第六章 Suicide Is Painless
辺境のギルド
私たちは近くの街の
そんな街にあるレンジャーギルドの寄り合いは、寄り合いというにはあまりにもお粗末だった。屋台のような建物の骨しかない。受付の組合員がひとり、その中でうたたねをしていた。その建物のベンチと机にレンジャーたちが座り情報交換と雑談を交わしているが、年期は感じさせるものの腕が良いとは言い難い男たちばかりだった。
私は受付の
「ねえちゃん、あんたその依頼受ける気か? やめとけやめとけ」
ベンチで麦酒を飲んでいる、レンジャーと思しき男が話しかけてきた。
「そんなビッグマネーを狙うんじゃなくって、もっと手堅く稼げる方法があるだろう」
男は笑いながら自分の股間を掴んだ。物乞いと区別のつかない、可哀想なほどに痩せた男だった。長い髪も日陰のシダ植物のように薄汚れている。見ているだけでこっちが汚れてきそうだ。きっとタマネギも生で食べている。
「オーク相手にゃあよ、色仕掛けも通用しないぜ。それどころか、ビビッて別のもんで股間を濡らす羽目になるかもなぁ」
男は前歯の抜けた顔で笑った。
「なるほど、“経験者は語る”といったところか」
「んだと?」男の表情が変わった。抜けた歯のせいでいまいち緊張感が出なかったが。「俺がオークにビビったとでも言いたいのかっ?」
「そう聞こえないのなら、私の言い方が悪かったのだろう」
男はベンチから立ち上がった。
「このアマぁ、人が親切に忠告してやってりゃあ……。」
「嘲りを優しさというのなら、新しい辞書がいるな」
「あん? なに……辞書ぉ?」
「もういい、臭い口でこれ以上喋るな」
「テメェ!」
男は机に立てかけてあった剣を取った。
私は腰のホルスターから鞘ごと刀を抜き出した。
男は鞘から剣を抜き出し構え、私は鞘から刀を抜かずに構えた。
「へ、へへ、何だよそりゃ、木の棒でやりあおうってか?」
私は飛び込んで面打ちを放った。
「うおっ?」
男は剣を横にしてそれを防いだ。
面打ちを防いだまま男が言う。「このアマぁ、俺が本気になる前にやめておけよ……。」
私は右手で鞘を、左手で
「う……お……。」
「本気になる前にやられていたら世話ないな」
私は身を引くと納刀した。
「まだやるかい?」
私の問いに男が沈黙で答えると、私は
「どうだった?」
街から戻ってきた私にロッキードが訊ねてきた。
「オークの盗賊団の手配は確かに回ってる。頭目の名がマーティンというのもな。もしかして、オークによくある名前なのか?」
「いや、きっと奴だろう……。」
「そうか……。アジトだが、ほとんどが返り討ちに遭っていて、正確な情報がつかめないんだ」
その前にごたごたを起こして情報収集が上手くいかなかったとは言わなかった。
「その必要はない」
私は得意げに言うロッキードを見た。
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