第八話 アンハッピーターン
タリーズコーヒーを出ると、次はヴィレッジヴァンガードに行くことになった。
俺はヴィレヴァンにはまだ一回しか行ったことがなく、正直、どんな店なのかよく把握していない。とにかく、たくさんのものがあるってことだけは覚えているんだが…。
特に何かを買いに来たわけではないので、俺は双葉と一緒に店内を見て回ることにした。
双葉は何度も来ているらしく、慣れた動きで店内を回っていた。というか、皆ここに来ているのだろうか。俺が世間に疎いだけですかね?
「あ、ピカチュウだ」
見ている途中で、ピカチュウのスマホカバーを発見し、双葉がそれに食いついた。
「かわいい」
「好きなのか? ピカチュウ」
「好きっていうか、友達がつけてるの見てかわいいなって思って」
双葉が手に持っているピカチュウは、くりくりとしたつぶらな瞳を彼女に向けて、愛くるしい笑顔を浮かべていた。
女子の可愛いがよくわからない俺だけど、ピカチュウは素直に可愛いなと思える。
俺たちはピカチュウにさよならを継げると、次にお菓子コーナーへとたどり着いた。
「あ、これすっごいマズいやつだ」
「え、俺めっちゃ好きなんだけど」
「えー、嘘―?」
双葉が指さしたのはハリボーのゴールデンベアのグミだった。俺は小さい時から大好きなんだけど、双葉の口には合わないらしい。
「この合成着色料たっぷりの感じがいいんだけどな…」
「えー、それが嫌なんじゃん」
今日、たくさん話して見て分かったことだが、俺と双葉はあまり共通の好みがない。全然話が合わないとかのレベルではないが、いかんせん共有できる話題が少なかった。
「お、ハッピーターンあるじゃん」
いったんグミから離れて他の場所を見てみると、箱に入ったハッピーターンが積まれて置いてあった。
「そういえば、武野の誕生日って一月の二十三日だったよね」
「ああ、そうだけど…」
まさかとは思った。この話の流れからしてまさかとは思ったけど、そうなってほしくはなかった。けど、言われてしまった。
「誕生日プレゼント、これでもいい?」
「えー」
俺は露骨に嫌な顔をした。
そりゃそうだろ。彼女からの誕生日プレゼントがハッピーターン(箱入り)っておかしいだろ! 女子じゃないけどさ、もうちょっと期待してもいいじゃん!
そんあ俺の意見は反映してくれず、双葉は不穏なセリフを口にしていた。
「とりあえず候補で」
「えー」
俺の声、聞こえてるよね? ね?
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