タナベは逃げ出した

あまね

第1話

 目覚ましより数分はやく起きた。


 その数分が良くなかったのだろうか、私の目の前には文字が浮いていた。

 

『タナベは目が覚めた』


 確かに私はタナベだが、なんだろうかこの文字はと思っているのも束の間である。

 文字が姿をかえて、別の言葉に変化した。


『タナベはボッーとしている』


 寝起きだし、まだ寝ぼけているのはしょうがないとしてこの状態は気味が悪い。


『タナベは怯えている』


 やかましくて、不気味な文字だと思ったが、目がさえたら時期に消える幻だと思い気にしないことにした。


『タナベは無視している』


 頭がかなりさえたはずなのに、文字はまだ自分の目の前を占領している。

 これはどうしたら消えるのか、何かの病気なのか分からない。


『タナベは驚き戸惑っている』


 消えない文字というだけでも、いやなのにこちらの行動をわざわざ文字にして突きつけるかのような文章というのがなんとなく気に入らない。


『タナベはイライラしている』


 とりあえず頭をすっきりさせるためお風呂に入ることにする。


『タナベはさっぱりした』


 やはり目の前に映し出す文字は消える事はなかった、目薬をさしてもそれは消える事がなかった。


『タナベは目薬を使った、しかし効果がないようだ』


 とりあえず、目の前の文字が見える以外は身体に以上も無いようだし、これ以上ゴタゴタで学校へと遅刻するわけにも行かないと思い、私は家をでた。


『タナベは学校に向かった』


 目の前の文字は学校についても消える事はない、それどころか授業中、休み時間問わずに文字が映ってその文字が気になりそれどころではなかった、この文字はどうやったら消えてくれるのだろうか。


『タナベは考えている、しかしいい案は思い浮かばない』


 やかましい、文字をおいはろうとしても文字には当たらず空をきるばかりだった。

 そんな時、ユウキの姿を目にすると文字が今までとは違う文へとかわっていった。


『ユウキを見かけた、どうする?どうする?』


 どうするも何もない、ユウキが現れたとたんに先程までとは違う文面になったがそれはどうでもよかった。

 ユウキに不審に思われないように、その場から立ち去ろうとすると同時に文面もまた切り替わった。


『タナベは逃げ出そうとしている』


 何を逃げだすというのか、私は立ち去ろうとするだけだ。

 ユウキに会わないように、立ち去った。


『タナベは逃げだした』 

『タナベは逃げだした』


 逃げていない、何も逃げていない、心でつぶやくも目に映る文字はあいもかわらずに逃げ出したの文字


『タナベは逃げ出した』

『タナベは逃げ出した』


 家に帰ってからも、その文字が変わることなく逃げ出したの文字だけがおどっているかと思えば、他にも文字は私の心を映し出している。

 

 これは本当にどうすればきえてくれるのだろう。


『タナベはユウキに告白できなかった、タナベは後悔している』

『タナベは今日も告白できなかった、タナベの冒険は此処でおわってしまう』


 勝手におわらすなと思うと文字はまた姿を変えた。


『タナベはユウキに告白すると決意した、しかしまたくじけそうだ』


 本当に早く消えて欲しいと願いながら私はまた明日冒険するために眠りについた



 

 

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タナベは逃げ出した あまね @kinomahiru

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