第四話:さあ、動くなよ!
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僅か数時間程前まで豊かな畑だった土地は、今は見る影も無い。平らにならされた大地には、不可解な幾何学模様が描かれている。ミステリーサークルだ。これはいかなる超常現象か、はたまた宇宙からやって来た未知の存在からのメッセージか。
答えはそのどちらでもない。今僕が適当に描いた。先ほどまでの戦いを過程に含めるなら、超常現象と言えない事も無いか。
そして今、そのミステリーサークルの前に三つの人影がある。一人は描いた僕。もう一人は頭から血を流している白衣の女。もう一人は、中高生程の背丈の黒いワンピースの少女。
「ヒッ、九里、なんだこいつは。しっ、知り合いか? っていうか、クロイノなのか? どっ、どう見ても女の子だけど」
頭から血を流している小汚い白衣の女、日々子は言った。ふだんのニヤニヤ顔はどこへやらだ。
「今朝市役所で会ったんだ。その時は気がつかなかった……っていうか、本当にクロイノなのか?」
「わっ、私もわからないって……」
僕は市役所で何故気がつかなかった? そりゃ、派手でダサい腕時計は鞄の中だったからだ。恥ずかしくて普段から身につけられないのが悪い。
「んー? 歩さーん、この人なんて言うの?」
黒いワンピースの少女が好奇心に満ちた顔で僕に問いかけてくる。
「こっ、この人は日々子って言うんだ」
「ひひひっ、日々子です」
思わず普通に紹介してしまった。日々子も動揺している。もう一度左腕に目をやる。派手でダサい腕時計の三つのランプは点滅し、クロイノが出現している事を示している。その方角を示す長針は、しっかりと少女の方向を指し、距離を示す短針も、ほとんど距離がない事を示している。しっかりとこの子に反応している。
「ひひひ日々子! ひひひ日々子さーん!」
少女がクルクルと踊るように回りながら日々子に近づき、握手を求めるように手を出す。黒い袖から見える手は病的に細く、顔同様真っ白だ。少女は顔と首、それと手以外はすべて黒い髪か衣服で覆われている。
日々子は驚いて尻餅をつきながらも、恐る恐る握手に応えている。
「ひっ、日々子です」
「日々子!」
なんだか奇妙な挨拶だ。握手をつづけながら日々子が質問する。
「きっ、君は誰なんだ? クロイノなのか?」
「クロイノ? クロイノってなぁに? 私はお母さんの子供!」
まあ確かにクロイノって言われてもわからんよな。猫にお前は猫かって聞いてもわからないだろうし。
日々子と顔を見合わせる。僕はこの子をどうするべきなんだ? この少女がクロイノだったとしても、少女の姿形をしていてこんなに無邪気な喋り方をするやつを木に磔にするのは、かなり気が引けるぞ。しかし、クロイノだとしたら、ほっといたら何をするかわからない……。
「日々子、やっぱりおじさんを叩き起こして……」
おじさんには悪いが、もう一度畑を馬鹿にして恨んでもらうか。
「まっ、まて九里。と、とりあえずこの子、今までのクロイノとはかなり様子が違う。何より会話ができるからな。つれてってゆっくり話を聞こうじゃないか。ヒヒュッ。クロイノだとしてもそうでないにしても、興味深い。ヒヒュッ……実験材料だ! ヒヒーッ!」
日々子の目が異様にギラギラとしている。実験材料って、何をするつもりなんだ。
「つれてくって、どこに」
「ヒヒュッ、お、おいで~お母さんの子供ちゃん。怖くないよ! ヒヒヒヒ」
「はーい! これなぁに!?」
少女は一切疑う事無く日々子に駆け寄って行った。この状況でなければ日々子を誘拐犯として通報していたかもしれない。
「ヒッヒヒ、これはバイクだよ。せっ、世界一カッコいい乗り物だ」
「バイク!」
「よしよし可愛いね〜。じゃあ九里、なんかあったらすぐ呼ぶから」
「だから、どこにだよ! 大丈夫なのか!?」
……日々子は僕の質問を無視して少女をつれて行ってしまった。僕を置いたまま。
2
「怪奇! 畑にミステリーサークル出現……A市で農業を営むGさんの畑に突如としてミステリーサークルが出現した。Gさんはこのミステリーサークルが出現する前に宇宙人と思われる黒い生物に遭遇したと言う……か、ゲェー……」
鳥のマークのSNSで流れてきたウェブニュース記事があまりにも身に覚えがあるタイトルだったので思わず音読してしまった。畑には見物人も詰めかけているようだ。左腕に目をやると、青ランプが点灯し、僕が罪悪感を感じている事を主張している。
このニュース、日々子が知ったら大笑いするだろうな。あいつの事だからもう知ってるかもしれないが。
日々子は昨日あれから僕を置いて少女クロイノとどこかに行ったっきりだ。深夜に一度、絵本を読んでいる少女クロイノの写真を添付した「心配するな」という内容のメールが送られてきたが。今も無事だろうか……。本当に危険ではないのか? 何かあったらすぐ呼ぶとは言っていたが。
僕はというとあの後歩いてボロアパートまで帰るはめになったので酷く疲れた。丸一日たった今も足腰が痛い。
派手ダサウォッチの針はずっと日々子といる少女クロイノの方向と思われる方角を指している。あいつ、意外と近所に住んでいるのか。
そういえば、今新しいクロイノが出てきたらどうなるのだろう、これは近い方に反応するのだろうか。やはり日々子に連絡すべきか……いや、今あいつと会話したらもっと疲れるな。本人が心配するなって言ってるし、連絡があるまで放っておこう。気晴らしに少し出かけよう。とりあえずコンビニだ。
……コンビニから戻ってみると、グロッキーな日々子と元気な少女が僕の部屋の前に立っていた。何があったんだ……思わず身構えてしまう。
「九里さーん! 九里歩さーん! おかえりー! どこ行ってたの!?」
「九里……ヒヒュッ。昨日からこの子、質問責めで。ヒヒュッ、すごい。まるで知識欲の塊。さっきも九里がくるまでずっと質問、ヒーッ。まあ私も色々聞けたがな、ヒヒュッ」
……なんだか脱力してしまった。心配して損したようだ。いや、あまり心配などしていなかったが。何か攻撃されてグロッキーになっているわけじゃなさそうだ。
「そりゃ大変そうだな……」
ドアを開ける。少女と日々子が駆け込む。本当に大丈夫なんだろうなこの子は。少女は僕の部屋に飛び込むなり瞳を輝かせて質問を始めた。
「わー! 歩さーん! これ何ー!」
「それは布団って言って、寝るときに使うんだよ」
お茶を用意しながら答える。
「寝るって!?」
「横になって、休む事」
「休む!」
この子は日々子の家で休まなかったのだろうか。あいつの家に布団は無いのか? 日々子の方を見ると、さっきまでグロッキーだったくせに僕と少女のやりとりでゲラゲラ笑っている。
部屋の物について、一通りのこれなぁに攻撃とその説明が終わった。律儀に全部答えてしまった。床に置きっぱなしにしていたアイドルの写真集の説明が特に苦労した。
知識欲の塊か、なるほど言い得て妙だ。
「ヒヒュッ、じゃあ色々聞いた話、してやるよ。気になるだろ?」
「ああ、教えてくれ」
そうだ、本題だ。この子が結局何者なのかわかったんだろうか。
「けっ、結論から言うと、この子は、あ、しーちゃんって呼ぶ事にしたんだけど。この子はクロイノだ」
「やっぱり、そうなのか」
今まで見たクロイノと比べあまりにも人間らしいので半信半疑だったが、やはり派手ダサウォッチの探知は正しかったらしい。クロイノだとわかった以上、身構えてしまう。だがその前にひっかかる部分があった。
「ん? しーちゃんって?」
なんだその気が抜ける名前は。どこからきた名前なのだろうか。名前をつけてどうしようと言うのか。
「ヒヒュッ、クロイノが『よくない思念』から生まれるんじゃないかって話はしたよな、その話も後でするが。こっ、この子は『知りたがり』の思念から生まれたらしい。自分で言ってた。だから知りたがりのしーちゃんな」
「そう! しーちゃんは知りたがりのしーちゃん!」
知りたがり? 知りたがりが良くない思念なんだろうか。いまいちピンとこない。
良くないレベルの知りたがりがこの町に居るんだろうか。日々子曰く、クロイノの共通点として何かしら人に害がある行動をとるらしいが、この子の場合この質問責めがそうなのだろうか。確かに少しグロッキーになるが、ナースをベロベロ舐めたり車を破壊したり畑を平にしたりするよりは、ずっとマシな気がする。
「なるほど。で、この子は大丈夫なのか?」
一番気になっていた部分だ。……見た目は可愛い、行動もちょっとアレだが、可愛い。しかしクロイノだろ、今まで完全に敵だと思っていた存在なだけに、そう簡単に受け入れられなかった。
「だっ、断言はできないけど、多分心配ない。この子は良い子だぞ。可愛いしな。ヒヒュッ。ただ知りたがりなだけだ」
しーちゃんを見る。興味津々といった表情で日々子の話を聞いている。クソッ、確かに可愛い。
「わっ、私は、この子を飼うぞ」
「飼うって」
「犬だって、ペットで飼うけど野犬は殺すだろうが。そっ、それと同じ理屈だ!」
筋が通っているような通っていないような。日々子は一晩でこの子を相当気に入ったらしいが、僕はまだ安心しきってはいなかった。
日々子はさらに話を続けた。
「でだ、そんなことより驚け九里。ヒヒュッ、しーちゃんはこれが読めたんだ! それもあの文字は『お母さん』の文字らしい」
日々子が以前僕に見せたボロボロの紙切れを取り出した。謎の文字と気が抜ける絵が書いてある古い紙だ。クロイノが生まれる仕組みについて書いてあるらしいが、詳しい内容は日々子でもわからなかった。これをこの子が読めたのか!
「読めたって、マジかよ! 何が書いてあったんだ」
「焦るな、ヒヒュッ。説明してやる」
「しーちゃんも!」
二人が説明してくれた内容は、日々子が予想していた内容とほぼ同じだった。日々子は化け物と思考が近いのだろうか。
ただ一つ違っていたというか、新しくわかった事がある。『お母さん』の存在だ。しーちゃんのフワフワした説明を日々子が解読して推測しなおした内容はこうだ。
あのボロボロ神社のご神木の下に、しーちゃん達クロイノの『お母さん』なる存在が埋まっている。そのお母さんは昔の呪術師か何かで、世の中を呪いながらずっと埋まっているそうだ。神社がどうしても壊せないのも、そのお母さんの力だという。
そのお母さんの呪いの内容というのはこうだ。
人々の良くない思念(しーちゃんはヨコシマと表現していた)を、ご神木をアンテナ代わりにしてキャッチして、お母さんによる世を恨んだ呪術でそのヨコシマな思念に形を与える。
形を与えられたヨコシマな思念はその思念に従って人に害を与える行動をする。これがクロイノだ。他人のヨコシマな思いを利用した呪術だというわけだ。
最近になってクロイノの出現頻度が増えたのは、この町の住人が増え、その分ヨコシマな思念をキャッチしやすくなったからだろうとの事だった。住民が増えるのも考えものだ。
クロイノが攻撃で黒い煙になって蒸発するのは、多分思念なんてフワフワしたわけがわからないものに無理矢理形を与えているから、存在が不安定なんじゃないかとの事だった。
わかるような、わからないような。しかし、出現の範囲やタイミング、あと当のしーちゃんの事などまだわからない事も多いが、これが事実なら大進歩じゃないか。
「じゃあ今この町には少なくとも、ナースをペロペロ舐めたいって思ってるやつと、高級車を破壊したいってやつと、野菜嫌いがいるってことか?」
「ヒヒュッ、思念の内容があってるかはわからないけど、似たようなもんだな」
「ん? それって、このお母さんってのをなんとかすればクロイノは出てこなくなるんじゃないか!?」
だとすれば、戦いの終わりも近いんじゃないか!
「んー……」
日々子の反応が鈍い。
「おい日々子」
「え? はははハイ! お母さんをね! う、うーん。そうかもしれない……とっ、ところで怨念装甲二号は今もしーちゃんに反応してるんだよな。あっ、新しくクロイノが生まれた時わからなくて困るな! た、多分近くの方に優先して反応するから」
「どうしたんだお前……まあ、そうだな。どうするんだ」
しーちゃんを倒してしまう、という方法がある。が、言い出せなかった。おそらく日々子もそれくらい思いつくだろうが、この気に入りようだ。あえて言わないのだろう。無言でしーちゃんに目をやると、目が逢ってニコニコ笑って手を振ってきた。
「ヒヒッ、そうだな、た、例えばあの木の破片をいっぱいとって来て、探知機をい、いっぱい作って町中に設置してだな。反応したら場所を送ってくるようにするとか」
そんな事ができるのか、そういえばこいつの技術力は未だに謎だらけだな。何者なんだ。
「なるほど。そういえば、派手ダサ……怨念装甲二号にはあの木が使われてるんだったな。そういえば、それを採る時は何も無かったのか? お母さんの呪いだの、祟りだの」
「ああ。ヒヒュッ、い、一号が骨折したよ」
「じゃあその案は無しだな……」
一号に同情する。やっぱり日々子の扱いで心を病んでしまったに違いない。
「なーにー! なんのお話!?」
ぽかんとしていたしーちゃんが尋ねてくる。……そういえばしーちゃんは他のクロイノに対してどういう意識を持ってるんだろう。僕らはしーちゃんの兄弟を殺してますって言ったらどんな反応をするんだ? 言葉を選べ、慎重に選べ……考えていると日々子が先に口を開いた。
「私たちは、人に悪い事をする『お母さんの子供』をやっつけてるんだけど、探知機がしーちゃんに反応するから他の『お母さんの子供』探せないなって話だよ」
「馬鹿ストレートすぎるだろお前!」
思わず大声で抗議する。日々子は僕に言われてからしまったという顔をしている。二人で恐る恐るしーちゃんの方を見た。しーちゃんはキョトンとした顔をしている。
「んー? しーちゃんもやっつけるの?」
「いや、しーちゃんはやっつけないよ。悪いやつだけやっつけるんだ」
しーちゃんの問いかけに対して、咄嗟に言葉が出てしまった。さっきまでしーちゃんを倒す事も考えていたのに……自分の言葉だが酷く後味が悪い。もしかしたら、嘘になるかもしれないからだ。
しーちゃんもきっと、他のクロイノと本質は同じ物だろう。ヨコシマな思念から生まれたんだ。それがたまたま害が少ない思念で、少女の形をしているからやっつけない。そんなの僕や日々子が決めていいのだろうか。やっつけるやっつけないの境目はどこだ? 日々子が言うように、人間が犬をペットとして飼ったり、でも野良犬は駆除したり、そんな話だろうか。考えていたらしーちゃんが口を開いた。
「じゃあ大丈夫! お母さんの子供が産まれたらしーちゃんが教えてあげる!」
この返答は僕も日々子も予想外だった。
「へ? いいの? わ、私たち、見つけたらやっつけるけど、しーちゃんの兄弟じゃないの? っていうか、場所わかるの?」
「んー? しーちゃんもお母さんから産まれたけど、しーちゃんはしーちゃんで他の子は他の子。お話できないし、わかんない。お話しできない子はしーちゃんわかんない。わかんないけど場所はわかるよ!」
わかんない。わかんないってどういうことだろう。もしかしたら僕らの考える兄弟や家族とはかなり別の感覚なのかもしれない。
でもその言葉で少し救われた気がする。しーちゃんが兄弟と思っていないのなら……いや、結局僕や日々子に都合がいい、勝手な考えだ。
ふと左腕を見たら青ランプだけが点滅から点灯へと変わっていた。僕はこの子に罪悪感を感じているらしい。日々子も僕と同じような顔をしている。きっと、思う所があるのだろう。
「場所おしえてあげるね!」
「うん、ありがとう」
今は、しーちゃんを利用させてもらおう。何にしても、僕にそれが出来る以上、危険なクロイノはやっつけないわけにはいかない。
「んー? 教えてあげるってば!」
しーちゃんが日々子の白衣の裾を引っ張っている。何か様子が何かおかしい。
「教えてあげるから! 行くよ! 歩さーん! 日々子!」
日々子と顔を見合わせる。これは……?
「ん? もしかして、今出現してるの? お母さんの子供」
「うん!」
「ヒヒュッ、早速だな。いっ、行くぞ九里! お前は原付な」
「……はいよ」
3
……原付で日々子のでかいバイクの後ろを追いかける。普段僕が座っている日々子のバイクのタンデムシートにはしーちゃんが座っていて、なにやら日々子を誘導している。日々子のバイクは二五〇ccでそこそこのスピードが出る、それに加えて運転が荒いので僕はヒーヒー言いながら追いかけている。かれこれ三回信号で置いて行かれた。
ようやく日々子のバイクが止まった。僕も路肩へと原付を止める。ここは……中学校の前だ。僕の母校でもある。今は夏休みだし、部活等で出てきている生徒もすでに帰っている時間帯だが、まだ灯りのついている部屋も見える。あれは、職員室だろうか。
「日々子、ここなのか?」
「へ? あ、はははハイ。しーちゃんがこの中ってさ」
「うん! お母さんの子供がいるよ!」
「マジか……」
最近の中学校はセキュリティがわりとしっかりしていると聞く。比較的田舎のここでも多分そうなのだろうか。迂闊に入ったら警備会社がすっ飛んでくるかもしれない。さあ、どうする。
「こっちー!」
僕の心配をよそに、しーちゃんは軽々と柵を乗り越えて敷地へと入って行った。肝が冷えたが幸い警報の類いは鳴らないようだ。日々子と僕はあわてて後を追った。小汚い白衣の女と謎の大筒をかついだ男が柵を乗り越えて中学校に入って行く姿は通報モノだろうが、幸い誰にも見られなかったようだ。
柵の向こうは駐車場だった。しーちゃんが校長の銅像に駆け寄る。
「これ! これ!」
しーちゃんが校長の像をベタベタと叩いている。まさか、それがクロイノなんだろうか。
だとすればマズいぞ。色々準備不足だ! 僕を恨んでくれる人やら心の準備やら。まさか、それが狙いか? 罠?
しーちゃんは銅像にしか見えないものを叩き続けている。少女クロイノと銅像クロイノ、なんとか誰かに恨まれて変身して二体同時に戦ったとしても、怨念装甲には致命的な弱点がある。一体分解する度に変身が解けてしまうじゃないか!
しーちゃんは興奮気味に銅像にしか見えないものを叩き続けている。そして目を輝かせて言った。
「これなぁに!?」
……それから校舎を一周する間、しーちゃんのこれなぁにが止む事は無かった。校庭のあたりは特に苦労した。鉄棒の説明なんてどうしろと言うんだ。僕らは結局一周し最初の駐車場に帰ってきた。
「ヒッ、ヒヒュッ、し、しーちゃん。お母さんの子供は?」
日々子が引きつったニヤニヤ顔で尋ねる。
「んー? あー!」
首を傾げたまま何かに気がついたような顔をしている。これは、何かを企んでいる顔ではない。ただ、忘れていた顔だ! おそらくこの子に何かを企むほどの知能は、無い。
直後、校舎の反対側からガラスが割れる大きな音が聞こえて来た。一瞬日々子と顔を見合わせ、走り出す。
クロイノはすぐに見つかった。校舎の中だ。一回の廊下のガラスを片っ端から割っている。警報は……鳴っていない。大丈夫かこの学校。それとも何かクロイノの力が及んでいるのだろうか。
見失う前に割れた窓から手を入れてカギを開け、中へ入る。クロイノは僕の存在に気がついているようだが、ガラスを割り続けている。
「お前ー! 誰だ! 何をしている!」
廊下の先から慌ただしい足音とともに男の叫び声が聞こえてくる。残っていた教師の誰かが音を聞きつけて来たらしい。同時に、僕の派手ダサウォッチの赤ランプが点灯を始めた。僕が恨まれている。
「え、ち、違う! 僕じゃないです!」
「動くな! け、警察を呼ぶぞー!」
クロイノはいつの間にかどこかへ行っている。
「動くな! 動くなよ……ウッ」
背後から現れた何者かに口を抑えられ、教師は倒れた。気絶している。当然日々子の仕業だ。どうやら畑のおじさんに嗅がせた物と同じ物を嗅がせたらしい。無害なんだろうなそれ……。
「助かった……」
「ヒヒュッ、ま、待たせたな。こいつ気絶しちゃったから、それの残留恨みエネルギーが消える前に、はやく装甲にしちゃって。ほらさっさと罪悪感を感じて」
残留恨みエネルギー、なんだかすごい言葉だ。それと罪悪感を感じろって、どうしろと言うんだ。
「無茶言うなよ……やっぱこのシステム面倒くさ……あれ、この人」
その倒れている男の顔には見覚えがあった。確か……中二の頃の担任だ……まだこの学校に居たのか。中二の頃か……。
「あ……くっ、九里。ヒヒュッ、青、光ってる」
「え? あ、うん」
慌ててリューズを押し込んだ。緑色のランプが点灯し、左腕の派手ダサウォッチが体の感覚を奪いながら、白い装甲を展開していく。全身の感覚を奪い、全身を覆い尽くす。頭上で炎が燃え上がる音がし、感覚が戻る。全身にゾクゾクするような不快な、しかし強力な力が駆け巡る。
「ヒヒュッ、く、九里。ち、中学時代この人となんか、あったのか? ヒヒヒュッ」
日々子が鼻につくニヤニヤ顔で質問してくる。いかにも僕は今、この人との中学時代の事を思い出して罪悪感を感じた。
「日々子」
「ん?」
右手にパイルバンカーを装着する。準備完了だ。
「しーちゃん任せたぞ。もしも何かあったらすぐに呼べ」
「へ?」
日々子の横にはいつの間にかしーちゃんが立っていた。多分、僕の装甲展開の一部始終を見ていたはずだ。僕は日々子としーちゃんをその場に残し、クロイノを探しに駆け出した。後ろからしーちゃんの「あれなぁに!?」責めの元気な声と、日々子の悲鳴が聞こえてくる。頑張って答えろ日々子。
中学時代、あの先生にカツラ疑惑をかけてしまった件については、本当にすみませんでした。
4
クロイノはまたしてもあっさり見つかった。二階の廊下だ。ガラスを割る音ですぐにわかった。こういう昔の歌があったな……あのロックシンガーのファンの思念から産まれたんだろうか。それともここの生徒の思念か。なんにせよ、こいつは放っておくと害があるクロイノだ! やっつける必要がある。
「動くなよ!」
先生と同じ台詞を叫ぶ。クロイノが僕に気づいた。このクロイノも今までの連中同様、不気味な見た目をしていた。
角が丸みを帯びた箱のような胴体から、細長い足が下に四本、上面からは二本の細長い腕が生えており、それぞれの先端は球状になっている。それを窓ガラスに叩き付けて割っているのだ。体のサイズは大型犬程もある。
「あっ、待てこらっ」
動くなと言って動かなければ苦労しない、箱クロイノは僕から逃げながらガラスを割っている。腕の先端の球はそこそこ破壊力があるらしい。廊下を全力疾走して追う、スピードはこちらが上だ!。
正面。正しくはどちらが正面だかわからないがとにかく箱クロイノの進行方向に回り込み、手を床について思いっきり蹴りを繰り出す。転ばせてから外に放り出す算段だ。蹴りはあっさり命中した。箱クロイノが倒れる。ここまでは良かった。
「いったぁあああ!」
箱クロイノが倒れた拍子に、球状の腕が僕の横腹を思いっきり直撃した。装甲を通り抜けた鈍い衝撃が僕を襲う。あれには砲丸程の質量があるらしい。
ふらふらと起き上がって構えなおすとその時にはすでにクロイノの姿は無かった。直後、上の階からガラスを叩き割る音が聞こえた。またか……。
「……そこを動くなよ……ゲェー」
一人呟き、階段を駆け上がる。殴打されたところが痛む。あの球状の腕の威力は侮れない。できれば、二度と喰らいたくない。
「……動くなよ……頼むから」
三階へあがると箱クロイノはまたあっさりと見つかった。やはり廊下のガラスを片っ端から割っている。よほどガラスに執念があるらしい。
今度は奇襲をかけることにした、先回りし、不意打ちで窓から外へ落としてやる! 上手く行けば球状腕の重量で地面にめり込ませて動きを封じる事ができるかもしれない。
校舎の作りを思い出せ、やつの進行方向に先回りするルートがあるはずだ。地の利は多分僕にある! 僕は二階へと降りて廊下を走った。もう一カ所の階段をゆっくりと上ると、ガラスを割る音が近づいてくる。
「今だっ!」
廊下へ飛び出し、箱クロイノの球状腕を二本まとめて掴んだ。箱クロイノは凄い力で抵抗してくる。時間をかけたらその分不利だ、一気に落としてやる!
「おりゃぁああああああ!」
弾みを付け、箱クロイノを一気に持ち上げて窓から投げ落とす。箱クロイノはうめき声をあげながら落ちて行く。すぐに地面に激突した音が聞こえた、上手く行ったようだ。割れた窓から下を覗き込むと、箱クロイノが逆さになり地面に刺さっている。しかし、二つの腕を動かして今にも脱出しようとしている。
「そうはいくかっ!」
まるでヒーローのような台詞が自然と口から出た。そうだ、僕は今ヒーローで、あいつは人類に害を及ぼす敵だ。ヒロイックな気分が高揚してくる。自分も窓から飛び降り、落下しながらパイルバンカーを下に向け構える。
「食らえっ!」
落下しながら狙いをさだめて引き金を引いた。爆音とともに鉄杭が飛び出す。だが、一瞬遅かった。鉄杭は地面に突き刺さった。ギリギリ地面から抜け出してかわされてしまったようだ。
瞬時に右腕に力を込めてパイルバンカーを引き抜く。その勢いを利用し、パイルバンカーから飛び出たままの鉄杭で横なぎに箱クロイノを殴った。手応えありだ!
箱クロイノは校舎の壁に叩き付けられ、うめき声をあげながらもがいている。このチャンスを逃すわけにはいかない。
「ちょっとそのまま動くなよ!」
パイルバンカーの鉄杭を納め、空のガスボンベを排出し、予備を装填する。箱クロイノはふらつきながらも体制を立て直しつつある。急げ僕! 駆け寄りながら狙いをさだめ、引き金を引いた。
爆発音とともに鉄杭が飛び出す。同時に箱クロイノは二つの球状腕を振り回し、鉄杭をガードしようとしている。しかし今度はこちらが勝った。僅かに軌道がぶれたものの、鉄杭は球状腕のガードを押しのけて箱クロイノの胴体を貫通した。
このまま再生するまえに鉄杭ごと木に打ち付けて分解してやる!
箱クロイノを串刺しにしたままパイルバンカーを力任せに振り上げて、そのまま飛び出している先端を背後の木に突き刺した。
全身が鳥肌立ち、腕が痙攣する。全身の恨みエネルギーが鉄杭を伝わり箱クロイノと木へと伝わる。箱クロイノは、黒い煙をあげて消えた。
全身を包んでいた装甲が剥がれ落ちて、クロイノ同様に黒い煙になって消える。変身が解けたと同時に、右手のパイルバンカーの重みを片手で支えきれなくなり、僕は転んだ。
「ヒヒュッ、ヒーッ! ヒッヒッヒゲラゲラゲラ」
聞き慣れた引き笑いが聞こえてくる。日々子が割れた窓から覗いている。しーちゃんもいる。右腕からパイルバンカーを外しながら問いかける。
「今までどこにいたんだよ」
「ヒーッ! ゲラゲラ、どこって、く、九里がしーちゃん任せるって言ったから、ずっとお話してたんだ。ね」
「うん! ろーそくマンのお話聞いた!」
そうだったな、しーちゃんの相手を任せたんだった。そんな事を言った気がする。
「まあ、しーちゃんがクロイノの場所がわかって助かったな」
「ヒヒュッ、そうだな。おかげでクっ、クロイノの事も色々わかってきたし。しーちゃんが仲間になってくれて良かったよ。質問責めは大変だけどな」
「しーちゃん仲間!? 歩さーんたちの?」
仲間か、少なくとも、敵視する必要はないかもしれないが、僕の中にはまだこの子がクロイノである事が引っかかっていた。仲間か。
「ヒヒュッ、仲間だとも。よしよしお姉さんが可愛がってあげるからね」
「仲間と言うよりペットだな……」
日々子はすっかり溺愛している。それにしても、今朝会った時は殆ど会話が成立しなかった気がするが、再会してからのしーちゃんは普通に会話ができる。
市役所で別れた後から畑で再会するまでの間にここまで学習したというのだろうか、なるほど人間離れしている。『知りたがり』のクロイノの能力なんだろうか。
「ヒヒュッ。さて、さすがにこれだけ派手にやったらけっ、警察とか警備会社とかいい加減くるだろ。さっきの先生が起きる前に、にっ、逃げるぞ九里。バイクも心配だ」
5
今度は人目につきにくそうな校庭側から柵を乗り越えて敷地外へ出た。バイクは無事だろうか。三人並んで、学校の正面側へ向かって歩く。
歩きながら、前から気になっていた事を日々子に質問した。
「日々子、正義の科学者とか言ってたけど、なんでこんな事してるの?」
「え? へ? ヒッ、くくくクロイノ退治の事ですか?」
「うん。……なんだよその言葉遣い」
横を見ればしーちゃんもワクワク顔で聞いている。会話を聞くのが楽しいらしい。
「なっ、名前で呼ばれるとビックリする……ええと、きっかけは、この町のおばけの噂についてしっ、調べてたんだ。何年か前の、梨農園の事件覚えてる? 新聞にもちょっと載ったやつ」
「ああ……梨園の梨が全部落とされていたってやつだっけ、悪質ないたずらって話だったけど」
「そう、それ。でもそこの梨園のまだ小さい子供の証言が面白くて、ちょっとした噂になったんだ。黒い梨のおばけが全部落として行ったって」
「梨おばけ!」
しーちゃんが叫ぶ。梨おばけという単語がなにやら琴線に触れたらしい。日々子は話を続けた。
「お、面白いから似たような噂調べたら、結構あったんだ、この町に。ホント、都市伝説にもならないような、狭い範囲での噂になって残ってた」
「クロイノの噂が、か……」
聞いた事があるような無いような。友達が多い方じゃないから僕にまで回ってこなかったんだろうか。それにしても、日々子はこの性格でよくそんな話調べられたな。
「で、正体をつきとめて、やっつけてやろうって思った。まあ、さすがに本当に化け物に行き着いた時はびびびビビったけど、ワクワクもしたんだ! むしろワクワクの方が大きかった! 私小さい頃から弟と特撮ヒーローを良く見てて、一緒にヒーローごっことかやってたんだ。弟がヒーロー、私がその相棒の科学者」
「……正義の科学者か」
「ヒヒュッ、弟とのヒーローごっこの延長なんだ、クロイノ退治。べ、別に義務感でも使命でもなんでもない、ヒロイックな楽しさに酔ってるのさ」
日々子の話はとても意外だったが、何よりも意外な事はこいつに弟がいたって話だ。こいつが姉か……苦労しただろうな。
「あれ……じゃあまさか、一号ってのが」
日々子に質問しかけたその時、暗がりから突然何かが飛び出して来た。変質者か、まさか新しいクロイノか!
「ハーッハッハッハッハッハ! 見つけたぞおおおお!」
あまりにも突然の事で反応が遅れた、そいつは大げさに叫びながら走って来て、思いっきり、しーちゃんに体当たりした!
「化け物めええええええ!」
吹き飛ばされ倒れるしーちゃん、何が起きたのか理解できない僕。日々子は青い顔をしている。
「しーちゃん!」
しーちゃんに駆け寄る、衝撃で細い腕が妙な方向に折れ曲がっている。大丈夫だろうか。なぜこんな……突然現れた変質者に向かって叫ぶ。
「何しやがる!」
直後、自分の失敗に気がついた。暗闇に佇む変質者の左腕に、赤い光が灯ったのだ。見覚えのある、安っぽいLEDランプの赤い光が。変質者が昭和のヒーローのようなポーズを決め、高らかに叫んだ。
「変っ身っ!」
変質者が左腕の装置に触れたとたん、白い装甲が展開して一瞬で全身を覆い尽くす。そしてその頭上に赤い炎が燃え上がる。
間違い無い、こいつが一号だ。
自分がやるときは長く感じる装甲の展開も端から見れば一瞬だったのか。装甲を装着した人間を客観的に見るのは初めてだった。正確には二度目だが最初はすぐ気絶してしまった。あの時蝋燭に見えたのは、こういう事か!
頭上に三つの炎が燃えていて、白い装甲を身にまとっているその姿は、まるで額に蝋燭を付けた丑の刻参りの白装束姿を思わせた。なるほど、恨みのエネルギーで戦うヒーローらしいデザインだ。
だが、こいつの装甲には僕の装甲と大きく異なっている点があった。左腕の甲から生えている、禍々しい刺と、右腕のハンマー。まるで丑の刻参りの、釘と金槌だ。恐ろしさに身がすくむ。しーちゃんはぐったりしている。
一号がゆっくりとこちらへ向きなおり、指差して叫ぶ。
「何だお前はっ! 邪魔だ退け! そいつは怪物だぞ! さては怪物め、その人に何かしたなっ! ええい悪く思うなよそこの人!」
一号が両腕を構えた。何をする気だかわからないが、絶対にマズい! その時日々子が僕たちの間に飛び出してきた。
「やっ、やめろ一号! そそっ、装甲を解け! だいたいお前どっ、どこに行ってたんだよ!」
日々子が叫ぶ。一号は両腕を構えたままだ。
「なんだ! 退けっ! お前も操られているのかっ!? ええい卑劣な怪物め!」
「は、話を聞け一号! ああもう、コウ! 聞け! コウ!」
コウ、一号の名前だろうか。
「コウ……うっ、うるさい! 一号と呼べ!」
一号が突進し、日々子を突き飛ばした。そして一瞬で僕の前まで到達する、マズい、どうすれば良い? 話は通じそうにないし僕は生身だ。咄嗟にパイルバンカーにガスボンベを装填し、一号へ向けて引き金を引く。生身のままだと酷く重たい。
「当たれっ!」
爆発音とともに鉄杭が飛び出す。しかし一瞬で右腕のハンマーにいなされてしまった。装甲を身につけていないため衝撃と重さに負け手を離してしまう。丸腰だ。
「邪魔するなああああ!」
一号は左腕の刺を僕に振りかざした。ダメだ、避けられない! 目を閉じた瞬間、僕の体は急に突き飛ばされた。
何が起こったのかわからない、恐る恐る顔を上げると、腕が妙な方向に曲がっているしーちゃんが立っていた。僕をかばって突き飛ばしたのだ。
「しーちゃん歩さんの仲間だから! 歩さんはお話してくれるから仲間!」
顔だけニコニコしているしーちゃんが僕に叫んだ。
一瞬間を置いて、一号が左腕の刺でしーちゃんを貫いた。しーちゃんの傷口から黒い煙が吹き出す。
「消えろ怪物め!」
一号がしーちゃんを貫いたまま左腕を軽々振り上げる。
「やめろっ!」
「オラアアアア!」
一号が振り上げた左腕の刺を、しーちゃんごと木に突き刺した。一瞬頭の炎が大きく燃え上がるのが見えた。直後、一号の装甲が剥がれ、黒い煙をあげながら消えた。
しーちゃんは、消えていない。どういうわけか刺も消えずに残っている。木に突き刺さったままだ。
「ハーッハッハッハ! また会おう!」
人の姿に戻った一号は満足げに叫ぶと、どこかへ走り去ってしまった。何が起こったんだ、あいつはこれで満足なのか? 何がなんだかわからない。しーちゃんは? しーちゃんが僕を助けた?
「しーちゃん!」
起き上がり、しーちゃんを貫いている刺を引っこ抜く。傷口から僅かに黒い煙が吹き出す。引っこ抜いた刺は黒い煙をあげながら消えてしまった。
しーちゃんは、消えない。生きているのかどうかはわからないが、少なくとも消えてはいない。クロイノの再生能力で復活するだろうか。
……かばわれた。こんな細い腕の女の子にだ。僕も一号と同様、この子を倒す事さえ考えていたのに。この子は僕を仲間だと言ってかばったぞ。日々子とのあんな会話一つで、僕らを信じ込んで仲間となってくれたのか? 日々子はとっくにこの子を仲間だと思っていたのだろう。ふと突き飛ばされた日々子の方を見ると、まだ倒れたままだ。
「日々子っ!」
駆け寄り、体を揺する。呼吸を確認する、息がある。
「顔がちっ、近い……九里。大丈夫だから、大丈夫、ヒヒュッ。て、手を離せ」
「日々子……良かった」
「はははは恥ずかしいから早く離せ。ちょ、ちょっとショックで放心してただけだ」
「良かった……」
僕は脱力し、その場に座り込んだ。
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