第一章 告白

第一話 告白された

 告白された。


 そう、一言で言ってしまえば、何と簡単な言葉なのだろうか。


 しかし、一言で言ってしまうには、どれだけ重い言葉なのだろうか。


 俺――武野遙々の十五年の生涯で、こんな経験は初めてのことである。したことはあっても、されたことは今まで一度としてない。

 普段ライトノベルで読むような、甘酸っぱいものじゃないんだな、というような極めて場違いな感情はある。そのくらいの余裕はある。やはり、するのとされるのでは、精神的に大きな差があるのだろうか。

 でも、そんなことはどうでもいい。今はそんなことを気にしている空気ではない。

 彼女の気持ちに答えを出さねば。その勇気に対して、曖昧さの欠片もない、明確な答えを返さなければ。


俺は緊張に顔を赤く染めた彼女に、あらかじめ決めていた答えを告げたのだった。



 これがすべての始まりだったのだと思う。ここからが、俺の物語の始まりだったのだと思う。だけど、それを語るには、もう少し時間を遡らなければならないだろう。


 始まりの、始まりへと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る