少女とメルセデスの会話②

 少女はメルセデスにキルトのい方を習っていた。メルセデスはそんな少女を見ながら感心する。覚えが速いのもあるが、少女の興味や行動の広さにもだ。こういう大人しい女の子のような遊びを好むと思いきや、先日は男の子たちと混じって棒切れでチャンバラ遊びをしていた。

 目鼻立ちは整っていて、俊敏しゅんびんそうな猫を思わせる少女だった。女子のグループの中心になりそうな人物だったが、少女は村の他の住人たちより体の成長が遅かった。少女と同い年の住人は。だが、彼女がそうなるのはあと数年はかかりそうだった。それでも持ち前の資質からか、からも彼女は積極的に遊びに誘われていて、彼女が孤独になることはなさそうだった。

「……今日はみんなと遊ばなくていいのかい?」メルセデスは言った。さきほど、彼女のことを村の少女が誘いに来たのだ。

「……今日はいい」少女は目を凝らしてキルトの生地に針を通す。「めんどくさいし」

 友人だろう相手を、堂々と突っぱねるような物言いにメルセデスは苦笑する。

「あんまり、皆で遊ぶのは好きじゃないのかい?」

「誰かといるのは楽しいけど、長くいると疲れるよ。基本的には独りでいたい」

「そうかい……マーリンもそういうところがあったね」

「ふぅん……。」

「……不思議なもんでね、孤独を好むのに、どうしてか人と関わっちまうんだ。うちらの血筋だろうね、これは」

「じゃあディエゴも?」

「ディエゴかい? ……あの子は」

 メルセデスの言葉が止まった。

「メルおばさん?」少女の針と糸の動きが止まった。

「……あの子は逆だよ、誰かと常に一緒にいたがるんだ。なのにいつもひとりぼっちになっちまう……。近づけば近づくほど、あの子の気質にあてられてまいっちまうんだよ」

「太陽みたいだね」

「良い言い方をするとそうさね」からりとメルセデスは笑った。「でも心配でね……いつか、あの子の周りから誰もいなくなってしまうんじゃないだろうかって……。」

「……じゃあ、そうなったら私がディエゴの側にいてあげるよ」

 メルセデスは少女を見る。

「独りになりたいのになれない私、独りになりたくないのになっちゃうディエゴ、ちょうどいいんじゃない?」少女はキルトの仕上げながらメルセデスを見る。

「……ありがとう、よろしく頼むよ」

 決してプロポーズなどではなかった。ただ意図もせずにそういう言葉が出る少女だった。

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