第38話

「本当に気にしなくて良い。レアルは権力とか立場、そういった物に全く興味が無い。フランクに接してやってくれ。彼自身、丁寧な言葉遣いができないからな」

「そういうことだ。俺様の事はレアルで良い」

 ニッと笑いながら、レアルはメルメルの横を通る。

「ですが……」

「メルメル、本当に気にしなくて良いよ。レアルは何であれレアルなんだから」

「ヨウ、あなたは一体何者なの?」

 残ったヨウに、メルメルは訝し視線を送る。ヨウは誤魔化すように笑うと、「いくよ」と、言ってメルメルの前を歩いた。

 これまでは、ちゃんとした壁や床があったが、ここは固い岩盤が向きだしだった。岩盤を刳り貫き、そこを通路としている。壁や床、天井は滑らかで、壁を触ってみても凹凸を感じない。恐らく、この通路を作ったのはソフィアリアクターだろう。リアクターならば、魔法を数十倍、数百倍の威力にして、固い岩盤を刳り貫き、通路を作ることは容易いだろう。

 地下独特の湿った空気。しっかりと換気もしているのだろう、僅かだが風が流れている。照明は等間隔に灯っており、少し薄暗いが歩行には問題がなかった。

「こっちです」

 メルメルは小走りに駆けると、再び先頭を歩き出した。

「研究の材料保管庫、休憩室、データを管理する部屋も設けてあるので、この地下空間は結構複雑なんです」

 メルメルは三叉路を左に曲がり、次の丁字路も左に曲がった。

「コビー、感じるか?」

 今までのヘラヘラした表情を引っ込めたレアルは、横を歩くコビーに尋ねた。コビーはこくりと頷く。

「僕も魔神機に近づくのは初めてだけどね……」

「あの……どうかなさったのですか?」

 足を止めたメルメルは、不安そうに振り返る。

「チリチリと頭の奧が疼くんだ。多分、残光無形が魔神機に反応しているんだ」

「絶影はなんと?」

「残光無形を呼び出せば話をできるが、ここでそれをやるのは危険だ。俺様の感がそう言ってる」

 唇を噛むレアル。彼のこれほどまで真面目な表情を見るのは、久しぶりだ。

「ヨウ、絶影って、残光無形の精霊よね?」

「ああ、そうだな」

「御剱繰者って、本当に精霊と話ができるのね?」

「それが強みでもある。敵の位置察知や魔法のサポート。死角からの攻撃の自動回避。その辺りも全てやってくれるから」

「なるほど……。勉強になるわ。オリジナルソフィアも強力な精霊が宿っているから、その辺りのサポートは同じだろうけど、御剱には鈴守のサポートもあるものね」

「そうだな。考えてみれば、体は一つになるけど、サポート役が二人いるようなものだからな。繰者は細かい事は気にせず、目の前の敵に集中すればいい」

「ソフィアでは、まだリアクターにも戦闘以外の負担があるわ。基本スペック差は兎も角、その差は大きいかもね」

 メルメルはふむふむと頷く。

「コビー、どうする? ここから先は、俺だけで行こうか?」

「ヨウ、君は何も感じないのか?」

「感じないといっちゃウソになるけど……」

 ヨウも強い気配を感じる。個人的な差かも知れないが、レアルやコビーのように警戒するほどの強いシグナルは感じていない。ただ、警戒と言うよりも、不快な気分になる。胸の奥を押さえつけられたような、そんな感じだ。

「いや、大丈夫だ。念のため、ソフィアの能力は切っておく」

「そうだな、用心に越したことはない」

「レアル、さっきと言ってることがだいぶ違うな」

 ヨウはレアルを茶化すが、レアルはそれに乗らず、不満そうに鼻から息を出した。

「俺様が万事万全の状態なら、一人で完全全復活した魔神機を破壊することも可能だろうけどな。鈴守もいない俺様じゃ、絶対に勝てない。向かい合わなくても、この距離で感じられる」

「賢明だよレアル。君は戦闘にだけ関して言えば、他の追随を許さない。その感覚は大事なものだ。決して、忘れてはいけないよ」

「ああ」

 コビーはメルメルに先を促す。リアクターと御剱繰者が畏怖する存在である魔神機の力を再認識したメルメルは、同じように神妙な面持ちで頷き、黙って足を動かした。

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