348文字の世界「口裂け女」
一日の勤務を終えた私は、家路を急いでいた。
今日は崩れたメイクを直す暇がないくらい忙しかった。早く帰ってシャワーを浴びたい。
角を曲がろうとしたそのとき、暗がりから女が飛び出してきた。
避け損ねた私はたたらを踏んで、無様に尻餅を付いた。
女は顔の半分を隠していたマスクを剥ぎ取り、恐ろしい声で言った。
「わたし、きれい?」
口裂け女の口、いや頬は、噂に違わぬ裂けっぷりであった。
私は鞄から針と糸を取りだすと、裂けた頬をあっという間に縫い合わせた。
「ほら、これできれいになった」
呆気にとられる口裂け女に再びマスクをつけさせると、私は名刺を手渡した。
「整形外科で働いてるの。2、3日したら抜糸するから、ここの住所に来てくださいね。一緒にきれいになりましょう」
私はうっすらと手術痕の残る頬をにっとつり上げ微笑んだ。
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