第二章

キルス以外に残った者は、もっともキルスが信頼を寄せている女弓騎士のカネル、主力としていつも戦いに出ていたテムル家のタスクとベルス、二人の男騎士、そして、キルスの幼馴染のトコルだった。

トコルは修道女であったが、それと同時に騎士も務め、キルスにも仕えていた。彼女は騎士として戦う一方で、修道女として人を殺めることを嫌っていた。

もちろん戦いに行けば騎士として任を全うし、様々な命を奪っていたが、戦いの後は必ず供養と懺悔を行っていた。

誰から見ても辛いと分かるが、幼馴染のキルスにはそれが痛いほどに伝わっていた。彼女が日々苦しみながら自分の部下の騎士として、自分の役職である修道女として、二つの面を持ちながら過ごしている事を。

「なぁ、トコル」

キルスはふと声をかける。

「はい、何でしょう」

「この戦いは騎士としての、私の最期の戦いとなるかもしれない。そんな重要な所に、修道女を連れているなどと知られたら、死ぬのを分かっていたならず、死ぬのを恐れていた臆病者と周りから笑われてしまう。今すぐにでも、どこかへ逃げろ」

「そういう訳には行きません。私はキルス様に仕える騎士として、最期のときまでお供するつもりです」

トコルを追い払おうとするが、一向に別れる気配はしない。

何度も言いながら馬を進めている内に、前方にまた敵が三十騎程待ち構えていた。

それを見たトコルは

「・・・・・・分かりました。ご命令であればその通りにいたしましょう。ならば、あの敵は私にとって最後の敵。ここは私にお任せを。最後に大暴れして見せます!」

というと、トコルは三十騎へと向かって行った。

「我々も!」

「続きます!」

と、タスクとベルスも向かっていく。その後からキルスたちも続く。

我先にと出たトコルは、馬を速く走らせ一気に敵の隊長の横に行くと、そのまま隊長の首をつかみ馬から引きずり落として宙吊りにする。そのまま手を捻り首の骨を折ると、勢いに任せ捻りをさらに利かせる。すると、首はそのまま体から離れ、引きちぎられた。そのまま首を投げ捨てしばらく真っ直ぐ走り、途中で鎧を脱ぎ捨てるとそのまま森の中へと逃げて行った。

「タスク! ベルス! トコルに続きお前らも行け!」

キルスが叫ぶ。しかし、それも虚しくタスク・テムルは命を落とした。一方、ベルス・テムルは命からがら逃げることに成功した。

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