476文字の世界「七月七日」

五歳になる娘が幼稚園から持ち帰ったのは、折り紙の短冊だった。

「おかーさんも書いて!」

「あら短冊。ななちゃんのはどうしたの?」

「幼稚園の笹につけてきた!」

七月七日といえばやることは一つということか。

あどけない笑顔に流され、気づいたら折り紙を手にしていた。

短冊を書くのはいつぶりだろうか。

「ななちゃんは何て書いたの?」

「織姫と彦星がちゃんと会えますようにって」

「え、どうして?」

「だって雨が降ったら二人が会えなくなっちゃう」

まるで自分のことのように悲しげな顔をする。

私はとてつもなく愛しなって、娘をぎゅっと抱き締めた。

空には雲がかかり、音もなく雨が降っている。

私は月と共に隠れる天の川を思い笑みを浮かべた。

天の川が見えなかったら織姫と彦星は会えないだなんて誰が言ったのだろうか。

地上の人工光源に侵されることなく、月光のもと一年ぶりの再会を果たす。

とてもロマンチックではないか。

私は娘を膝の上に引き上げた。

「ななちゃんも一緒に書こうか」

「いいの? 一人一枚じゃないの?」

「今日は特別ね」

雲が晴れるように顔を綻ばせる。

私の願いは、この笑顔がずっと続くことだけだ。

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