遺恨
※※※
川に飛び込んだクロウ達を見失った後、まだ暖かい狼の亡骸を前にバクスターが立ち尽くしていた。
「お頭ぁ、あっちの茂みにペグの死体が」
「そぉか……」
バクスターの周りに手下たちが集まって来た。バクスターは狼の傍らに座り込み頭を撫でる。
「お頭ぁ……」
狼をより感じ取るように、顔の細部を手でなぞりながらバクスターが言う。「こいつとはぁ……オヤジの代からの付き合いだ。ゴブリン狩りの戦火を、ウチの氏族と一緒にくぐり抜けてきたんだよぉ」
「へぇ……」
「もう年寄りなんだが……他の狼なんかにゃ負けねぇくらい勇猛でな……。見ろ」バクスターは毛をかき分け傷口を露わにする。「刀をこんなにぶっ刺されてもしばらく戦ったんだよ、コイツは。この執念、他の狼にゃ真似できねぇ」
バクスターは狼を撫でて微笑み、優しい声を上げる。「コイツこそが男さぁ……男の中の男だぁ。正真正銘純血のな」
しかし、手下の一人が「お頭ぁ」と声をかけた次の瞬間、「
「ニブロ、俺の名前はなんだ?」
ニブロと呼ばれたゴブリンは戸惑いながら「え? バクスター……さん?」と言った。
「氏族の名もだ」
「……バクスター・ダイアウルフ」
「そうバクスター・ダイアウルフ、
バクスターは立ち上がり手下に語りかける。「なぁお前らぁ、逆に考えろぉ。
ゴブリン達はバクスターの言葉に火をつけられ、各々喚き声や歓声を上げ始める。
「
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