第2127話:テル・クリオア〜前に進む〜

 一列に並べられて一歩ずつ前に進む。

 一歩進むとしばらく時間が空き、前が一歩進むのに合わせて一歩前に進む。

 前を見てから動くため、大きな視点で見れば波が伝わっているようにも見えるだろう。

 随分と長い期間この列でこうやって一歩ずつ進むのを繰り返して来た気がするが、まだ殆ど進んでいない気がする。

 もういつからこうしていたかも覚えていない。

 いつからどころか、なんのためだったのか、いつまで並ぶのか、それまでどうしていたのか、何も覚えていない。

 記憶を失ってしまったのか、そもそも何もないから何も覚えておらず最初から並ぶだけの存在だったのか、何もわからない。

 そもそも並ぶだけの存在だったらなぜこうやって疑問に思うのか、やはり普通に生活していたのが何らかの理由でこうして並んでいるのか。

 やることがないため無限に思考は走り続ける。

 そうやって考えていたらまた前が進んでいる気配を感じたので、一歩進む用意をする。

 そうして考えていたことは全て忘れてしまった。

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