第2話 困惑せし王

 神素が足りない。

 薄すぎて、出来る事が何もないのだ。


 洞窟から出てきて始めに感じたのは、世界に存在するはずの神素が極端なまでに薄い事を知り、驚愕した。


 無意識のうちに私から漏れる神素では、この辺りを満たす事は不可能だろう。それほどまでに枯渇している。

 せめて、せめて私が生み出した子供ら少しでもいれば、話は違うのだが……。


「――私が想像している以上に、まずいのかもしれない」


 かと言って、私では神素を生み出す事が出来ない。姉ならば太陽の光と熱を、兄ならば夜の星明かりと冷たい空気を神素へと変えられる。

 


 ――無論私とて王だ。



 生命の息吹さえあれば、神素に変える事が出来る。

 しかし洞窟を出た先にあったのは、荒れ果て草木一つ生えない不毛の大地だった。土でさえ枯れていて、とても生命が生きていけるような環境じゃない。


 この周辺で、生命の息吹どころか生命の残滓すら感じる事ができない。

 

 ――死んでいる土地だ。

 

 邪神か邪神の眷属に襲われた土地と似ている。

 神素の大半を奪われ、土地が死に絶え、荒れ果て死した大地だけが残る。

 似ているどころかほぼ同じ状態だ。


「この場所を神素で満たそう」


 しかし、私から漏れる神素だけではどれだけの月日が掛かるか……。私が生み出した子供らでなくても構わない。生命があれば神素を生み出せるのに。


 私を構成しているすべての神素を開放すればこの場所にも神素が溢れる。

 しかし、その手段を取れば最後――私の存在を維持する事が出来なくなりこの世界は崩壊する。

 

 世界を創りあげた3人の王がいなくなれば、世界を維持する事が出来なくなる。

 そうなれば、後は緩やかな崩壊のみが待っている。


 ――王が新たに生まれれば話は別だ。


 王とはつもり始まりの者。

 神素を自らの体と象徴で生み出せる存在。


 ……この惨状を見るに、私が長い眠りについてからは一度も生まれていないようだ。もし、もしも生まれていれば世界に存在する神素がもっと安定してるはず。


 私のように、象徴が近くに存在しないならばありうるが……考え難い事だ。

 私達、王は使命をもつ。それを果たす為に象徴が必ず存在する、あるいは自分で生み出す事が可能なはず。……いや、神素が薄くなっているのだ、私のように生み出せずに苦しんでいるのかもしれない。


「……世界を回らなければ、分かりそうもないな」

 

 苦笑を浮かべ、この地を神素で満たす方法を考えねばな。と呟いた。


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