第21話
21.
高校入試。鉄男は、県立の高校を受けていた。ペーパーは自信が無かった。面接はもっと酷かった。
生徒四人、教師二人の合同面接だった。
教師の「新聞は読まれますか?」の質問に、鉄男は元気に「読みます!」と答えた。
「どこを特に読まれますか?」
咄嗟に頭に浮かんでこなかった。「あの…あれです。えっと…最初のあの、一番最初のところのページです…」
鉄男は、一面記事という言葉を、発したことがなかった。
周りの失笑が聞こえた。更に
「家での気晴らしは何をしていますか?」
「ゲームとかしてます」
「どんなゲームですか?」
「シューティングが好きです」
「シューティングとはどんなゲームですか?」
シューティングの説明などしたことが無かった。言葉に詰まって無理矢理
「あの、あれです。えっと…飛行機とかが…横画面で、玉を飛ばして敵を倒す」
「倒す」の部分が、友達にでも言っているような調子になってしまい、これがまた失笑を買った。
赤面する鉄男は、ジットリとした脇汗を感じた。
早くこの場から解放されたかった。
結局この高校は落ちた。
滑り止めに受けた、誰でも“受ければ合格する”というレベルの高校に入学することになった。
周りの顔ぶれはガラッと変わった。仲の良かった人間は、誰一人としていなくなってしまった。
しかし、これは都合のいいことでもあった。
“あの敗北”を知る人間が、いなくなったからだ。
周りの人間が立ち上がって話をしたり、はしゃいでいる中、鉄男は席に座ってツンケンしていた。
一人の男子生徒と目が合った。相手の身長は同じぐらいで、瘦せ型だった。
負ける気がしないと思ったので、睨みつけるような目をした。
相手は勢いよく迫ってきた。鉄男の机をコブシで殴りつけ
「何だてめぇコラ!」
鉄男は無言で立ち上がると、更に顔を近づけて睨みつけた。
「何だっつってんだよ!」
更に無言で睨みつけた。何にも動じない冷徹な精神を相手に見せつけているようだが、実のところ怖くて声が出なかったのである。
チャイムの音で助けられた。
この一件で、鉄男はしばらく一目置かれることとなる。
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