第14話(北欧美女カリン)

<1KR=23円>




カリンさんの用意してくれた朝食は大きなお皿に入ったヨ-グルトとバナナとレ-ズン、それに黒っ ぽい大きな固いパンをスライスしたもの(少しこのパン苦手だぞ。)チ-ズとコ-ヒ- ……という組 み合わせだった。




旅行中、毎回毎回ホテルの朝食でこの黒パンを目撃したが、バイキング形式の時は、必ず他のパ ンをチョイスした。選んで食べる気はしない。これが、スウェ-デンでの普通の朝食だそうだ。そうそ う、寮のキッチンの上に面白いプレ-トがかかっていた。



 YOUR MOTHER DOES NOT WORK HERE. 

 PLEASE PICK UP AFTER YOURSELF.




いやはや、どこの国も事情はよく似ているものだ。(笑)そういえば、私が勤務する学園でも、セルフ サ-ビスの食堂でたまに自分の食べた後かたづけをしない生徒がいる。見つけたら罵倒するけど ね。






今日はヨハンナさんの母上が、私を案内してくれるらしい。9:30の約束の時間に、寮の前にヨハン ナ母の運転するボルボが停まった。ヨハンナと初めて出会う。「ファニ-」というのは顔のことだっ た。(笑)ボルボはカリンさんと私を乗せて、そのまま彼女らの通う大学へと向かった。大学と言うよ りは「公園」と言った方が似合いそうな、ストックホルム王立工科大のキャンパスの中を走り、二人 を研究室に送り届けた後、私はヨハンナさんの母上の運転するボルボで市内観光をすることになっ た。






ただ、途中から私は運転を代わってもらった。せっかく旅立つ前に国際免許証を申請してきたのだ し、どうも私の方が運転が上手に思えたからなのだ。(笑)



「運転したい!」というと、笑って交替してくれた。道は全然わからないので、右・左や車線変更な ど、指示されるままに走ったよ。






まず、バイキングの海賊船「VASA」号の展示されている博物館に出かけた。黒光りした船体は異 様な迫力がある。巨大で荘厳で、そして美しい。しかし、私はこのときもうひとつの発見もしたのであ る。案内のスライドが上映されていたのだが、スウェ-デン語の放送に対し外人観光客のために英 語の字幕が流れていた。その字幕の英語を読んでいてほぼ100%理解できたのだ。たとえ自分が 外国で映画を見ることになっても字幕が英語ならばなんとかついていけるだろうことがわかったので ある。たぶん、「受験勉強」で英語が得意だった人は、同様のことが可能なはずだ。映画をヒアリン グだけで理解するのは困難だが、リ-ディングならなんとかなる。そういう自信がついたのだった。






それから、クルマを駐車場に停めて、運河を船で渡ってミレスガ-デンに行く予定だったのだが、折 悪しく船がちょうど出たあとだった。少し遠回りになるが、クルマで迂回して、橋を渡って行くことに 変更した。ミレスガ-デンでは「ロダン展」が行われていた。園内のカフェでパンとサラダの昼食をと った。ヨハンナの母の職業は、カウンセラ-ということだった。確かに、いかにも教養のありそうな知 性的なおばさんで、英語も達者だったし(私がこんなことを言うのもおかしい話だが)話も面白かっ た。以前にススム・トネガワの講演を聞いたということだった。






ストックホルム王立工科大学には、16:00に戻ってきた。大学の中に旅行代理店があったので、そ の日の夜行列車を予約した。深夜にストックホルムを出るオスロ行きの座席をキ-プしたのだ。研 究室に行くと、カリンさんはまだコンピュ-タ-の前で苦しんでいた。当時はただのゲ-マ-だった 私には、彼女らが何の作業をしていたのか全然わからなかった。今の自分なら少しはアドバイスで きたかも知れないが。(笑)






ただ、そこで使われているコンピュ-タ-はまさに多国籍軍だった。台湾、香港、日本、デンマ- ク、スペイン、ドイツ、USA……。コンピュ-タ-を生産していると思われるあらゆる国のマシンがご ちゃごちゃに接続されていたのには全く驚いたよ。






そして、研究室の電話を借りて、ストックホルムにあるSQ(シンガポ-ル航空)の事務所に電話を入れ て、帰国する便のリコンファ-ムを行った。これを忘れると自分の予約が取り消されて、帰れないこ とになってしまう。






ヨハンナさんとカリンさんと私の3人で街に出て、イタリア料理の店に入った。イカスミのスパゲティ を食べたが、OILっぽくてうまくなかったぞ!3人で「こんなの食べてたら肥るね……」などという話題 になってしまった。彼女たちは、自分たち二人の会話ではスウェ-デン語でしゃべればいいのだ が、私に理解できるように、全部英語で話してくれた。そういうさりげない心遣いがふと嬉しくなっ た。優しいなあ……。






スウェ-デンの学校は全部無料だそうである。TEXTも無償でもらえるとか。そして、スウェ-デンの 女性は、ときどき結婚していなくても子供がいる。(日本でもそうだけどね。)でも、社会保障が充実 しているから、それで生活に困るとかいうこともないらしい。やっぱり日本とは違う……。日本人はス ウェ-デンと聞くとすぐに「フリ-SEX」と想像するがそうではなくて、「社会福祉先進国」としての側 面こそ理解しないといけない。ただ、彼女らはこういうことも言った。






「日本ではお年寄りも家族として大事にされるけど、スウェ-デンでは老人は施設に行くのが当然と されるのよ。子供じゃなくて国が面倒を見るものだという発想があるみたい……。」






その口調からは、決してそういう風潮を認めたくはないんだという雰囲気が伝わってきた。社会福祉 先進国は、また別の悩みも抱えているのである。荷物を置いてあるカリンさんの部屋に戻った。そ れから、夜行列車に乗るために地下鉄に乗ったのだが、私が持っている24時間乗車券(ほとんど 未使用)の期限が切れていた。しかし、ヨハンナさんが改札で話しかけている間に私は無事に改札 を通過した。(笑)(良い子はこういうマネをしてはいけない!)ストックホルム駅のホ-ムに停車し たオスロ行きの夜行はかなり混んでいたが、私にはちゃんとファ-ストクラスの座席がキ-プされて いた。o(^-^)o



シリヤラインで一緒だったはずの日本人女性の二人組が偶然同じホ-ムにいたが、二人の北欧美 女に見送られる私を見て、プイと横を向いていた。





カリンさんとの別れはとても悲しかった。







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