第12話 魔法をこの世から消し去ると誓った王
ディレンには悪いと思うが、神素を燃やし世界の理を無理やり書き換える魔法などというふざけた呪法をこのまま使わせるわけにはいかない。
少量の神素を体に取り込み、それを放出して法則に干渉する神法とは違い、大量の神素を取り込み燃やす事で世界を捻じ曲げる魔法。
それも魔素などと言葉を偽り広げている。……何が目的だと言うのだ? 邪神ですら世界を壊そうとはしなかった。
世界を壊してしまうという事は即ち、私達の存在すべてを消してしまうのと同じだ。そう邪神が欲した、この星そのものが消えてなくなる。
当然、消滅したものを手に入れる事は出来ない。決して、王であろうとも神であろうとも手に入れる事はできなくなる。新しく創り出しても、それは偽者、紛い物でしかない。
「ディレン、君に聞きたい事があるんだ」
「んだよ。こっちはそれどころじゃねぇんだぞ!?」
「落ち着きたまえ、君はどうやら善人らしいからね。世界の真実と神法を教えよう」
ラビス達が今だ見えている彼は、決して悪人ではないのだろう。今も纏わり付くラビスを邪険そうにしながらも傷つかないように接している。
「あ? 神法、なんだそれ。魔法とは違うのか?」
「ふむ。少しばかり長い話になるが、構わないだろう。なに、ただ少しばかりの真実を知るだけだ。恐れる事はない。その後で君に聞きたい事がある」
心して聞くといい。
そう呟いた後、私はかつて起きた邪神との戦いを聞かせた。そして、このままでは世界が滅ぶ、と言う事も。
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すべてを聞き終えたディレンは、疑わしそうに私を見やった後、
「馬鹿じゃねぇの?」
と、返してきた。
ふむ………これは想定外だ。
まさか信じてもらえないとは思ってなかった。
何故だろう? 起きた真実をそのまま話しただけだというのに。何がダメだったのだ? 私には分からない。
「どうしたら信じて貰えるのだろうか?」
「そもそも、伝わってる伝承と違うじゃねぇか」
呆れたように言い放つディレン。
「伝わっている神話はどう言った物なのだい?」
「3人の王が邪神と相打ちになって姿を消す。んで、残った生き物達を導くために生まれた王が魔法をもたらし世界は繁栄しました、おしまい。こんなところだ」
愕然とした。
世界を生み出し導く者が王だ。今の話に不思議な点はない、ある一つを除いては。
王は世界そのもの。王が死ねば、世界は緩やかに崩壊へと向かっていく。だが、すぐには崩壊しない。世界の法則から考えても、滅ぶ前に新たな王が生まれるはずだ。生まれたという話に疑問を抱く者はいないだろう。
――――――魔法という一つの言葉を理解していないのならば、疑う者は存在しないだろう。
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