12-療養というなの不登校


それから半年、僕は療養というか不登校になった。


実家にいるのもなかなか複雑でとても居心地がいいものではなかった。

弟や妹はなんで帰ってきているのかも聞かなかったけど、不思議に思っていたはずだし、気になっていたと思う。でも、一回も「なんで家にいるの?」と聞いてこなかった。二人なりの優しさだったと思う。毎日、毎日やることもなく、なんとなく家事やって、滅多に家から出ることもなかった。

今思い出そうとしても、その半年の記憶はあまり残っていない。帰った直後は毎日、どうやって死のうか、どうやって誰にどんなメッセージを残そうか考えていた。そんな生活を半年近く続けた。その頃母が気を使ってか、仕事が早く終わったときは外に連れて行ってくれることが多かった気がする。でも、外に出ても気が休まらなかった。僕が寮生活をしているのは、地元の友達や知り合いは知っていたから、そこでバッタリなんてことがあったらどうしよう・・・なんてことばかり考えていた。

カウンセリングにもいった。実家に戻ってすぐのことだったと思うけど、意識を失くして倒れたことがある。すぐに意識は戻ったから大事には至らなかったけど、それがストレスからくるものだったのか、ただの貧血だったのか今でもわからない。そんな僕をみてきっと母なりにできる限りのことをしてくれていたんだと思う。

あの時の僕は、申し訳なさとか、学校に行けない気まずさとか、心苦しさでいっぱいで、そんなときに優しくしてくれる母になんとも言えない複雑な気持ちだった。


学校にいるよりかは、僕の心に負担はかからなかったし、少しずつ回復していくことができた。夢をみる回数も減っていった。リストカットはそんなすぐにはやめられなかったから、隠れてやっていた。でも、時間がたっていくうちに、心の負担が減ったから、その回数も激減した。ただ、夢は今でも突如みることがある。ふと焦って目を覚まして思い出すことがある。でも、もうあの時の僕とは違うから、それで動揺することもない。

自分への嫌悪感はゼロではないけど、それにかなり近いものになった。

それから、もっとあとになって僕を認めてくれる人の存在によって、この嫌悪感は本当にゼロに近いものになった。

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