宛名のない手紙

ハギわら

1.暑中見舞い申し上げます。

 拝啓、暑中お見舞い申し上げます。


 暑熱耐えがたきこの頃ではございますが、先生におかれましては

 ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。

 私もおかげ様で大過なく過ごしております。


 色々あって、手紙などというものに手を染め始めました。まるで夏の植物のように、緑が色濃くなるようなそういう手紙になればと存じます。


 筆まめなほうではない、私がなぜ執筆などしているかなど、神様や仏様ですらわからないでしょう。暑熱に私の脳みそは焼き焦がされ、中でスモーク白子のようになっているのが原因かもしれません。私の毛髪は生きておりますが、灼熱の紫外線をカバーするにはいささか弱かったのかもしれません。


 人生とは不思議なもので、山あり谷あり。険しい道しかないようなことを言われています。オアシスや休憩所などはどこにあるのか。ライオンが我が子を谷に突き落としたせいでこのような言葉ができたのかもしれません。ひどい話です。人のせいにするのは気が引けるので、ライオンのせいということにしておきます。


 不平という言葉があります。

 人生の道は平らではないということかもしれませんね。文才がある先生のことです。不平に言葉を使えばそれこそ、畏怖・恐怖・恫喝・恐喝、全ての罵詈雑言を書き届けることができるのでしょう。読んだものに鮮烈な印象を植え付け、鳥肌を立たせるなど造作もないことですね。


 不満という言葉があります。

 満たされることがないみたいですね。喉が渇けば苦痛を伴いますが、水を飲むだけで満たされてしまう。そういう体に生まれた私には、不満というものがちっともわかりかねます。いずれ、先生に不満というものおもしろおかしい文章でご教授頂きたいものです。恐怖などはやめて頂きたい。夏だからと言って、稲川淳二を求めるような体質では私はないので。


 駄文を並べ、今日も元気に一日過ごすだけで満たされる満ち足りた、頭が足りない小生の戯言でございます。


 酷暑の折から、何卒ご自愛のほどお願い申し上げます。


 P.S

 なんで、手紙なんて書いてるのと?というツッコミはやめてください。

 小生にもわかりかねます。


 平成28年 盛夏

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