第2176話:クラシラ・ヒーブ~変装~

「変装してきたんだけど、なんですぐにわかった?」

 尾行をする必要ができたので、素性を悟られないようにと変装をして相方との待ち合わせの場所にやってきたのだが、一瞬で変装を看破されてしまった。

「変装? どこが、全然できてないじゃん」

「え! 完璧だろうがよ!?」

「全然だよ! 一見しただけでクラシラだってことが丸わかりだよ!」

 俺はそんなに変装のセンスが無かったのか、普段着ないような服を選び、髪型もウィッグで変え、顔の輪郭も不明瞭にしているというのに……!

「ていうか、君の方こそなんで変装のひとつもしてこないんだ」

「はぁ~? 私はちゃんと認識阻害用の魔法薬を飲んで来てるでしょ! これで魂の形で私を特定するのは不可能ってものよ!」

「見た目が何一つ変わってないだろ!」

「見た目ぇ? そんなもので個人の素性を特定できたりするわけないでしょ」

 ダメだ、物の見え方が全然違うらしい。

 こいつは魂の形で人を判断しているらしく、俺は視覚で人を見分けている。

 説得はどうにもできないが……

「なら、別々に尾行することにしよう」

「どういうこと?」

「俺は見た目を変えている、お前は魂の形を変えている。ターゲットがどちらで人を識別するかはわからないが、バレた方が間違ってたということ。どっちが正しく尾行のための変装ができていたか勝負というわけだ」

「なるほどね。いいわよ!」

 ということになったのだが、結果としては両方バレた。

「まぁもともと俺たちのことを知らない相手だったし、普段と違う姿や魂でもずっとついてくる奴がいたらバレるよな」

「それは気づかなかった……」

 どうやら両者ともに尾行はへたくそだったようだ。

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