第7話 邂逅せし王
ラビス達を見送った日、私は人と出会った。
「君達は誰だい? 私の系譜でもないし、ましてや邪神の系譜でもないようだけど……」
こんな枯れた土地に何をしにきたのだろう?
ここには私と数匹のラビスしかいない。他にあると言ったら……神素が溜まっていたから、泉を作ったくらいかな?
「いやいや、お前こそ誰だよ。この周囲はすべて俺の土地だぞ。何を勝手に居ついてやがる」
「そうなのかい? でも、世界は王のモノだと思うよ。管理できないだろうしね」
目の前に存在するモノから神素を感じない。かと言って邪神に連なるモノ特有の邪悪な力は感じない。
「……自然から進化した生命体、という事かな」
「何をぶつぶつ言ってんだ? まぁいいや。おい、こいつを縛って馬車に放り込んどけ」
後ろに立っていた奴らが、腰に付けていた鉄の塊を掲げこちらに近づいてくる。
「悪いな、貴族様の命令ってのは絶対でな。お前も知ってるだろ? この世界で貴族様に逆らえる奴なんて、いないんだよ。分かったらおとなしく馬車に入ってくれないか? 俺だってあんたを傷つけたいわけじゃないんだ」
「?」
何を言っているのだろうか。よく分からない。
この世界は私そのモノ。話してる言葉は分かるのだが、意味がわからない。その鉄の塊で何をしようと言うのか。
「頼むよっ。早く来てくれ! 貴族様が怒っちまう前にっ」
分からないが、悲しいという感情は伝わってくる。何をそんなに悲しんでいるのだろうか?
言葉は分かっても意味を理解できないなんて、思いもしなかった。いや、たぶんだが私が寝ている間に新しく出来た単語なんじゃないだろうか。
ふむ、失敗だったな。馬車とやらが見えた瞬間にラビス達を隠したのはまずかったな。こいつらが悪意をもつものかそうでないのか、判別する術がない。
「何をしているんだ、ディレン! さっさとしないかっ。ええい私がやるっ、それを貸さんか!!」
貴族様と呼ばれた奴が、ディレンと呼ばれた奴から鉄塊を奪いとり私に近づいてくる。……何をするんだ?
気になって眺めていると、鉄塊を振りかぶり――――私に向けて振り下ろされた。……もう、終わりだろうか?
何がしたかったのか、いまいち分からなかった。が、目の前で愕然として倒れ込むこいつはなんなんだろう。
「何がしたかったの?」
当然の疑問だ。この世界で構成されたモノは多かれ少なかれ、神素を含んでいる。神素を含んだモノで私を攻撃をしたところで、意味がない。
神素の元みたいなモノだぞ、私。
そんな私の機嫌を損ねたくないのか、神素に宿った微弱な意志が私を意図的に避けてくれる。
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