第14話 神なる獣(種)を与える王


「そこまで強力な物ではないよ」


 ディレンの叫びに、私は苦笑をもって答える。

 王を生みだす事は無理なのだ。王とは超自然的現象、つまりは偶然と奇跡――幸運でのみ生まれる。

 

「いや、だってよぉ……さっき言ってたろ、神素を生み出せるのは王だけだって」

「違う。王か、王が直接生み出した存在だけだ」

「無理だろ、俺は王に生み出された覚えはねえぞ」


 無理無理と否定的なディレン。

 ふむ、さっきから何を言っているのだ?


「だから言っている。私が直接生み出したモノは神素を生みだす事が可能だと」


 手の平に載せた一粒の種、命の芽吹きを差し出す。


「――おいまさか、これが生きてるなんていわねぇだろうな……」

「もちろん、生きているとも――私は命の王だよ、生あるものしか生み出せない」

「寄生虫じゃねぇかっ!?」

「むっ、違う。これは宿主に神素を生みだす力を貸し与え、宿主が望んだ力の片鱗を与えるという優れものだぞ?」

「じゃあ、何かしらの代償はねぇんだな?」

「………」


 その言葉に、口を閉ざしてしまう。


「おいぃ!? 絶対に呑まねぇぞっ、そんな物騒なもん誰が呑むかっ!」

「――まぁ落ち着きたまえ、ちょっとした冗談さ。実際、生み出した神素を多少種に分け与えるだけでいい」

「あぁ? 生み出す力を借りて生んだ神素を与えろってのか、意味わかんねぇ……ん? 種って事は、何か生まれるのか?」


 そんな事ねぇよな? という疑問に、私は笑顔で答える。


「むろん、当然の事だとも」

「それは生まれないって事でいいんだな?」

「何を言う、生まれるに決まっているではないか」

「ざけんなっ!? 宿主になった俺の身体はどうなるってんだっ?」

 

 凄い剣幕で近づいてくるディレンを押し退け、言う。


「別になんともないぞ? 力はそのまま君に残るし、神素だって生み出せる。その上で神獣が生まれるだけの事だ」

「はぁ? 神獣って、あの神話に載ってる?」

「神話を把握していないから、一概には言えぬが……君の存在にあった唯一無二の神獣が生まれるよ」


 おお! マジかっ。と嬉しそうに種を受け取る。どうやら神獣が心に響いたらしい。……神獣と言っても、彼の心に住まう意識を具現化したものになるのだが、言わない方がいいだろうか?


 一応、ラビス達が見えている事から善の獣が生まれる事は予測出来る。しかし、彼の心を私は知らない。今の状態では、どんな獣が生まれるか分からない。まぁ生まれた獣もまた神素を生み出せるので、世界を存続させる存在になってくれよう。

 

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