中学生

1-”僕”の体が女になっていく・・・


中学に上がる前、小学校の卒業式で僕にとっての難関が訪れた。卒業式の服装。

僕の小学校は卒業式で中学校の制服を着ると決まっていた。僕の通う中学は学ランにセーラー服。それまでスカートを断固として拒否してきた僕にはその制服をきるなんて、考えられないことだった。5年生くらいまでは親にも学ランで卒業式に出ると話していた。でも、現実は違った。そんなことは不可能だった。そして、当日。どうすることもできずに我慢してセーラー服を着て卒業式にでた。せっかくの門出の日なのに、制服が嫌すぎて、式にも集中できなくて、早く脱ぎたいとばかり思っていた。家に着くなり、一目散に部屋に向かい着替えた。そしてそのとき、これを毎日着なきゃいけないなんて、耐えられるわけない。と思っていた。もちろんほかに方法もないし、我慢してセーラー服で登校するしかなかった。

ただ、一つ救いだったのは僕の中学校は1日中制服で過ごさなくていいことだった。登下校と式典などで着用するだけだったので、普段はジャージ。少しでも制服を着る時間を短くするのに必死だった僕は、何かにつけてジャージでいるために理由をつけていた。


そんなとき、隣のクラスに不思議な子を見つけた。彼女はジャージで登下校してみたり、制服をきているのかと思うとジャージと両方着ていたり。なんとも自由な子だった。彼女はただのスカート嫌いなだけだったが、そんなことができる彼女がうらやましかった。僕はいつもルールを無視することができなかった。周りの目が怖かった。小学生のころから、薄々周りとは違うことに気付いていたから、それを隠すためにもいい子でいることが一番だと思っていた。だから、それは中学に入っても変わらず、いい子で居続けるためには、ルールを破るわけにはいかなかった。

僕が“僕”であることを隠したかった、変な目で見られるのが怖かった。

そしてなにより家族に心配をかけたくなかった。そんなことを中学生ながら思っていた。


でも、入学してすぐ母に心配をかけてしまうことになる。

僕の体に大きな変化が起きた。生理がきた。

初めてそれを目にしたときは意味がわからなかったし、どうしたらいいのかもわからなかった。そのときすぐに母に言えればよかったのかもしれないが、その勇気がなかった。小学生のとき、授業を受けていたけど、自分には関係のない話だと思っていて、我関せずといった感じでろくに聞いていなかったので、軽くパニックだった。なんとなく対処して、登校した。

そして、授業が終わったとき保健室に呼び出された。母が届け物をしてくれたとのことだった。その中には一言手紙が添えられていた。

「気付いてあげられなくてごめんね」と。

その時の僕は、自分の体に起きたことが理解できなくて、まだ心も追い付いてないのに、そこで母に謝られて、複雑以外のなにものでもなかった。母はなにも悪くないのに謝っているし、僕の体はおかしなことになっているし。

でも、受け止めなきゃいけない、それは女性の体として正常な成長だった。

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