第三章 忌むべき存在
第11話 魔法を知った王
私の視線は、ディレンの指先に釘付けだった。めらめらと揺れる炎。それはとても小さく、出来て種火に変えるくらいだ。
「これが生活魔法の初歩、ムスだ」
「これが、魔法……」
なんて、なんて――――――おぞましいモノなんだ!
ありえないっ。
世界の法則を壊していく呪いでしかないぞ、こんなモノッ。
自慢気に、小さな火を見せ付けてくるディレン。うざいくらいにどうでもいい。そんな事よりも、重大な事が判明した。
長い年月を掛けて徐々に神素が失われたのだと、そう思っていた。邪神との戦いで王は誰もいなくなり、残った神素で世界を維持しているから世界に満ちている神素が少ないのだと、さっきまではそう思っていた。
「ど、どうしたんだ? 何か気にいらねぇところでもあったか?」
黙り込んだ私に声を掛けて来るディレン。―――反射的に、そう反射的にだ。ディレンに神素の塊をぶつけた。
「――うおっ!? なんだ、なんだ今のっ?」
勢いよく転び、地面に倒れ込む。慌てて立ち上がり辺りをキョロキョロと見回している。結構強い衝撃を浴びたのを疑問に思っているらしい。
「あ、あんたが何かしたのか?」
恐る恐る確認してくる。
あぁ、そうだ私だ。つい、思わず神素をぶつけてしまった。悪いとは思っている。
「すまん。たぶんだが、君はもう二度と魔法が使えなくなった」
「はぁ? なに言ってんだ、この世界で魔法が使えなきゃ生きていけないぜ?」
そういいながら「ムス!」と唱えている。どうやら、魔法名を叫ぶ事で使う事が出来るようだ。先ほども同じように叫んでいた……今は出来ていないが。
「おいっおまえ俺に何をした! ホントに使えなくなってんじゃねぇかっ」
だからそう言ったではないか。何が不満なのだ? ちゃんと言ったではないか。
「何をしたんだっ。教えろっ」
「ただ、神素をぶつけただけだ」
「神素? なんだそれは、そんな物はこの世界に存在しねぇよ。あんのは魔素だけだ」
「……正気で言ってるのか?」
驚愕のあまり目を見開いてしまう。
管理どころの話じゃなかった。そもそも存在を認識してすらいなかった。
いくらなんでもこれはない。しかも、魔素なんて存在しないモノを持ち出してきた。あきらかに誰かの悪意を感じる。
「俺は本当に魔法が使えなくなったのか? 嘘だろ、嘘だと言ってくれ!」
「ふむ、簡単に言えば神素をぶつけて、君の体が神素を取り込めないようにした」
「どう言う事なんだ! 俺にも意味が分かるように言ってくれ!」
半ば狂乱し、私を掴みグングンッと首を振り回す。
い、痛い。
首が寝違えたかのようにとても痛い。
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