第2131話:カバラー・ディストゥス~壁抜け~
「えーと、確かこの辺だったと思うんだけどな」
怪しい男に付いて路地裏を進んでたどり着いた袋小路、どこにも行けそうにないが男はごそごそと何かを探している。
「お、あったあった。さぁ、ついてきな、はぐれると面倒だからな」
「どこへ……?」
「よく見てればわかる、見逃すなよ?」
そう言って男は壁の中に消えた。
「え、え? えー?」
慌てて男が消えた壁に駆け寄って調べてみる。
ペタペタと触って調べるつもりだったのだが、突然触ろうとした手が壁に埋まった。
「うわぁ」
慌てて引き抜いたが手に異常はなく、恐る恐る再びその壁を触るとスッと入った。
つまりこの壁は見た目だけで実体はない、通り抜けられる壁ということだ。
気づいたらさっさと進むしかない。
さっきの男はもしかしたらさっさと進んでしまっているかもしれないのだ。
この実体なき壁に飛び込んで後を追わねばならない。
「しかし……」
壁の向こうがどうなっているかわからない以上、飛び込むというのは恐ろしい物がある。
そもそもが美味い話に誘われてついてきたのだ、どう騙されていても不思議ではない。
そうやって迷っているうちに壁の向こうにまだ男が残っている可能性はどんどん減っていくのだった。
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