心霊マニア

 その友人は心霊マニアだった。


 何年前だったか、友人が気まぐれに撮った風景写真に、そこにあるはずのない人の顔のようなモノが映りこんだことがあった。私も見せてもらったが、どうにもぼやけた顔であり、私には光の陰影の関係でそう見えるだけのように思えたが、どうしたことか友人はその写真をいたく気に入り、以来、様々な心霊写真や動画を収集するようになった。


 もちろん、彼は自らも再び心霊写真を撮ってやろうと、有名な自殺のスポットや幽霊が出ると噂の廃屋など、日本中の心霊スポットを駆け回って写真を撮り続けた。

 しかし、やはり最初の写真は光の加減による偶然の産物だったのだろう、彼の写真に幽霊のような何かが写りこむ事は全く無かった。

 遠出から肩を落として帰ってきた友人に、そんな馬鹿な事をしてないで、と幾度と無く諭すも、彼は一向に諦めることは無かった。意地になっていたのかもしれない。


 そして昨日。彼は殺人容疑で逮捕された。見ず知らずの他人を包丁で刺して殺したという。面会に赴いた私が彼に何故こんなことをしたのか理由を訊くと、彼はこう答えた。


「だって、いきなり殺されたら何故殺されたのか理由が気になって、僕の近くに寄って来て、写真に写ってくれるかもしれないじゃないか」

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