魔導騎士

 人々が魔導学を発見し、いち早く文明に取り入れたのが、大陸最大の領土を持つドルギニア国だった。

 大陸全土から有能な魔導学者を数多く登用し、その中でも取り分け魔道具の発展に大きく貢献した者には、他国者でも例外なくそれなりの地位を与えられた。

 また、その魔道具により他国の侵略、国の治安を守るために作られたのが魔導騎士隊である。

 魔導騎士隊も例外ではなく、有能な者には地位を約束され、数多くの農民出身者や没落貴族達が魔導騎士隊の門をくぐっていた。

 ドルギニア国の首都から十キロに満たない場所にある『ドルギニア魔導騎士養成所』は、高い金貨を払い、三年間、過酷な訓練を耐えた者は魔導騎士になれる事ができ、言わば下剋上を成す登竜門となっていた。

 「あと、一か月で俺達も魔導騎士か。三年間、あっという間だったな」

 「見習いをつけろよ。ドラン」

 魔導騎士養成所の三期生であるゼクス・バニングとドラン・ブリュンセルが訓練終了時間後に話しをしていた。

 「でも、三年間の間に結構人数減ったよな?」

 「三百人いた生徒も、今では百人を切ったぐらいまでになったな」

 魔導騎士養成所は金貨を払えば、誰でも入れる半面、訓練内容は過酷を極め、脱落者や死亡者により、卒業者は数少なくなっていた。

 「その点、俺達は運が良かった。入った当初に支給される魔道具が良かったおかげで、卒業できるまでになったし、何よりこの学年では、俺が二位、ドランが主席として卒業できそうだしな」

 養成所に入って、手渡される魔道具は、有名ではない魔導技師の物が渡される。

 その為、良い悪いかは運要素が高くなっていた。

 そして、毎年卒業生の順位が高い者は、有名な隊に配属できるようになっていた。

 「俺達、訓練終わっても魔道具を上手く使いこなそうと、よく自主練したじゃないか。魔道具じゃなく、自分の実力だって自信持てよ。」

 「ああ、そうだな。でもこれだけは言わせてくれ。ほんとに俺はお前達、ブリュンセル家に感謝しているんだ。農民の俺が養成所に入ることが出来たのは、ブリュンセル家が多額の入学費用を出してくれたおかげだから」

 ゼクスは幼少の頃、ブリュンセル家に使用人として仕えていた。

 そして、今回の入学も、ドランの世話役も兼ねての入学となっていた。

 「また、そうやって言うだろ?今回、何故、父上がゼクスを俺と入隊させたのは、俺の世話役もあるが、お前の才を高く評価しているからだって。だからもっと自分に自信をもてよ」

 「ああ・・・」

 ドランの慰めの言葉にグランは考え込んでしまう。

 その顔を見て、ドランはイライラしだした。

 「もうこの話しは止めよう。お前、外出日まだあったよな?今日、首都に遊びに行こう」

 「今日行くのか?また急だな」

 「まあ、いいじゃないか。俺達の卒業祝いも兼ねてってことでな。羽目を外そうぜ」

 「私も行く!」

 遠くから二人の会話を聞きつけた少女がこちらに近づいてきた。

 「レナ、行くっていったって、確か、既に外出日、全て使ってなかったか?」

 少女の名前は、レナ・サーストン。

 ゼクスとドランとは昔仲間であった。

 「大丈夫だって。教官には、ばれなきゃいいんだよ。ばれなきゃ」

 レナはいつもの能天気な感じで言っていた。

 そもそも、この養成所に入ったいきさつも魔道具を装着された武器の使用を認められる書状が欲しい為にここに入学していた。

 「ナルホド、ばれなきゃ何でもしていいんだな、レナ・サーストン」

 「セシリア教官!」

 その声の場所を見ると、三人の学年女教官であるセシリア・フェアチャイルドがそこに立っていた。

 「先程まで向こうの方におられていたんじゃ・・・」

 「戦況は常に変化する。そう雑技で教えたではないか、レナ・サーストン?」

 セシリア・フェアチャイルドは、このドルギニア国最上の地位でもある『龍』の称号を賜っていた。

 その為、鎧の背には風を発生させる魔道具を用いる為、『風龍』が刻まれていた。

 「喜べ、レナ・サーストン。そんな貴様に私が遅くまで稽古をつけてやる」

 「いたた・・・!引っ張らないでください!」

 セシリアはレナの片耳を引っ張りながら歩いていく。

 「ゼクス・バニングとドラン・ブリュンセルももうじき魔導騎士になるのだ。こんなバカみたいに、ハメを外すんじゃないぞ」

 「イタイ、イタイですって、教官!」

 そういうと、セシリアは更に力強くひっぱった。

 「モチロンであります!」

 「モチロンであります!」 

 そんな二人ハモった言葉にセシリアは笑顔になる。

 「全くお前達二人は相変わらず仲がいいな。優秀なお前達なら問題事はないと思う。まあ、楽しんで来い」

 そうしてセシリアはレナを引っ張りながらその場を後にする。

 「どうする?行くのよすか?」

 レナの絶叫が聞きながら、二人は考え込んだ。

 

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