303文字の世界「強欲な猫」

ある晴れた日のこと、猫は釣りざおを片手に海へ繰り出した。

魚を釣って食べるのだ。

糸を垂らしてすぐ一匹のアジが釣れた。

さっそく食べようとした猫に、アジは懇願した。

「どうか私を逃がしてください。お礼に、魚のたくさんいる場所へ案内します」

これを聞いた猫は大喜びして、さっそく釣り針を外してやると、アジと共に海へ飛び込んだ。


先導するアジはどんどん沖へ泳いでいく。

「まだ着かないか?」

「まだまだです」


アジはどんどん深く潜っていく。

「まだ着かないか?」

「まだまだです」


猫はだんだん苦しくなってきた。

「まだ着かないか?」

「まだまだです」

「まだ着かないか?」

「まだまだです」



とうとう、猫は帰ってこなかった。



「まだまだですね」

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