第31話

「は、はい……!」

 ヨウは小さく言って。アリエールの説明に耳を傾けた。


『まず、今回の光輪祭は、各チームに一〇〇ポイント与えられる。内訳は、ソフィアリアクターが三五ポイント。ノーマルが一〇ポイント。合計で一〇〇ポイントだ。各寮、五チームあるから、合計で五〇〇ポイントずつ所持している。この持ち点は、一回戦ごとに振り分けられる』


 アリエールの説明に、サイは鼻を押さえながらコクコクと頷く。

「と言うことは、ポイントの争奪戦になるのかな?」

「だろうな。となると、うちはアリティア先輩がいないから、その三五ポイントはどうなるんだろうな?」

 ヨウが呟くと、それを聞いていたのだろうか、アリエールがにんまりと笑った。


『尚、欠席者がいる場合、その者のポイントは最初から引かせてもらう。よって、今回の欠席者、アリティア・ジジル・ウォンのいるブラックウッド・ロッジは三五ポイントのマイナスとなる。

 もう分かると思うが、今回の光輪祭はポイント争奪戦となる。最終日に合計ポイントの多い寮が優勝となる。

 各課題をこなしたチームにつき、五〇ポイントの加算。さらに、相手のリアクター、ノーマルを戦闘不能、若しくは降参させた場合、そのポイントをその寮へと移行する』


 一部から歓声が上がる。赤い服装。レッドストーン・ロッジの面々だ。見ると、その中に転校初日で戦ったゼノンの姿もあった。ゼノンはヨウの視線に気が付くと、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。やはり、アリティアのいないヨウのチームは、圧倒的に不利。それどころか、仲間のブラックウッド・ロッジのメンバーからの視線も冷たい。ヨウ達がいるだけで、最初からマイナス三五ポイント。さらに、カモとなるレイチェル、サイ、ヨウがいるのだ。合計三〇ポイントは相手チームに行くと考えた方が良い。


『それでは、一回戦の競技内容を説明する!

 一回戦は、まず、各教師から問題が出題される。その答えを、大講堂内のボードに記入するという至極単純な内容だ。原則、チーム内での相談は自由だが、同じ寮だからといって、他のチームに答えを教えるのは、もちろん禁止とする。そして、今回から特別賞が設定される。例え、寮が大敗したとしても、それなりの活躍を見せたチームには、報酬がある。皆、奮起するように』


 アリエールの言葉に各寮から歓声が上がる。これは、最初からハンディのあるブラックウッド・ロッジの各チームには救いとなる提案だ。だが、ヨウはアリエールの浮かべる笑みの意味を瞬時に理解した。

 この光輪祭というのは、優勝した寮は食事無料など様々な特権が与えられるという。それは、生徒だけではなく、そこに住んでいる教師や職員も同じだと言っていた。アリエールは、負けている寮やチームの救済ではなく、確実にブラックウッド・ロッジを潰そうとしてきている。

「こざかしい……!」

 ヨウは呻く。それと同じく、アリエールの背後に浮かぶシノの顔から笑顔をが消えていた。彼女も分かっているのだ。このルールで一番不利になるのは、ブラックウッド・ロッジだと。

 各チーム、各寮でそれぞれ協力し合うのがもっとも高得点を取りやすい。しかし、アリエールの打ち上げたルールでは、アリティアがなく、もっとも不利なブラックウッド・ロッジは最初から特別賞を意識してしまう。そうなってしまうと、他のチームを助けようとは思わない。とにかく、自分たちだけで良い成績を残そうとしてしまう。そうなってしまうと、元元不利なブラックウッド・ロッジは、総合点では絶対に勝つことはできない。ヨウ達が囲まれ、やられ、そこで六五ポイントを失ってしまうからだ。


『それでは、各人、各寮の代表という自覚を持ち、正々堂々、世界に誇るローゼンティーナの未来を背負っていることを意識して望んで欲しい。健闘を祈る!』


 アリエールとシノのホログラムが消えた。

 いよいよ、光輪祭一回戦が始まった。



 光輪祭一日目。凄まじい熱気と共に始まった初戦は、ブルーレイク・ロッジの独壇場で幕を下ろした。

 暫定順位は、ブルーレイク・ロッジ、ホワイトマウンテン・ロッジ、レッドストーン・ロッジ、そしてブラックウッド・ロッジと続いていた。

 開幕直後、問題を瞬時に解いたレイチェルとサイは走り出した。二人に答えを教えてもらったヨウとシジマも駆け出した。シジマはソフィアライズし、レイチェルを抱えて飛翔した。が、すぐに邪魔が入った。ブルーレイク・ロッジのファラだった。彼女は目にもとまらぬ早さでシジマのドレスを粉砕し、彼を地面に叩き落とした。

 驚くサイだったが、彼もブルーレイク・ロッジの生徒に狙撃された。青い光弾が足を貫き、続けざまに放たれた二発目が眉間を打ち抜いた。実弾ではなく、電気ショックを与えるパルス銃だったが、威力は凄まじく、その二発でサイは撃沈した。

「ヨウ!」

 嬉々とした表情で飛びかかってきたのはゼノンだった。見ると、彼のチームも答えを導いたらしく、リアクターが一気に飛び去り講堂へ向かっていく。そして、残ったゼノン達は他の生徒を狩ってポイントを稼ごうというのだろう。

「ゼノン!」

 抜刀したヨウは、セフィラーを凝縮したした剣でゼノンの攻撃を受け止める。しかし、ゼノンの背後から二人の人物が飛び出し、ヨウを攻撃してくる。ヨウは三人を捌くが、いかんせん数が多かった。背後に生まれたいくつもの気配。ホワイトマウンテン・ロッジの生徒の攻撃を受けながら、何とか堪えるヨウだったが、それも長く続かなかった。結局ヨウは剣で背後を切りつけられ、凄まじい電気ショックで気を失ってしまった。

 結局、ヨウ達のチームは一ポイントも点を奪えず敗退してしまった。他のチームは善戦したが、やはり数で他の寮に圧倒されてしまった。

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