第二章 遭遇

第6話 旅立ちを思う王

 数日前まで、どこまで枯れ果てた終わりの大地のみがあったというのに……気付けばラビス達で溢れていた。どうやら、張り切ったララが余った神素からたくさんのラビスを生んでしまったらしい。わ、悪い事ではないのだが。


 ちょっと困った。一応、餌となる神素は生んだ母体が直接供給できるはずなのでこれといった問題はない。


 しかし、これだけのラビスが一箇所に留まると神素が過剰なまでに生み出されそれらが固まり、ヘンテコなモノが出てきてしまう。

 一応、神素が一箇所に留まり続けると生命に異常を来たしよく分からない変化を遂げるので、そうならない為の安全策だ。……ヘンテコなのが生まれるのは、兄さんの趣味です。

 

「……君達、旅に出なさい」

「「「「「「「「きゅいっ」」」」」」」」

 私の言葉に、すべてのラビスとララが嫌そうに鳴いた。


「怖いのは分かるよ。でも、君達は世界を旅する為に生まれた種族なんだ」

 世界を回り、神素を広める為に生んだのだ。このまま、この地に留まってしまうのはまずい。


「大丈夫。君達に戦う力はないけど、私の神素から生まれた君達は、命ある者に襲われる事はないんだ」

 命の王たる私の神素を用いて、生まれた子供達だ。私の系譜であるならば襲うなんて事はありえない。……もし襲う事があるとすれば、邪神の系譜が生き残っていた場合だけ、のはず。正直、自身はない。あれから幾つモノ時が流れたのだ。

 

 私以外の系譜に連なるモノがいても、おかしくはない。

 独自に進化を遂げたモノ達がいる事は予測が付いているのだが、果たして好戦敵か友好的か……。


 悩み込んでしまった私を、ラビス達が不安そうに見つめている。うっ。怖がらせてしまったかな?


「うん、君達は悪意あるモノには見えないようになっているからね」

「「「「「「「「きゅきゅう?」」」」」」」」

 ホント? というニュアンスで鳴き声をあげる。


「本当だとも。何、この世界は君達を祝福してくれる」

 私が、この命の王が――保障しよう。


「「「「「「「「きゅぃ……」」」」」」」」

 ラビス達が悲しげに鳴く。

 分かれるのが寂しいのだろう。初めての別れというのは、切なさと寂しさを伴うものだからね。


「なに、旅立つのは明日でも構わないさ。今日は精一杯楽しみなさい」

 

 私の言葉を聞いて、はしゃぎ回るラビス達。……そんなに騒ぐと、明日の旅立ちに影響すると思うのだが、あまり野暮な事を言うのもなぁ。


 仕方ない、適度なところで止めさせよう。


 

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