早春の兆し

 暦の上ではもうとっくに冬は終わっているはずなのに

 何でまだこんなに寒いんだろう

 強く風が吹くとカメのように首を引っ込めるよ


 道を歩いてみても多くはまだ枯れ木模様

 でも新しい生命の息吹は確実に息付いていて

 新たな世界への目覚めを今か今かと待ち構えている


 風が止むと何時の間にか柔らかい陽射しが

 野を山を海を包み込んでいた

 ああ、これが春の兆しってヤツか

 生温い空気が僕を抱きしめている


 山の中でも飛びきり早起きの梅の木が

 後から来る仲間達を先導するかのように

 立派に花を咲かせている

 そうさ、僕はこれを愛でに来たんだ


 桜より梅の花が好きなのは

 その気高い白い花びらの所為だろうか?

 それとも誰より早く春を告げるその勇気からだろうか?

 山の中に一本だけ咲いているこの老木から

 この町の春は広がっていく


 もうすぐ春一番も吹き荒れるんだろうな

 まだまだ風は冷たいけれど

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