第2122話:ケア・カルテ~早死に~

「おお、久しぶりだなぁ。そりゃそうだよな、お前もこっちに来てるよな」

死にこの世界へ来て、ずいぶん前に死んだ友人に会いに来た。

「お、おー、お前も死んだのか。そういやもうこっちに来てから30年ぐらい経ってるし、だんだん皆来るぐらいのタイミングか。俺は事故で早くして死んだもんな」

「そうだよ。元気してたか? こんな便利なもんがいろいろある世界が死んだ後にあるならもっと早く死んでいてもよかったぐらいだな」

「いやぁ、俺はそうは思わないけどな」

「そうか?」

「まぁ向こうでの生活もそれなりに楽しかったし、俺は一人でこっちに来ることになったから友達を一気に失ったみたいなもんだったよ。生活は補助が出るから苦労はあんまりしなかったが、親友人全員いない世界に突然放り出されるってのはずいぶんと怖い体験だったよ」

「ああ、そうか。お前はそうだったよな。すまん、無神経な発言だった」

「ああ、まぁ気にしないでくれ。どちらにせよこの世界は他のどこの世界でも知られていないし、宗教とかでもここを明確に指していることはめったに無いらしいからな。ここを目指して早死になんてすることは無いんだから」

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