第4章 旅
第16話 ディレンと王
薄暗くなってきた空を仰ぎ、ディレンに問いかける。
「今日の寝床はどうするのだ? あぁ、先に言っておくが、そこで寝ている貴族様とやらは明日の朝まで目を覚まさないよ」
「……え、マジで?」
「君は私の眷属となったのだ、つまりは子供だ。子供に辛い思いはさせないよ」
子供? や、なんかちがくね? と疑問を浮かべているが、特に気にしない。ラビス達を集めて数を確認する。……ふむ、また増えたな。
「明日は王都に向かう」
「なんで?」
「魔法を広めている王と会わなければいけない」
「あぁ、今の王は偽者なんだっけ。でも、それって本当の事なのか?」
未だ信じていないのか、どこか不安そうに確認してくる。
よほど今の王を信頼しているのか?
確かに、魔法を見た限りかなり便利そうではあった。それが神素を消費して世界を壊すモノだと知らなければ、皆が喜んで使うだろう。むしろ、今更出てきて王を名乗り魔法を否定する私を拒絶するかもしれない。
「ふむ。神素を見えるようになった君ならわかるはずだが……うむ、君はもう魔法を使えないんだったね」
「それな、凄いなあの種。呑んでから体の調子がすこぶるいいんだ」
「だろう? 我ながら自身作……暴れないでくれるかな?」
体を馴染ませるように飛び跳ねたり、腕を振り回したり、おもちゃを貰った子供のように暴れまわる。
鬱陶しい事この上ない。
「神獣が生まれるまで、大体2月かかる。生まれたばかりの神獣は神素を食べられない。今の内に神素の扱いに慣れておきなさい」
「おう!」
「まだ早いが、寝るとしよう」
そこまで夜は深まっていないが、明日からの旅を考えれば早めに寝ておいても損はない。
「了解。で、どこで眠ればいいんだ?」
「ラビス」
「「きゅう!」」
「うおっ!? どっから湧いてきたっ? なんだ? ちょっやめてっ」
私の呼び声に応じ、ラビス達がわらわらと集まってくる。ディランの言い方が気に入らなかったのか、何匹か纏わりついている。
「好かれているね」
その光景を眺めながら、ぽつりと呟く。
「どこかだっ? うおぇっ? 噛むな、噛むなってばっ!」
「「「きゅいっ」」」
「あっはっは。その調子なら寝るのにも困らないだろう」
「ちょっと待てっ? まさかこいつらと一緒に寝るなんていわねぇだろうなっ!?」
絡んでるラビスを剥ぎながら私に怒鳴るような剣幕で確認してくる。
「当たり前ではないか。この子達はとても柔らかくて、暖かいぞ」
「いや暑苦しいだろっ!」
私の言葉にディレンはそう叫んだのだった。
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