第13話 涙を零した王
「ディレン、先ほど話しただろう。魔法を使い続ければ、世界を保つ神素がなくなってしまうんだ」
再度語り掛ける私の言葉に、彼は呆れる。
「だから、ないって。存在しない物を言われても困るっての」
「王の名前はなんと言うんだ?」
「たしか……ギヴェルって言う名前だ」
「ふむ、ギヴェルとやらは魔法を象徴した王、そう言う認識でいいんだね?」
私の確認に、
「そうだけど、なにかおかしな事でもあんのか?」
と、不思議そうに首を傾げていた。
先ほども言ったはずなのだが……。
「そんな王はありえない」
「はぁ」
「王とは世界の意思、象徴、存在、世界そのものと繋がって生まる者。世界を破壊する法則をもって生まれるなんて、ありえないんだ」
まだ、新しい世界を生み出す王が生まれたって方が可能性がある。
「いや、そんな事を俺に言われてもなぁ。俺はただの護衛だぞ? そこまでの学はねぇし、世界の危機とか言われてもピンッとこねぇよ」
心底困ったという表情を浮かべたディレン。
「この世界を管理している王がいるのだろ? そいつらに会いに行こうか」
「はぁっ!? 無理だってっ。そこの偉そうにしていた貴族様だって中位貴族なんだぞっ。上位貴族達がいる場所になんか入らせてもらえるわけがねぇ」
そうなのか? ……ふむ、こいつにはあれを渡しておこう。
「ディレン、君にはこの種を渡しておこう」
「種?」
私から種を受け取り、不思議そうに見入る。
「植物の種か?」
「無論、違うとも。それは君が飲む為の種さ」
「え、やだけど」
不思議そうだった顔が、素で嫌そうなモノに変わる。
「それは命の芽吹きと言って、私の力を具現化した物の一つなんだ」
「お、おう。なんだか随分と凄そうな物を……マジもんの王ってわけじゃねぇよな?」
ぶつぶつと小さい声で呟かれた為、後半は上手く聞き取れなかった。なんて言ったのだろうか?
「大した物ではないよ。この子達がいるからね、この場所だけは神素に余裕があるんだ……先日、ちょっとだけ多く生まれすぎてね……」
ヘンテコなモノが出てくる事態だけは避けたい、その為に神素を消費する為に命の芽吹きを生み出したのだ。
「あんまり飲みたくねぇけど……これって、どんな効果があるんだ?」
気が進まないのか、何度も躊躇していたディレンが、私にどんな効果があるのか聞いてきた。
「大した物ではないよ。そうだね……君が体内に取り込める神素を大幅に増やし、神格を一つ上げ自らが神素を生み出せる存在に変わるくらいなものだよ」
私の説明を聞いたディレンが、
「それって王じゃねぇかっ!!」
と叫んだ。
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