第一章
この国の実権を握っていたヘンス一族を滅ぼしてほしいと、国王自らに頼まれたゲンス一族。そこから国へ送られたのがキルスだった。
見事ヘンス一族を追い出したキルスは、そのまま都の実権を持った。しかし、元々短気で気性の荒い彼女は、都でも暴れ、国民からの支持は地に落ち、とうとうしびれを切らせたゲンス一族が、キルスを殺そうとしていた。
国を逃げ出て数日、彼女が連れて来た騎馬は残り百騎程になっていた。
キルスはその日、いつもの水色に紅色が映える女騎士の服に、鈍く銀に光る甲冑を身に着けていた。甲冑には、紅い線の彫刻が施されていた。
都と逆の方向へ進んでいると、前から敵の騎馬隊が六千騎程出てきた。
「我が従兄弟であるヨクスの手のものか、ふん。我は、昔はよくキルス様などと呼ばれたものだ。それが今や、キルス様、王国軍指揮官、国王代理とまで呼ばれるようになった。お前らのような者に、この私が殺せるか? もしそうなら、この首でも心臓でも、何でもヨクスの前へ持って行くが良い!」
そういうと、キルスは敵へ向かって攻撃を仕掛けていった。
敵はそれをよけ、キルスたちを囲うと
「相手は天下のキルス、誰一人逃がすな!」
「この程度で屈すると思うな! 全員生きてかえすな!」
敵もキルスも、仲間を鼓舞すると、キルスは一気に敵へ向かって行った。
六千騎もある騎馬隊の中を、たった百騎のキルスの隊が縦横無尽に走り回り、あちこちで敵をなぎ倒して逃げ道を作り出していった。
敵陣を抜けたときにはキルスの騎馬隊はすでに、半分の五十騎程しか残っていなかった。
掻い潜った敵のそのすぐ後ろに、別の地方の騎馬二千騎程が対峙する。
しかし、キルスはそれさえも突破していく。あちこちで大多数対少数の戦いが繰り広げられる中、キルスは全ての敵を掻い潜り進軍することができた。
敵が見えないほどまでに逃げて来た時、ふと気づくと仲間はすでに自分を含め、いつも近くにいた配下の五騎となっていた。
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