第7話 不思議な再会
「なかなか優秀な男でしてね。城に戻っているでしょうから、アナタにも紹介しましょう」
「そ、そりゃあどうも。――って今更だが、俺が城に入っていいのか? 君たちからすれば赤の他人だぞ、俺」
「お気になさらないでください。外神の領域に出てきた人間は、丁重に保護しろと父上の決定ですので。……まあアナタは見た目悪そうな人じゃないですし、大丈夫でしょう?」
「ま、まあ……」
お人好しすぎて言葉に詰まってしまうが、確かに俺は害意を持っていない。アンドロマケの期待には応えられるだろう。
「だから、アナタも気にしないでださいな。父上は堅苦しいの嫌いですし」
「そうなのか……」
なんだか、俺の知ってるブリアモス王と同じような。
まさか転生している本人か? アンドロマケがいるぐらいだし、おかしな話ではないかもしれない。異世界への転生後と転生前では、家族関係が似るとアテナから聞いたこともある。
都市の中心である大通りを、タクシーは黙々と進んでいった。
フロントガラスの向こうには、白亜の巨大な城が見えている。高さでは、周りのビルにも負けちゃいない。
「アレが……」
「そう、トロイア城ですわ。車は正門の中に入れないから、ちょっと歩きますよ」
言って、ちょうどタクシーが停車する。
きっちり料金を払おうとするアンドロマケだが、運転手は遠慮している様子だった。が、彼女の方もめげることなく、小銭を無理やり運転手に握らせる。
――転生前のアンドロマケだったら、こういう強引なやり方はしなかったろうに。
俺は一人思いながら、正門に近付く彼女の背中を追った。
と。
まだ数メートルの距離があるというのに、門は勝手に口を開く。
「お、噂をすれば」
二人を迎えるように歩いてくる、一人の少年。アテナが見せてくれた写真に映っていた男だ。
「紹介しましょう。私の弟、オレステスです」
「……なに?」
聞き捨てならない、その名前。
少年はニタリと、気味の悪い笑みを浮かべる。ああ、忘れる筈もない顔付きだ。
狂気の王子・オレステス。
俺を殺した張本人が、この異世界へ転生していたらしい。
「姉上、客様ですか?」
「他に何がありますの? 外神の領域にいた旅のお方でして、父上の命令通り連れてきました」
「おお、それはそれは。……でしたらどうぞ、旅のお方。この城で疲れを癒していってください」
「……」
言葉に裏があるような気がして、俺は素直に好意を受け取る気になれない。
そもそも、こいつは記憶を継承しているのかどうか。アンドロマケのように、中身は別人に近いのか――
「こちらですわ。まずは父上にご挨拶を」
アンドロマケは俺の心境も知らず、城の中へと入っていく。
直後。
「旅のお方」
「うん?」
オレステスという名前の、中身が同一人物かどうか分からない少年は、
「まことに、申し訳ありませんでしたっ!」
「……は?」
などと。
本人の証明っぽいことを、堂々とやってのけた。
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