第2026話:クライ・ライル~嘘つき~

「君可愛いねぇ~」

「えー、口が上手いのねあなた。本気にしちゃうでしょ~」

「いやいや、全然お世辞じゃないよ! 本当にかわいいって思ってる。もしかして君の世界では君みたいなタイプを可愛いって言わないのかな? そうだとしたら全く、罪な世界だぜ、君の自尊心を削ってきたってことなんだから……」

 その後も甘い言葉をつらつらと良くそこまで言葉がポンポンと出てくるものだと感心したくなるぐらいに言葉を並べられ、そんなことないよ~返す割と楽しい時間を過ごしたのだが、この声を掛けてきた男はまぁまぁ巷で有名な詐欺師であることはわかっているのでどんな言葉も聞き流して心理的に安全なまま無料でホスト遊びみたいなことができたので、本当に楽しかった。

 詐欺にかかってお金をだまし取られなくても、この褒め殺しスキルに対しての対価を払ってやっても構わないという気分になっている。

 実際、話に聞いているところでは彼の生活費はそういう、彼の詐欺師としてのスキルではなくこの褒め殺しのスキルに対してのものだと言われている。

 実際にお金の振り込みを要求されたことはあってもそれに対して払ったという話は聞かないが、褒められて気分がよくなったのでおこづかいをあげちゃったという話はよく聞くのだ。

 なんともわかりみが深い話だ……

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