13-目標は卒業


そして、半年が経とうとしていたころ、教頭から連絡があった。「そろそろ戻ってこれそうか?」と。休みすぎて出席日数が足りなくなりそうだったのだ。ぎりぎりまで待ってくれていた。そして、僕は学校に戻ることにした。やっぱり高校は卒業しなきゃいけないと思ったし、なにより友達と卒業したかった。そして、一週間後と約束を交わした。


当日。

僕はなんの準備もしていなかった。前日もいつもと変わらない生活をしていた。自分の中でどうするんだろう、どうするんだろうと踏ん切りがつかないでいた。実家にいるのも居心地がよかったわけじゃないけど、怖いというか不安というか。また同じことの繰り返しになるんじゃないかと。それと、もう一つ。ちょうど進級もまたいでしまったし、これだけ学校にいかなかったら多くのが変わってるだろうし、友達は受け入れてくれるか不安だった。

そして、その日家を出ることはなかった。


その日の夜、母にどうする気なんだといわれ、泣きながら言い合いになった。当日には準備をするだろう、するだろうとなにも言わずに待っていてくれたそうだ。いつまでもこのままなのかと言われて、やっぱりそういうわけにはいかず、教頭に電話して、今度こそ一週間後と約束した。今思えば、きっと母も辛かったんじゃないかと思う。そんな僕の不安は口にしなくてもわかっていたはずだから、そんな僕に強く言うのは簡単じゃないと思う。でも、あれは僕に必要な叱咤激励だったと思っている。


そして、約束の日。

僕は不安だったけど、ちゃんと学校に戻ることができた。各所に戻りましたとあいさつをした。僕は寮だったから、友達にもすぐ会うことになったわけだけど、僕の心配をよそにみんな温かく迎えてくれた。その不安がなくなっただけでも、心は少しだけ楽になった。でも、部活に戻ることはできなかった。僕の心が落ち着いてきていたとはいえ、部活を頑張るだけの心の余裕はなかった。サッカーはやりたかったけど、その時の僕の目標は高校を卒業することだった。だから、またきっとサッカーをできるときはくると信じて、サッカー部をやめることにした。

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