第二話 ウザい
俺は精神面があまり強くない。一度考えだしたら止まらないし、とことんネガティブな方向へ考えてしまう。そんなわけで、俺は食堂で今日見た夢の話を端島と光浦に打ち明けた。
「お前が不安になってるから、そんな夢見たんだろ」
光浦から返ってきたのは、そんな真っ当な意見だった。
「そうかな…」
「だいたい、今なんか問題があるわけじゃないんだろ?」
「それはそうだけど…」
「だったら、それでいいだろ。夢に見たからってまた不安になってたら悪循環だぞ」
本当にその通りだと思う。光浦の話は全く筋の通ったものだ。でも、俺の不安はそれだけでは拭うことができない。
俺は再び不安を吐露した。
「確かに今はいいよ、けどこの先もこの関係が続くとは限らないじゃないか。俺は別にできた人間じゃない。長所を上げろって言われても無理な話だし…」
「あー、もう…女子かお前は!」
端島がイライラしたように頭をがりがりと掻いた。そして、片手に持った箸で俺をさしてくる。
「いいか? あいつはお前のことを好きになったんだぞ! だったら少なくともお前のことを好きになった理由があるってことだろうが!」
「…それもそうか…」
そう思えば、双葉が俺を好きになった理由を知らない。別に聞く必要もなかったし、そういう話にもなったことがなかった。
「ただの夢でそんなうだうだ言ってんじゃねえよ! もっとしゃんとしてろ!」
「そう…だな」
端島の言う通りである。傍から見れば、俺はフラれる夢を見たと言って陰鬱と不安を吐き続けているウザいやつだろう。
俺…なにやってんだろ。
二人の言葉でなんだか自分の考えていることが馬鹿らしくなってきた。ああだこうだ思っていたのが、急速にしぼんでいく。
周りまで暗くなるようなオーラを発していた俺は、今からは明るく努めようと思い一気にテンションを上げた。
「よし、夢なんてもう怖くないぜ! ありがとう心の友たちよ! 俺はお前たちを愛してるぜベイベー!」
「え? なに…」
「怖ッ…」
頑張ってテンションを引き上げた俺だったが、そもそも二人のテンションがそこまで高くなかったことに気がついていなかった。しかも、俺のキャラブレまくり…!
もちろん、二人はドン引きである。あれは本気で気持ち悪がっている目ですね、はい。
そんな茶番の中で俺は自覚ができていなかった。消えたと思った恐怖心は、ただ強がりに押しとどめられただけということを。
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