第2100話:バイラ・キマクト~順番通り~

「この扉の前にあるボタンを決められた順番通りに押せばこの扉は開くんです」

 よくあるパスコードロック式の扉ということだ。

 解き方は至極単純で予め指定された文字列だったり数列だったりを入力すれば開く。

 装置自体は大掛かりな機械式の物や小さい電子ロック、魔術の仕掛けの場合もある。

 大抵の場合は構造自体が頑丈でパスコードを入力しなければ開くことは無い。

「その決められた順番というのは?」

「わからないんです」

「は?」

「だから、この扉を開くために必要な、決められた順番がもう全くわからないんです」

「わからないってことは無いでしょうよ、ここがどっかの古代遺跡とか人ん家ならともかく、ここはあんたの家ですよ!?」

 今夜は彼女に誘われて彼女の家で飲もうと来たわけだが、部屋の前まで来て自宅のロックの解除パスコードがわからないと言う。

「仕方ないじゃないでしょう、忘れちゃったんですから」

「いやまぁ、忘れてしまったのは仕方ないにしてもですね、なんでそんなときに僕を部屋に誘ったんですか?」

 たまに帰ってきた時にうっかり忘れてしまったとかそういうのならわからないでもない。

 しかし、今は僕という友人を誘って部屋に来ている時だ、そんなときに忘れないでほしい。

「ド忘れしたんですか?」

「いえ、最近は全然部屋に帰れてなくて……」

「もう一回聞いてもいいですか? なんで僕を今日家に誘ったんです?」

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