第七話

 フロンティアのとある街道筋。

 辺境騎士団の制服に身を包んだ三名の騎兵が、馬に揺られていた。街道を巡回する警備隊の面々である。


「すっかり温かくなりましたね。こう陽気がいいと眠くなっちまいまさぁ」

「おいおい、気を抜くなよ。一応、お勤め中だぞ」

「でも隊長、こんな田舎道じゃ盗賊だって出ないでしょうよ。なんせ、人がほとんど通らないんだから」

「そりゃあそうなんだがな。ただ、我々が街道の隅々まで漏らさず巡回してる、って事実が大切でな。それだけで犯罪の抑止に繋がるんだ……まあ、俺も正直ここまで徹底する必要はないと思うがな」

「ハハハ、今のは聞かなかったことにしときますよ、隊長」

「すまんな。まったく、管理職は面倒だよ。給料もお前たちと大して変わらんのに」


 隊長である五十がらみの男が苦笑する。


「そういや、ヒークス平原での作戦が成功したらしいですね。あそこが開拓されればまた我々の仕事が増えますな」

「ああ、あそこは農地としてかなり有望らしいからな。どっと移民が流れ込んでくるぞ」

「それなら、警備隊ももっと増員して欲しいもんですな。シラーズの対竜部隊はジャンジャン人員を増やしているってのに」

「対竜部隊は給料もいいって聞きますね。羨ましい限りだ」

「バカだなお前。実際に竜との戦いに参加したら、そんなことは言えなくなるぞ。あんな恐ろしい目にあうくらいなら、給料が安くたってここで気楽にやっていたほうがいい」

「そういえば、隊長は第三次東方遠征に参加したんでしたっけ」

「ああ。パーシヴァル将軍の戦う姿をこの目で見られたのが、俺の密かな自慢さ。声をかけていただいたこともあるんだぜ」

「へぇ、羨ましいなぁ」

「来月生まれる孫が大きくなったら、そのことを話してやるつもり……ん?」


 隊長が、街道の先に目を向ける。


「ありゃあ、馬車ですな。なにやら難儀しているようだが」

「車輪を轍にでも取られたか? しょうがない、手伝ってやろう」

「了解」


 それは二頭立ての幌馬車だった。農夫姿の二人の男が、必死になって押したり引いたりしている。

 三人は農夫と協力して、深いぬかるみにはまり込んだ馬車を引き上げた。

 二人の農夫は、しきりに警備隊の三人に礼を言う。


「ありがとうございますだ、兵隊さん」

「なに、市民の手助けをするのも我々の仕事のうちさ。ところで、お前たちはどこへ向かっているのだ」


 職業的な習慣で、隊長が尋ねた。


「へぇ、カリムの町ですだ。おらたちは、向こうのイーニド村の者でして」

「荷はなんだ?」

「林檎の酒でごぜえます。去年の秋から熟成させたやつで、おらが村の名産ですだ」


 隊員の一人が荷台を覗く。そこには、確かに木樽が数個積まれていた。


「なるほどな。しかし、カリムに行くなら西の大きな街道を行ったほうがいいぞ」

「へぇ。納期が迫っていて、ちょいと急いでいたもんで。ほら、この道のほうがいくぶん近道でごぜえますし」

「ふむ。この道は人通りが少ないから地面が荒れている。急ぐならば、尚更整備された西の街道を行ったほうがいい。急がば回れ、という言葉もある」

「おっしゃる通り。今度からは、そういたしますだ。では兵隊さん、おらたちはこの辺で失礼します」


 農夫たちは御者台に座り、その場を立ち去ろうとする。


「道中気をつけろよ……ん? なんだ、これは……」


 荷台から漂うわずかな臭い。兵士にとっては馴染み深い――火薬の臭いだ。


「待て! お前たち、止まれ!」


 三人の兵士は、馬を操り馬車の前に出る。


「……いったい、何でごぜぇましょう」

「一応、荷を改めさせてもらう」

「勘弁してくだせぇ、売り物でごぜぇますから」

「損害が出た場合は騎士団で弁償する。それならいいだろう」


 なおも渋る農夫を無視して、隊長が樽の一つに手をかけた。


「……仕方ない」


 どさり、と重たいものが地面に落ちるような音がして、隊長が後ろを振り返る。そこには、首筋をかき切られて絶命する二人の部下の姿があった。


「んなっ……!?」


 ずぶり。隊長の首にナイフが食い込んだ。ナイフはそのまま横一文字に引かれる。隊長は、声を上げることもなく倒れ伏した。


「……可哀想に。余計なことに気付かなければ、死ぬこともなかっただろう」


 そう言う農夫の表情からは、憐憫の情など一切読み取れない。二人とも、先ほどまでとは雰囲気が一変していた。


「どうする? やむを得ないこととはいえ、兵士殺しはあとあと厄介だぞ」

「大丈夫だ、考えはある。要は、われわれの目的が達せ得られるまで官憲の手から逃れられれば良いのだ」

「そう言うなら、任せよう。先を急ぐぞ」

「うむ。早く使命を果たして、この糞田舎からもオサラバしよう」


 血溜まりを残し、馬車は走り去って行った。




 ヒークス平原の戦いから半月ほどが経過した。

 フランシスの訓練は相変わらずハードなスケジュールで行われている。

 太陽は西の地平に消えようとしているころ、この日最後の訓練――格闘術訓練が行われていた。

 火器が普及するにつれ、戦場で肉弾戦が行われる機会は減った。しかし、兵士の仕事には国の治安を守ることも含まれる。犯罪者や暴徒を殺さず制圧できる技術は必要だ、ということで、ブリーディア軍の訓練課程には格闘術が組み込まれている。

 この格闘術は、さまざまな伝統武術を研究し、組み合わせて創られたものだ。打撃・投げ・関節技の三要素からなり、熟練者ともなれば武器を持った相手を素手で、しかも無駄な負傷をさせず制圧できるという。

 エドガーが見守る中、フランシスとクリスティが「切り替え」した状態で対峙していた。

 これから組み手――実戦形式の練習が行われるところだった。拳による顔面への打撃と金的は禁止のルールだ。


「始め!」


 エドガーの合図で、クリスティが一気に間合いを詰めた。


「ふっ!」


 右拳を打つフェイントからの、鋭い下段蹴りだ。バックステップでそれを避けるフランシスに、クリスティは更に肉薄しようとする。フランシスは牽制の掌打を放つが、クリスティは上体を沈めてかい潜る。クリスティの右拳が引かれた。


「まずい!」


 フランシスは、とっさに腹部をガードする。顔面へのパンチは禁止されているから、クリスティの狙いはボディだ。そう考えたのだが――


「残念!」


 クリスティの声が、フランシスの横から響く。その右拳もまたフェイントだった。クリスティはフランシスがガードを固めた隙に、側面に回りこんでいた。

 次の瞬間、フランシスの両足が地面から離れた。クリスティの放った水面蹴りによって、両足が払われたのだ。宙に浮かぶ格好となったフランシスに対し、間髪入れずクリスティの拳が振り下ろされる。


「ぐはぁっ!」


 腹部をしたたかに打たれ、フランシスの身体が地面に叩きつけられた。


「フランシス、何してる! まだ終わりじゃねぇぞ!」


 エドガーの叱責が飛ぶが、時既に遅し。フランシスの左腕はクリスティにがっちりとホールドされていた。

 フランシスは、それを振りほどこうと必死にもがく。しかし――左腕から伝わる感触が、フランシスを惑わせる。男の肉体とは明らかに異質な柔らかさ。ダイアナに比べれば女性らしさに乏しい体型だが、それでもやはりクリスティは女なのだと実感させられる。


「隙あり!」


 フランシスに生まれた一瞬の気の緩みを見逃さず、クリスティがフランシスの左腕を両手で引き絞る。


「いでででっ! 参った! 参った!」


 クリスティの腕十字固めによって、フランシスはあえなくギブアップした。

 クリスティとは数度組み手を行っているが、どうにもやりにくい。女性に攻撃することに引け目は感じるし、投げ技や関節技で身体が密着すると思考が停止してしまう。

 一方、クリスティのほうは異性を意識して躊躇することはなかった。それどころか、初心者のフランシスに対し容赦なく全力で向かってくる。


「ああ、スッキリした。最近勉強ばっかりさせられて、ストレス溜まってたんだよね」


 どうやら、訓練にかこつけてストレスを発散させていたらしい。相手を務めるフランシスとしては堪ったものではないのだが。

 しかし、自分に付き合って座学を受けさせられているのだから少しくらい我慢しよう、と思うことができるのはフランシスの美徳と言えよう。


「ほら立て、フランシス! 今度は俺が相手だ」


 息つく暇も与えず、エドガーがフランシスの前に立ちはだかる。


「よ、よろしくお願いします!」


 フランシスは、がむしゃらにエドガーに立ち向かって行った。




 そうして、小一時間ほどが経過した。日はすっかり落ち、演習場の各所には篝火が焚かれている。


「も、もう駄目……限界」


 二人を相手に延々組み手を繰り返したフランシスは、大の字になって地面に転がっていた。訓練で負傷したわけではない。「燃料切れ」を起こしかけているのだ。

 格闘術をはじめとした身体を使う訓練は、全てフランシスが「燃料切れ」を起こすまで行われる。戦場においては常に自分の体力を把握できていなくては、引き際を見誤る。そのため、自分がどれだけ力を使えば「燃料切れ」を起こすのかということを、徹底的に身体に叩き込むのだ。


「じゃあ、そろそろ上がるか」

「そうだね。ほらフラン、立てる?」


 クリスティがフランシスに肩を貸そうとする。しかし、今のクリスティは上着を脱ぎ、木綿のシャツ一枚だ。シャツは汗で身体に張り付いて、薄らと肌色が透けている。フランシスは慌てて目を逸らした。


「ん? どうしたの?」

「い、いや、なんでもないよ! よっと」


 よろけながらもフランシスは自力で立ち上がった。


(軍で暮らすと、女の人でもみんなクリスみたいになっちゃうんだろうか。でも、少佐がこんな姿をしているのは想像つかないし……)


 首を捻りつつ、フランシスはエドガーの後を追った。

 三人は演習場を抜け、基地正門から続く中央通りを並んで歩いていたが――突如、クリスティの足が止まる。


「おうおう、こんな遅くまで訓練とは殊勝なことじゃ」

「ひっ!?」


 クリスティが可愛らしい悲鳴を上げた。クリスティの背後から二本の手が伸び――その控えめな胸を揉みしだきだしたからだ。

 フランシスが振り向く。その手の主は小柄な老人だった。背丈はクリスティよりもやや低いくらいか。顎から口元までが豊かな白いひげで覆われている。

 クリスティが呆気に取られたのは一瞬だった。


「この……エロジジイがぁーーっ!」


 振り向きざま、上体を捻って右拳を振り抜く。拳は老人のみぞおちに深々とめり込み、老人の身体は十メートル近く吹っ飛ばされた。


「ちょ、クリス! 死んじゃうだろ!」


 クリスティは、訓練後まだ「切り替え」を切っていない状態だった。竜人の力をもろに受ければ、最悪死の危険性がある。フランシスは慌てて老人に駆け寄った。


「フランシス、その爺さんなら心配いらねぇよ」

「えっ?」


 エドガーの言葉通り、老人はむくりと起き上がった。


「おおぅ……年寄りに対してなんて仕打ちじゃ、クリス嬢ちゃんよ」

「年寄りなら年寄りらしく大人しくしててよ、アルフお爺ちゃん」

「訓練で疲れた身体を揉み解してやろうと思っただけなのに……」

「結構です」


 クリスは心底呆れ果てた表情だ。


「えっと……大丈夫ですか?」


 フランシスが、一応老人に声をかける。


「おう、お前さんが噂の新人じゃな。老人を労わる心を忘れないとは、今時感心な若者じゃのう」

「フランシス、その爺さんも『大鷲』のメンバーだぜ」

「ええっ、本当ですか!? ということは……お爺さんも竜人なんですか?」

「然り。アルフレッド・ニューマンじゃ。よろしくな」


 フランシスは、差し出されたアルフレッドの手を取った。


「しかし爺さん、どうして基地に? 確かバークリー峡谷で生態調査中じゃなかったか」

「ふむ。理由はわからんが、スオウともども呼び出されたんじゃよ。急ぎの案件があるらしいの。まあ、調査は九割がた完了しておるから、こうして戻ってきたというわけじゃ」

「じゃあ、スオウも帰ってきてるのか」

「……ああ、ここにいる」


 突如、闇の中からゆらりと一人の男が姿を現した。先ほどクリスティに痴漢行為を働いたアルフレッドもそうだったのだが、三人はその気配に全く気付いていなかった。

 男はエドガーほどではないがかなりの長身で痩躯。長い黒髪をうなじの下で一つに結び、切れ長の瞳も髪の毛と同じ黒だ。細面のその顔は、彫りは薄いが整っている。肌の色は、やや浅黒い。黒い髪と瞳に浅黒い肌、というのは旧大陸エウレシア南西部の国々の人間に良く見られる特徴である。


「フラン、こっちはスオウ。スオウも竜人だよ。ほら、前に言わなかったっけ? あと二人いる竜人ってのがアルフお爺ちゃんとスオウなの」

「そういえば……えっと、フランシス・ファウラーです。よろしくお願いします」

「……スオウ・モーガンだ」


 スオウはフランシスを一瞥し、ボソッと自分の名を名乗ったきり口を閉ざしてしまった。これにはフランシスも戸惑うばかりだ。


「フランシス、こいつは無愛想で口下手なだけだ。根はいい奴なんだぜ」


 スオウの肩に手を置いて、エドガーが苦笑した。少々失礼なエドガーの物言いに対しても、スオウは眉一つ動かさない。


「……それよりアルフ老、速やかに少佐の執務室に出頭せよとの命のはず」

「おお、済まん済まん。ずっと山に篭っておったから、つい人肌が恋しくなってのぅ。ではフランシスよ、またの」


 そう言うと、アルフレッドとスオウは本部棟に向かって去って行った。


「……元気なお爺さんだね」

「元気すぎて困るよ、ほんと」


 クリスティは肩を竦める。


「ところで、エドガーさんが言ってた生態調査、って何ですか?」

「ああ、生態調査ってのは竜の生態調査さ。竜の縄張りの範囲はどこまでか、とか竜の餌場はどこか、とか、作戦前に竜を徹底的に調べるんだ」


 敵を知れば、百戦危うからず。戦の基本は情報収集で、それはたとえ相手が竜であっても変わらない。生態調査隊の報告をもとに、討伐作戦は立案されている。


「俺たち竜人は他の奴らより遠目が利くし、逃げ足も速いからな。この手の偵察任務にはうってつけなのさ」


 この任務は長年アルフレッドが勤めてきた。しかし、アルフレッドは六十九歳と高齢のため、スオウが彼の後継となるべく実地で経験を積んでいるのだとか。


「あの二人は気配を消すのも上手いしね。お爺ちゃんはそれをろくでもないことに悪用してるけど」

「そうだフランシス、今度機会があったらスオウに格闘術を習うといい」

「強いんですか?」

「ああ。なんでも小器用にこなす男だが、格闘術はピカ一だ。お前も、いつまでもやられっ放しじゃ悔しいだろう」


 この日、二人を相手に三十回ほどの組み手を行ったフランシスだが、とうとう一本も取ることなく終わってしまった。確かに、自分より小柄な女性であるクリスティに負けっ放しでは情けないと思う。


「でも、緊急の案件って何だろうね」


 クリスティが首を傾げる。

 竜の生態調査は、作戦を立てる際にきわめて重要となるものだ。それを途中で呼び戻されたというのだから、余程の理由があるに違いない。


「まあ、俺たちがあれこれ考えたって腹が減るだけだ。さっさと飯を食いに行こうぜ」


 エドガーの言葉に異論があるはずもない。三人は急ぎ食堂に向かうのだった。




「修了試験の結果は以上。ご苦労様でした」


 ダイアナの執務室にてそう告げられたフランシスは、ほっと胸をなでおろした。

 訓練開始から二ヶ月が経過し、予定された訓練カリキュラムを全て終えたフランシスは、先日終了試験を受けた。結果は良好で、文句なしの合格である。


「今回は特例ゆえ、かなりカリキュラムが省略されています。学べなかった分は、実務をこなしながら身につけてもらうことになりますのでそのつもりで」


 ブリーディア軍の士官教育は、本来最低一年かけて行われる。フランシスは、最低限の知識と技術を身につけたに過ぎない。


「では、辞令を受け取りなさい。この時を持って、あなたは正式に少尉となります」

「拝命いたします」


 フランシスが辞令と階級章を手にする。ちっぽけな階級章が、その外見と不釣合いなほどに重く感じる。


「それから――こちらが二か月分の給料となります」


 手渡された布袋はずっしりと重たかった。


「それから、あなたはこれから月に三日の休暇が取れるようになります。有意義に使うように」

「心します」


 敬礼してダイアナの執務室を辞去したフランシスは、給料袋を開けてみた。フランシスが今まで見たこともないような金額だ。訓練期間中ゆえに、これでも満額ではないのだとか。


「これ……何に使おう」


 孤児院での貧乏生活が染み付いているフランシスにとって、どうやったら使い切れるのかわからないほどの大金である。


「とりあえずは仕送りかな」


 と、給料の大半を孤児院に向けて発送したフランシスであったが、程なくしてその八割ほどが送り返されてきた。


『こんな大金受け取れるか馬鹿野郎。お前が稼いだ金なんだから、酒でも女でもパーッと好き使っちまえ。世話になった人に礼をするのも忘れるな』


 とは、添えられていた神父の手紙の一節である。

 さて、基地の事務棟で送り返された金を受け取ったフランシスは、自室に戻ろうとしたところで道の先にクリスティの姿があるのを見つけた。いつもの元気さはなりを潜め、がっくり肩を落としてとぼとぼと歩いている。


「あ~、フラン……」


 声にも生気がない。


「どうしたの? なんか元気がないみたいだけど」

「今日は一日追試だったんだよ。もう、頭使いすぎて吐き気がするくらいだよ」


 クリスティは、ダイアナの命によりフランシスと共に座学を受けさせられてきた。そして、同じ試験を受けさせられたのだが――その結果が芳しくなかったらしい。


「しかも、これから課題やらなきゃいけないんだ。それがもう、山のような量でさぁ」


 クリスティは、げんなりと大きく息を吐いた。


「良かったら手伝おうか?」


 フランシスが持ち前の人の良さを出し、そう申し出た。


「ほんと?」


 クリスティの表情が、にわかに明るくなった。


「課題の内容は?」


「ブリーディア史の教科書の書き取りと算術の問題なんだけど」

「書き取りは字でバレちゃうから手伝えないけど、算術なら教えてあげられるかな」

「やった! ありがとう、フラン」


 クリスティは算術が大の苦手で、蛇蝎の如く忌み嫌っている。そのためか、後輩であるフランシスに教えを請うことにもまったく抵抗がないようだ。


「じゃあ、夕飯食べたらあたしの部屋に来てね!」


 そう言って、クリスティは踊るような足取りで去って行くのであった。

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