日記1
僕は小さい頃から友達を作るのが苦手な方だった。友達がいなかった訳では無い。出来の良い兄も居たし、仲の良い友達も居た。ただ、自分から求めるのが出来なかったのだ。断られたらどうしようとか、僕の事嫌いだったらどうしようとか、考えてしまうのだ。良く言えば思慮深い、悪く言えばネガティブだ。その性格だけが親の心配事だったらしい。体は兄共々丈夫で病気知らず。歯医者にすら行ったことがない程だ。
だから学生時代は1人で居ることが多かった。その環境が手伝ってか勉強好き、読書好きになった。おかげで学生時代は成績で困ったことはなく、感想文なんかでも入賞した事もかなりあった。
なにか1つでも他人より抜きんでたものがあると、それは自分を守る盾になる。好きなものを頑張れば周りが褒めてくれた。親も喜んでくれた。人生なんて楽勝だと思った。
ただ、そんな環境も長くは続かない。社会に出て僕は躓いた。所詮勉強が出来るだけで褒められるのは学生の時だけだ。成績が良かっただけに、それなりの所に就職できた。それがそもそもの間違いだったのだ。周りはみんな勉強が出来た奴ばかりだ。それにプラス人間関係も上手く築ける奴らばかりだった。
格の違いを思い知らされた。教科書の内容は社会に出たら殆ど役には立たなかった。いや、その内容をどう使い、どう応用するかが解らなかったのだ。同期の奴らは仕事が出来て当たり前、尚且つ社内営業も上手い。みるみる差は開いていった。僕がどんなに足掻いても差は埋まらなかった。
数ヶ月ともたず僕は会社を辞めた。自分の力の無さを悔いる事など出来る筈もなく、ただひたすら会社が悪かったと自分に言い聞かせた。自分にはもっと合っている仕事がある筈だと信じ込ませた。そうでもしないと自分がもたなかった。ダメになりそうだった。学生時代に僕を守っていた盾はこんなにも脆い物だと思い知らされた。全てに嫌気が差していた。もうどうでも良いと、自暴自棄になるのに時間はかからなかった。
その時ふと思い出した。学生の時もう一つだけ好きな、得意な物が有ったではないかと。読書が好きで作文や感想文などを書くのが得意だったではないか。冷めた笑いが込み上げてきた。冗談半分本気半分。これに失敗しようが、これ以上は悪くなる筈がない。やるだけやってみよう。
これが僕の小説家の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます