8-悪魔は足音を立てずに・・・


そんな寮生活で、毎日学校とグランドと寮の往復で特にこれといって変わったこともなく、なんとなく過ごしていた。友達ができるかとか、転校生によくある悩みはあったけど、寮に入っていたこともあって、気にかけてくれる人が多かったから、すぐに馴染むことができた。部活は厳しかったけど、楽しく高校生活を送っていたと思う。

ただ、部活は厳しすぎて、このご時世に同じことをやったら、体罰とかって訴えられるレベルだと思う。まあ、僕はろくでもない選手だったけど、全国大会にも出られた、仲間には感謝はしている。あの時、声をかけてもらわなかったら、あの舞台にあがることもできなかった。


ただ、僕はこの夏の大会を過ぎたころから、なにか違和感というか心がモヤモヤし始める。秋に入ってすぐくらいだと思う、夢をみた。ちょうど1年前に起こった出来事の夢を。僕はあまりにもびっくりしすぎて、その夜は眠れなかった。そして、たまたまだろうと思っていたら、それから何回も夢を見るようになり、僕はその夢をみるたびに、自分への嫌悪感でいっぱいになっていった。


そして、僕はとうとう自分自身を傷つけてしまう。


でも、よくドラマなどで扱っているようなものじゃなくて、はさみで浅く軽く。周りにばれない程度に。それをすることで、自分自身の嫌悪感、自分自身が汚れているとか、汚らわしいとかそういうものから、少しだけ解放された。


でも、ある日それが監督ばれた。監督に呼び出されて、物凄い剣幕で胸ぐらをつかまれ、怒鳴られた。申し訳ないが一切僕には響かなかった。正直、なにいってんだ、こいつ。今までなにがあったか知ってるのか?知っててしゃべってんのか?そんなすぐ立ち直れるわけないだろ。こっちは普通に生活してるだけでも、精一杯だよ。そこに追い打ちをかけるように夢なんかみてみろ。なんて思ってた。僕の中で立ち直ったつもりでいたけど、ふとした学校生活の中で思い出すこともあって、なかなかあの時の僕から抜け出せずにいた。


それから、部活でもメンタルが弱いからだとののしられたりもしたけど、僕があの時経験したものに比べればなんでもなかったし、何も知らないでしゃべってると思うと相手にしようとも思わなかった。そのせいか、部活でそうやって怒られてもなにくそと思う気持ちもなくて、むしろやる気を失くしていった。

そして、冬に近づくにつれて夢を見る回数も増えたけど、大丈夫だと自分に言い聞かせていた。


あの日を迎えるまでは。

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