夜が広がる。そこに一等星のオリオンが光る。ロマンスは健在だった。僕は今ここに居ながら、未来の自分の心が見えた。冬になってオリオン座を見るたびに、今日のことを思い出すだろう。そして久美子さんの方を見た。僕との縁が切れたあとも、彼女は僕を思い出すだろうか。今宵の出来事は彼女の心に刻まれるだろうか。

 だが、そんな感傷も。久美子さんの一声で霧消する。

「肉が焦げるよ。早く食べて」

 僕が感傷に浸っている傍らで。久美子さんは肉をタレに浸し、肉の旨みを舌に刻みつけていた。そして「あぁ幸せ」と言って、また肉を口に放り込む。

「久美子さんは本当に肉が好きなんですね」

「そうだよ。果物も大好きだけど」

「そういや、征二君は肉の区別がつかないんですよね」

「バカだから、ね。でも、征二は動物並に勘がいいから気をつけよう」

「気をつけるって?」

「だって…ここ最近、お互いの部屋を行き来してるでしょ。だから…」

「あぁ、僕と変な噂が立っても困りますよね」

「そうじゃなくて…ウチのお父さんは英子さんを信用して私を預けたわけだから。何というか、英子さんを心配させたくないっていうか…」

「それは、大家としての英子さんの体面を守りたいってことですか?」

「そうそう」

「それなら僕も同感です」

「大垣君の部屋は征二の隣だからなぁ。隣が東さんなら良かったのにな。隣が空き部屋なら、気兼ねなく行き来できたのに」

「東さんて、どういう方なんですか?」

「どういうって、嫌な奴よ」

「えっ?じゃあ…やっぱり…」

「やっぱりって何?」

「いや、なんでもないです」

「言ってよ。気になる」

「いや、でも…」

「は・や・くっ」

 酒が入っているせいか、久美子さんは高圧的な声色で急かす。

「食堂で征二君が『東さんのこと』を話してたんです。そのとき、佐伯さんが気まずそうにしてたから…娘さんの父親は東さんなのかなぁって…」

「そんなわけないじゃん!まさか、征二がそんなこと言ったの?」

「そうじゃないです。ただ、なんとなく…佐伯さんと東さんとの間には何かあったのかなぁって。男女の関係的な…」

「関係どころか、東さんが勝手に好きになって、勝手にプロポーズしただけだよ」

「そうなんですか。でも、男女の関係に至らないうちにプロポーズするって、凄く真面目な方なんじゃ?」

「真面目じゃないよ。だってプロポーズって言っても酔っぱらないながら言ったんだよ。しかも…」

 放談は急に勢いを失くす。久美子さんはチューハイを一気に飲み干すと、缶を荒々しく置いた。おかげで段ボールで出来たテーブルが一瞬跳ね上がる。

「もう止めよ。思い出したら腹が立ってきた」

「えぇー気になりますよ。続けて下さい。そんなに腹が立つなら、僕の腹を蹴ってもいいですから。人生で一回くらいなら、女の子に蹴られるのも一興です」

「何それ、変態」

 久美子さんはゲラゲラ笑う。笑い切ったところで、リュックから二本目のチューハイを取り出す。プルタブを引き、事の続きを話し出す。

「前にも。寮のみんなでバーベキューをしたことがあるの」

「ここで、ですか?」

「そう。そのときに東さんが酔っ払いながら『佐伯さんのことが好き・結婚する気もある』って言い出して。そこまでは良かったんだけど、その先がね…『僕は昔、女性を中絶させたことがある。だから佐伯さん親子のことを放っておけない』って、言うのね」

「それはなんか…馬鹿にしてますね」

「そうでしょ。だから言ってやったの。馬鹿にするなって」

「言ったんですか、本人に?」

「言ったよ。だってムカつくもん」

「東さんは何て?」

「『酷いよ、久美ちゃーん。僕が佐伯さんを好きって前提が抜けてるよぉ』って。キモイでしょ?」

 ご丁寧にも久美子さんは東さんの口調を真似て説明してくれる。久美子さんの物真似はキモさの表現が卓越していて、おかげで東さんにお会いしたことがない僕でも、東さんのキモさが身に染みた。 

「確かにキモイですけど、東さんは部屋を借りたままにしているんですよね。ってことはやっぱり、征二君が言うように。東さんなりの意思表示じゃないですか?『本気だぞ』って」

「征二、そんなこと言ったの?余計なことを…」

「久美子さんには、東さんのプロポーズは本気に見えないですか?」

「自己陶酔に見えるなぁ。佐伯さんを使って罪を償おうとしているように見える」

「そうですね。紙一重かもしれません。でもやっぱり本人も言うように『佐伯さんを好きって前提』は有ると思いますよ。嫌いな人とは結婚できないですよ」

「大垣君は好きな人いるの?」

 まさかここへきて。意中の人から意中を探られるとは思いもしない。不意を食って、一瞬、箸が止まる。冷静を気取って食事を続けるが肉の味がしない。繊維の多いガムを噛んでいるみたいだ。僕の動揺が伝染したのか、久美子さんも慌てふためき、早口で捲したてる。

「いやだって。征二と同じで東さんを庇うし。征二も、あぁ見えて彼女がいてるから。男心が分かるのかなぁと思ってさ」 

 僕は暫し黙考した。頭のうちで二つの考えが交互する。久美子さんは僕に告白させようとしているのか。それとも僕の気持ちに全く気づいていなくて、社交の一環で聞いているのか。確実な判断材料は何も無い。ここで悩んでも答えはでない。僕は悩むのをやめた。今はただ、ありのまま答えることにした。

「東さんの気持ちは分かりますよ。僕も好きな人がいますから」

「…そうなんだ。告白はするの?」

「近々、合鍵を渡そうと思ってます」 

 『今、渡せぇ!』と、心の中でもう一人の自分が叫ぶ。頭の中に司令塔は居ても、現実の自分は根性の無いプレーヤーだ。お陰でいつもの負け試合。僕はまた沈黙に伏し、これ以降、会話も盛り上がらなかった。黙々と食事を済まし、淡々と撤収作業が進んでいく。

 司令塔どころかプレーヤーの自分でも、このしっくりこない空気に危機感がつのる。僕は何とかしようと、久美子さんの様子を盗み見た。彼女はこちらに背を向け、使用済みの紙皿や割り箸をゴミ袋に捨てている。彼女の顔色は伺えないが、背中から閉鎖的なオーラを感じる。このオーラを突き破るような会心の一言を探ったが、考えれば考えるほど状況に飲み込まれてしまう。炭を片付ける手も止まる。

「まだ電気が付いてるね」

 顔を上げると、久美子さんは僕の傍らにいて、遠くを見ている。彼女の視線の先にあるのはK大の校舎で、夜の十二時を廻っているのに窓明かりが点いている。

「あの建物は理工学部ですよね」

「なんで知ってるの?」

「あの屋上の設備…あれはエアロゾルを測定するものですよね?僕の大学にもありますから」

「そうなんだ。知らなかった」

 そう言って、久美子さんは携帯を取り出す。どうやら僕が言ったことをネットで確認しているようだ。

「ほんとだ、『K大の三十八号館の屋上でエアロゾル測定』って書いてある。大垣君は理工学部なの?」

「いや、僕は理学部・物理学科です」

「なんでまた、物理?あっ、専門的なことを言うのは無しね」

「わかりました。でも、笑わないで下さいね」

 久美子さんは黙って頷く。

「こないだ。僕が『生きる意味なんて無い』って言ったの覚えていますか?」

「うん、覚えてるよ」

「あれは強がりです。本当は生きる意味を知りたいです。だから宇宙物理学を学ぼうと思ったんです。それに久美子さんに出会って、益々そう思うようになりました」

「なんで、私?」

「前に久美子さんが言ったでしょ?感受性が問われるような時代になったら、幸・不幸の格差はもっと開くって。感受性の養い方って、不明瞭ですよね。給料や成績を上げる方が簡単でしょうね。だから僕は…物理の観点から、人間が存在する意義を見つけたいんです。そしたら、もっと…みんながラクに生きていけるかなぁって」

「もし、分かったら、私にも教えて。でも、難しいことは言わんといてや」

 K大の三十八号館の窓灯りが消える。消えたと同時に、僕らは顔を付き合わせた。久美子さんは僕をじっと見つめる。その熱視線に促され、僕は意を決した。

「僕がいいと言うまで、目をつむったままでいて下さい」

 久美子さんは伏し目がちに頷くと、静かに目を閉じた。

 僕は彼女のリュックサックに合鍵を放り込んだ。


 自室に戻ってからは気が気でなかった。檻の中をウロウロするライヨンのようにベッドの前を行ったり来たり。ベッドに腰かけ、再度、携帯を覗くが久美子さんからの反応は無い。そのまま仰向けになってこれまでのことを思い返した。

 バーベキューに誘ったのも久美子さんだ。ダムへ行きたいと言い出したのも彼女だ。僕が頼んだわけでもないのにサンドイッチを作ってくれた。帰りの電車では僕の肩に寄りかかってスヤスヤ寝ていた。手応えがなかったわけではない。むしろ手応えだらけだ。それでも僕の片思いだというなら、もうお手上げだ。僕は余程、異性に縁が無いのだろう。

 なんだか自分で自分を追い詰めている。これじゃ一世一代の告白だ。夏に煩く鳴く蝉の気持ちが分かる。僕なんかここまで来るのに二十年要したわけだから、蝉より酷い。二十年待って、鳴いて、結ばれなかったら、僕はこの先どうなるだろう。道端に転がる蝉の死骸が頭をよぎる。僕も屍になって残りの寮生活をやり過ごすのか。それがあまりにも辛いなら実家へ戻ろう。

 実家に逃げるという選択肢ができたことで、気持ちが少しラクになった。心に余裕ができたことで、さっきよりも俯瞰して現状を眺めることができた。久美子さんのような美人と深夜に語らい、山へ行き、バーベキューもした。その事実だけに目を向けるなら、宝くじに当たったようなものだ。さらなる欲が出るから不安が募るのだ。期待することをやめよう。現状、悪いことなんて何もない。

 けれど。そう決意しても、期待は一向になくならない。これまでの出来事があまりに素敵過ぎて、期待を抑えることができない。彼女が作ってくれたサンドイッチは本当に美味しかった。また食べられるだろうか。案外、明日の朝、目覚めたら。久美子さんが台所にいて、サンドイッチを作っているかもしれない。そんな妄想に耽っていると、いつの間にやら眠ってしまった。


 目が覚めると、朝の十時をまわっていた。当然、久美子さんの姿はない。携帯を確認するが音沙汰もない。念のため冷蔵庫を開けてみるが、サンドイッチもない。妄想が妄想で終わった以上、朝御飯を調達しなければならない。外出着に着替え玄関に向かうと、郵便受けにチラシが数枚放り込まれていた。それをかき出すようにして取り出すと、人差し指の先に何かが当たった。

 再度、郵便受けに手を突っ込み、指で触れてみる。形状を把握するや、血の気が引く。摘まみ上げると、思った通り。昨夜、渡した合鍵だった。それが二十四時間と経たないうちに、こうして投げ返されるとは。僕はその場にへたり込んだ。

 久美子さんに会いづらい。向こうもそう思っているだろう。好意を知った以上、これからは僕を部屋に招き入れないだろう。メールや電話も控えるかもしれない。

打ち明けなければ良かった。そうしたら、また二人で、夜お茶ができたかもしれない。山にだって行けたかもしれない。あの美味しいサンドイッチだって、もう一回くらい食べられたかもしれない。虚しくて涙も出ない。今日が日曜日で良かった。講義やバイトがあれば休んでいただろう。けれどこんなに無気力になっても腹はすくのだ。

 空腹と自棄やけを起こしたい衝動が相まって、僕は『ルビアン』に行くことを思いついた。

 ルビアンとは駅前にあるケーキとサンドイッチを扱うカフェだ。ローストビーフサンドが絶品だと、英子さんから聞いていた。僕も食べたくて店に行ったのだが。帽子を被った御洒落な店員と若い女性客のせいで逃げ帰った。

 行くなら今だ。たとえ、女性客に白い目で見られようとも今なら傷つかない。失恋の痛手に比べれば、蚊に刺されるようなものだ。財布の中身を確認すると五千円ある。全部使ってしまおう。ローストビーフサンドと、ケーキをホールで買ってやる。

 負の感情に満ち満ちて、もう何も怖くない。御洒落な店員がひるむくらい、ガッツリ目を見て注文してやろう。そんなことを企みながら、突き返された合鍵を握り締め、玄関を出る。昼食に五千円使うのは初めてだ。それなら寿司や鰻を食べに行く方がいいような気もする。いや、この負の感情を爆発させなければいけない。カフェに単身乗り込んで、あのお洒落な雰囲気をぶち壊してやる。僕はテロリストさながらに殺気立ち、荒々しい手つきで鍵を突き刺す。

 興奮したせいで鍵が上手く入らない。再度、差し込んでみる。そこで漸く気づいた。これは僕の部屋の鍵じゃない。


生まれて初めて、幸せすぎて泣いた。

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